第72話 





 翌日、今日も今日とて、俺は空を飛んで移動している。まあ、今日は紅葉に教えてもらった術を使って、氷の蓮に乗って移動している訳だが。


「やっぱり龍か鳥にしよう。俺別に仏門でもなければ、仏ですらないし」


 なんか違和感があるので今日限りにしておく。気が向いたらまた使ってもいいかもしれないがな。


「さて、書類は昨日全部片付けたから、今日から教室で授業を受けられるはずだが、なぜか嫌な予感がするんだよなぁ」


 まあ、嫌な予感と言っても、生死に関わることや女関係の修羅場が起こる的なモノではなく、もっと軽いものだから安心と言えば安心。

 にしても、父さん達紗枝まで連れ回して全然帰ってこないけど何やってんだ?まあ、一応大事にはなってないみたいだが...知っているか分からないが紅葉や月読に聞いてみるか。


 そんなことを思いながらも、のんびり学校に向かうのだった。






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「......で、こうなったと。嫌な予感が当たったな」


 はい!今日も今日とて会議室に缶詰が決定しました!

 マジでふざけんなよ?


「あら酷い。それは私と一緒が嫌ということかしら?」


「別にそうは言っていない。ただ、来て早々連行されるとは思わなかった」


 そう、俺は来て早々会議室に連行された。

 なお、会議室には昨日ほどではないが積まれた書類が分かれて二つ。そのうち片方は既に菫が処理している最中だった。


「まあ、昨日ほどかからないだろうから遅刻って事で教室行くか」


「あら、聞いてないの?書類が終わったら遅れた分の勉強と、私が教えきれていない分の常識を叩き込むから、今週いっぱいは教室に行けないと思いなさいな」


「は?」


 そう言われて、会議室の机の上を改めて見てみると、言葉通りに分厚い参考書に高校指定の教科書、そして大学ノートが置いてあり、ここで勉強する準備がしてあることがわかる。


「なるほど、俺に高校生活をさせる気がないのはわかった」


「そう捻くれないの。実際小学校と中学校に通っていないから勉学面で心配している先生もいるし、私と一ヶ月一緒にいた際に常識が無いのもバレているから、それを覚えるまでは毎日缶詰よ」


「いや確かに常識はないが、そこまで酷くはないだろ?」


「少しでも常識があれば、街中で龍なんて出して移動手段に使わないし、妖が出たからといって、問答無用で攻撃して公園にクレーターなんて作らないわよ」


 ......確かに


 いや、でも龍を出した方が車より移動早いし、あの妖も結構強い奴で理性もなく暴れ回る個体だったからやったわけで......

 などと頭の中で言い訳をしていると、続けて菫が口を開いた。


「まあ、それだけとは言えないけれどね」


「ん?どういう事だ?」


「昨日言ったでしょ?試験の際に将来退魔師を目指している子は実技試験を受けてもらうって」


「ああ、言ってたな。と言うか、その書類もそれ関係じゃないのか?」


「まぁね」


 まあ、昨日の書類の量はすごかったからなぁ...俺の分も含めて。


「それで?俺も実技試験がどう関係するんだ?」


「そうね、まず前提条件として実技試験を受ける子は、みんな退魔師として一定の教育を受けている子が大半よ。小学校や中学校で習うから。それで、当然大半の子が退魔師の家系なのだけれど、中には一般の家系で強い神から強い加護を受けた子や、生まれつきもしくは何かしらのきっかけで大量の霊力を持った子もいるの」


 ん?ああ、そういう事か。


「アレか?退魔師家系の奴が一般家系の奴を見下しているとかそういうやつか?」


「そうよ。小学校中学校で矯正されるけど、治らない子もいるし、貴方みたいに高校から入る子もいるからどうしても一定数出てきてしまうのよ。それに一般家系の子たちの中にも、被害妄想とでも言えばいいのかしら?一方的に見下されていると思い込む子も一定数いるのよ」


 まあ、そういうこともあるだろうな。


「だが、それが俺とどう繋がる?」


「それが、実技試験の時に任務を遂行する班を決めるのだけれど、半ばくじ引きみたいな形で決まるのよ。その際にそういった子たちが問題を起こす事が毎年少なからずあるの」


「へぇ?でも、だからと言って教師が手を出す訳じゃないんだろ?間違いが起こらないように教師がついてくる事はありそうだがな」


「そうね。この学校に上級の教師がいないのもそれが理由。問題が起こった際に妖に対処する教師と生徒を救助したり鎮圧する教師で何人か必要になるから質より量をとっているのよ」


 なるほどなぁ。でも数は足りない気がするな。班が何人かわからないが五人から十人程度だろうし、この学校の生徒も数は多くないが、教師だけで全ての班に対処するのは難しそうだ。

 ん?ってことはもしかして俺にやらせるつもりか?


 そこまで考えた俺は、菫に直接聞くことにした。


「なあ菫。もしかしてだが俺にその役割をやらせるつもりか?」


「そのもしかしてよ。元々、上級生で実力が高く人格面が問題ない生徒もやっているけれど。新入生でも実力が高く人格面に問題がなければ先に試験を済ませて手伝ってもらったり。なんなら試験を受けながら手伝ってもらったりするの。ちなみに私が新入生としてこの高校に入った時も手伝わされたわ」


「勘弁してくれよ...」


 おいおい、俺に常識がないとか言っておいて手伝わせるって正気か?いや、そのために会議室に缶詰と考えればおかしくは無い、のか?

 まあ、どっちにしても面倒なことに変わりはない訳だが...


「なあ、そもそもの話今年は中止にしないのか?邪神とか出てきてるんだぞ?」


「中止にはしないわ。と言うより出来ない。邪神がどうたらで中止にして、経験不足で危険な戦場に立たせたりなんて出来ないもの。だから今年はさらに人を増やす必要があって、どうしても貴方に手伝ってもらう必要があるの」


 面倒極まりないが、断っても父さん経由できそうだしな...


「......貸し一つな」


「今度美味しい料理を出してくれる店に連れて行ってあげるわよ」


「それだけで返し切れると思うなよ?」


「ええ、そうね」


「......」


「......」


「ははっ」


「ふふっ」










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お待たせしました。去年もだけど殺人級の暑さですね。気をつけてください_:(´ཀ`」 ∠):


キングダムは最高だった(異論は認...めたくない)


あと、菫さん書いててやっと本当の意味で女性書いてる気分になった(紅葉さんと月読様は口調のせいで男と女の差がなかった)

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