第2話 自己嫌悪-2
季節は夏。大学生活も2年目を迎えある程度生活環境にも慣れ始めた
結局、あれからもなかなかスムーズに寝付くことができず、やれ高校時代に好きだった同級生の女子に告白したら陰で言いふらされていたことに気付き恥ずかしい思いをしたとか、やれ大学の講義で発言を求められた際に的外れなことを言ってしまい一瞬場を凍り付かせたとか、人によっては一切気にも留めないであろう
熱気と眠気に意識が
――ガタンッ……。
「あ、すぃません……。」
男性は踏まれたことを気に留める様子もなく、満員電車の人混みをうまく
いつも通り終点のホームに吐き出された僕は、電車を乗り換えるために最短距離で次のホームに向かう。乗り換えた先の電車は比較的空いている方だ。空調も効いていて、
何分か電車に揺られた後、最寄り駅に到着してホームに降り立つ。改札を通り抜けてエスカレーターへと続く列を横目に階段を使って駅を飛び出すも、目の前の信号がなかなか変わらないので結局追いつかれてしまう。
思い返せば、新型ウイルスによる感染症拡大が世界中で猛威を振るい始めた1年前は、奇しくもこのような対面授業ではなく、ビデオ会議システムなどを通じたオンラインでの講義が主だった。そのため、このようにわざわざ大学へ出向く必要もなければ、成績評価もテストではなくレポートの提出で一本化されていたから学生にとっては非常に楽だった。今となってはそれがすっかり元通りとまではいかないものの、ある程度は従来の大学生活とやらが
そんなことを考えていたら、講義が始まったようだ。事前に配布されたレジュメをパソコンの
◆◇◆
こうして100分間の講義が終わるころには、天井から吹き
──これは念入りな復習が必要になるだろうな。誰にも
──次は3限だから1コマ空き時間が生まれてしまうな。こういうときは大抵、カフェで講義の復習や提出日が迫っている課題を消化しながら時間を潰すようにしている僕は、足早に一度大学の構内を出て、
何故大学の共用スペースや学食などの安く利用できる場所ではなく、学外のカフェを利用しているかといえば、理由は多岐にわたるのだが、最も大きいのは僕に友達がいないことにある。重ねて言うように、僕の大学入学当初は、感染症の拡大によって通学が当面禁止になった。サークル関係の新歓イベントや新入生同士の交流の機会となる
しかし、時が経ち僕が2年生へと進学するころには既に学部内外問わず一定の所謂「仲良しグループ」とやらが完成していたように思う。インターネットが発展してオンラインでも大学の講義が受けられるこの世の中だ。きっと今を時めく若者たちはSNSなどを駆使して入学当初から顔が見えなくとも同じ大学に合格した仲間を探し当て、人間関係を育むことを怠らなかったのだろう。SNS全般をあまり利用しない僕にとっては、全てが手遅れだったという訳だ。
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