第71話






「あー、朝から疲れた」


 俺は今、霊術で生み出した龍に乗り学校へ向かっている。


 それと、結局懸念通りあの後起きてきた月読に、昨晩の事を怒られてしまった。(まあ、照れながら怒っていたからフリだとは思うが、後程甘味を捧げておこう)


「そう言えば、菫が朝来たら職員室に来て欲しいって言っていたな」


 俺は龍の上で寝転がりながら、数日前に別れる少し前に菫に言われたことを思い出していた。


 まあ、初っ端から一ヶ月も学校休んだんだし、いくら公欠扱いでも色々あるんだろう。菫も俺に付き合って一ヶ月の間教師としての仕事を休むことになってしまったし。


「菫にも今度、甘味でもご馳走した方が良さそうだなぁ」


 あ、ちなみに俺の最低限の一般常識は、菫と行動を共にしている間に塵とかした。

 いやぁ、前世から引き継いだ知識で幾つかはカバーできたんだが、そこは神が実在し妖の脅威に晒されている世界。俺の常識なんて真正面から打ち砕いてきたよ。


 まず特徴的なのが、道端に道祖神などを祀る地蔵やら祠が多い事や、子供が遊ぶ公園に悪鬼羅刹を彫ったと言われても信じるような石像や銅像があったりした。まあ、地蔵や祠は道祖神や産土神、氏神がその地域や街に張る妖や人の体に悪いものを防ぐ結界を強めるためだろうし。石像や銅像も、結界をすり抜けた妖や、退魔師であっても邪神の信徒になった者などを鎮圧するための警備用ロボット(式神か?)みたいな感じなんだろう。


 ただ、他にも退魔師の階級によっては街中の店などで、売り物の値段を割り引いてもらったり、場合によってはタダになったりしたのは驚いた。そもそも、たいして隠す気がないとはいえ、一応は一般人に退魔師の存在がバレてはいけないということになっているのに、それをガン無視しているのだから驚くなという方が無理だ。


 救いがあるとすれば、地下シェルターや像が増えているとはいえ、基本的な街並みは変わらず、コンビニやスーパー、デパートなんかはそのまんまと言うことかな。移動中に買った商店街のコロッケは美味かった。


「んー、改めて思い出すと街に出たくなるなぁ。一応父さんに聞いて、休日は依頼や任務が入らなければデートみたいな感じで紅葉や月読たちと街に出るのも良いなぁ」


 そんな事を考えていると、いつの間にか学校の近くまで来ていた。


「ここからは徒歩だな。車に乗ってきたり、肉体を強化して人外のスピード走っている奴はいるけど、式神や霊術で生み出した生き物を乗り物にしてくるやつなんていないだろうし、襲撃なんて勘違いされたら大変だ」


 そういや、この学校の授業ってどんな感じなんだろう。退魔師用の学校ではあるけれど、普通の授業はするだろうし、歴史とかやだな。前世と全く違うとこあったりするし。(九尾の狐とか普通にいるし)


「あー、授業が憂鬱だー」


 俺はそんなことを言いながらも、菫の待つ職員室に向かっていった。





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「なあ」


「何かしら?」


「なんで俺は職員室に呼ばれたはずなのに、会議室にいて、しかも書類を処理しているんだ?」


「知らないわ。まあ、書類があるのだから処理するしかないでしょう」


 俺は今、高校の会議室で天峰家の書類を処理している。

 これが数枚程度ならいい。だが俺の目の前には高々と書類の山が積まれている。


「おかしいな。これらの書類は全部父さんが処理するはずなんだが」


「邪神や魔界。他にもそれらに伴って犯罪組織や妖の起こしたことを解決するために人がいるらしいわ。だから貴方に書類が回ってきたのでしょうね」


 ああ、それならまあ仕方ない。自分で言うのもなんだが、天峰家は退魔師の家系の中でも上位。歴史であればそれこそ天皇家の次くらいには長く、実力も詳しくは俺も知らないが、御三家に劣らないほどだ。

 

 ただ弱点もある。それは人の少なさ。

 他家と比べて分家の数は少なく、家に仕える者たちも決して多くはない。その分実力面ではとても優秀で他家を圧倒しているが、こういう事態になると露骨に弱点が出てしまう。まあ、そもそも実力があるとはいえまだ子供の俺や紗枝を引っ張り出している時点で人手不足なのはお察しだが。


「はあ、俺が書類を処理しなければならないのはわかったが、なんでお前も書類の山と戦っているんだ?」


 そう、先程から俺と会話をしている宝生院菫もまた目の前の机に書類の山を築き、ソレと戦っていた。


「仕方ないじゃない。一ヶ月も仕事を休んでしまったのだもの、これぐらいは溜まるわ」


「そうなのか?まだ若いのだから溜めるような仕事は多くなさそうだがな」


 退魔師として仕事をしているなら、代わりに誰かがやっていてもいいと思うが、それが出来ないなら菫でないと処理できない書類ということになる。

 確かに菫は上の上の実力を持っているが、年はまだ二十二ぐらいだったはず、そんな重大な仕事を任されるものか?

 


「それも仕方ないのよ。この高校では試験の際に、将来退魔師になることを予定している子達に実技試験を受けさせるのだけれど、その際に実際に妖を倒す仕事や護衛の仕事などをしてもらって、その内容で点数を決めるの。それに、私は狸様を除けばこの高校で最も実力が高いから、責任者として書類に目を通さないといけないわ。それに、あなたも同じでしょう?」


「そこはほら?俺嫡男だから仕方ない。でも、ならなんで俺についてきたんだ?そのせいで一ヶ月分を急いで片付けないといけなくなっているだろ?」


 そう、そこが気になる。確かに菫は一般常識を教えてくれると言ったが、それは学校の休み時間にできるだろうし、そもそも一ヶ月も付き合う必要は無かったはずだ。


「それは......私はも目的があっただけよ。それに、ちゃんと収穫もあったわ。鈍ってしまっていた感も取り戻せたし、上の上になってから中々実力が向上しなくてもどかしかったけれど、貴方と一ヶ月間様々な敵と戦ったおかげで、止まっていた分一気に成長できたもの」


 ふーん、まあ全部入っていないみたいだが、嘘をついているわけでもないし、今はこれでいいか。実際に実力の面ではかなりの成長が見えるしな。


「そらなら何より。それと、俺が言えたことじゃないが、超越者になりたいのなら焦ったりはするなよ?」


 改めて思い返せば、あれは死んでいてもおかしくなかった。あの時は大真面目だったが、紅葉に負けたくないという一心だけで自分の体を傷つけ死の寸前まで追いやり、力尽くで壁を越えるなどと言うふざけた真似をした訳だしな。なんなら壁を越えた、ではなく壁を破壊したという表現の方があっているまである。


「......そう、わかったわ」


 菫は、俺の言葉に少し思うところがあったのか、俺の顔をしばらく見つめてそう答えた。


「それはそうと、菫。この書類の山、昼までに終わると思うか?」


「さあ?終わらないなら終わらないで、貴方と一緒にお昼を食べて仕事を続行するだけだもの」


「俺、高校生なんだけどな......」


「遅れた分の勉強は、私が一対一で教えてあげるから、早く書類を片付けるわよ」


「わかったよ...」





 ちなみに、結局昼を過ぎても終わらず、菫と二人で昼食を取った後、なんとか下校時刻までに終わらせることができた。...まあ、美人と一日中一緒にいれて、色々と話もできたからよしとしよう。








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 三回連続で書いた文が飛ぶのはあかん。

 マジで発狂する。ヘ(゜Д、゜)ノ

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