第69話







 あの後、俺たちは料理を完成させた紅葉の分身がご飯をよそって晩飯の準備まで終わらせてくれたので、そのまま晩飯にした。

 ちなみに、献立は白米に味噌汁、山菜や鶏の天ぷらに大根の煮物などだ。

 天ぷらなんかは霊術を使って出来立ての状態で保存しておいたらしく(だから何故そこに高等技術を以下略)揚げたてで美味しかった。また、月読は冥奈のことが本当に気に入っているようで、食事の際も甲斐甲斐しく食べさせたりなどして可愛がっていた。動物は可愛がりすぎるとストレスになると聞いたが、冥奈はペットではないし亀だけど霊獣だから問題はないだろう。多分。


 そして現在、冥奈は紅葉と共に部屋で寝たようで、俺はと言えば召使に用意させた月読の部屋で、布団の上に月読と二人並んで座っていた。



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 まいったな。何を話せばいいかわからん(前世のコミュ障がこんなところで湧いてくる)

 俺がそう思っていると、月読が俺の肩に頭を乗せながら口を開いた。


「蒼夜よ、其方は我を抱きたくないのか?」


「......は?」


 今一瞬、月読の言っていることが理解できなかった。


 抱きたくない?月読を?誰が?俺が?


 ありえない。


 それが俺の答えだった。

 理由は簡単だ、顔やスタイルで言えば女神ということもあるのだろうが、絶世の美女で性格や内面も月読にとっては長いとは言えないかもしれないが、ここ十年の付き合いでそれなりに知っているし、なんだかんだ拗ねたり面倒くさがったりする欠点なども含めてベタ惚れだ。だと言うのに月読はそんなことを言う。


「な、なんでそう思ったんだ?」


 俺は思わず声を振るわせながら月読に聞いた。


「ふむ、先程依代に宿り其方と話した際抱いてくれと言ったであろう?」


「あ、ああ」


「その際にな?最初の変な声は急なことで戸惑った故と分かるが、その後に妙に葛藤しているように見えてな。それで嫌なのかと思ったのだ」


 .........マジ?俺が男の体面気にしたのがバレて、しかもそれで勘違いまでさせたと?

 

 俺はその事実に思わずショックを受けた。

 だってそうだろ?男の体面も確かに大事だが、それはあくまで俺にとってだ。ましてや、月読のことを肉体の成長などもあったとは言え、十年以上も待たせたことを考えれば、そんな事はどうでもよくなる。


 そこまで考えて、俺は慌てて口を開いた。


「それはない!」


「本当か?」


「ああ本当だ。月読が感じた葛藤はあくまで俺の個人的なもので、お前を抱くのが嫌だとかそんなことはあり得ない。むしろ夢の中などで何回も会っているのに、現実では全く会えなかった分早く月読に会いたかったのにそれは無い!」


「なら何故葛藤したのだ?其方の個人的な事とはいえ、我の言葉が原因なのはわかる。故に我に教えよ。でなければ我は不安で不安で病んでしまうぞ?」


 そう言うと、月読は俺の肩に頭を乗せたまま上目遣いで俺の目を見つめてきた。


 おいぃぃ!!そこで上目遣いは反則だろ!それに病むって!流石に月読に病まれたら俺じゃあどうしようも無くなってしまうぞ!?(物理的にも俺の精神的にも)

 

 こ、こうなったら言うしかないのか......


 言う以外の選択肢を潰された俺は、大人しく洗いざらい吐くことにした。


「その、だな...?とてもくだらない理由だが聞いてくれるか?」


「うむ」


「俺が葛藤した原因は、男の体面的が理由だ」


「......何?」

 

「だ、だから!俺が葛藤したのは男の体面が理由だ!俺は別に亭主関白だの男尊女卑だのは思っていないし、家庭内で言えば嫁が強い方が何かと安定するぐらいに思っているが(前世と今世の両親がそう)男女の仲になる際に最初は俺の方から言いたかったんだ!なのに、紅葉には先に言われるし、月読にも言われる前に言おうと思っていたのに、依代に宿ってすぐに言われてしまうしで、思わず悩んでしまったんだよ!だが、あくまでこれは俺が勝手に悩んでいただけで、月読のことが抱きたくないとか、そういうのはあり得ない、むしろ今すぐ結婚式を挙げてもいいと思うほど月読のことは好きだし愛してるから、そこはしっかり認識しておいて欲しい!」


 俺はそこまでを息継ぎする事なく言い切った。実際、我ながらくだらないと思ってしまうが、前世から童貞な事もあって格好良くリードするとまでは行かずとも、ある程度雰囲気を整えて良い感じに誘いたいって思ってしまったんだから仕方ないだろう。仕方無くないけども。

 それと、結婚についてはこう言ったが、紅葉に言ったように十八になるまではする気はない。てか出来ない。法律さえなければとも思ったが、邪神が湧いてきている現状を思うと法律が許したとしても、月読と紅葉も今はダメと言うだろう(むしろ邪神を消し炭にしそうだが)


 そして、俺の言葉を聞いた月読はと言えば。


「ふふふ、あは、あはははははははははははは!!!」


 思いっきり笑っていた。


 いやね?我ながらくだらないとは思ってけどそこまで笑わなくてもいいと思うんだ。確かにね、情け無いとか童貞が粋がんなとか言われるかもしれないけどさ。そこまで笑わなくてもいいじゃん。


 そこまで考えて、顔に出てしまったのか月読が笑うのをなんとかやめると(それでも肩は震えている)俺に抱きつきながら口を開いた。


「ふふ、笑ってしまってすまんな。思ったより可愛い理由で驚いてしまった」


「だからってあんなに笑うなよ。自分でもくだらないとは思ってるけどさ」


「いや、我も勘違いして勝手に不安になってしまったし、神と言ってもなんだかんだ感情に振り回されてばかり故、蒼夜の考えをくだらぬとは思わんよ」


「そうか」


「うむ、そうだとも」


 すると月読は俺を布団に優しく押し倒し、抱きついて胸に顔を埋めながら口を開いた。


「それにしても、我もとんだ勘違いをしてしまったものだ。まあ、そのおかげで蒼夜がどれほど我のことが好きかを知れたから良いがな。それと、当然だが我も其方の事を愛しているぞ」


 月読にそう言われ、思わず顔が熱くなったが、月読を見てみると何故か俺の胸に顔を埋めたままで、綺麗な黒髪の間に見える真っ白な耳を見れば真っ赤に染まり、それを見た俺は心に揶揄いたい欲求が生まれてしまった。


「なあ、月読?いつまで顔を埋めているんだ?」


「別に良いではないか、それに其方の匂いは落ち着く」


 おう、恥ずかしいじゃないか。それはそうと顔を上げる気はないようなので追撃をする。


「それは少し恥ずかしいな。ところで月読、髪の間に見える耳が真っ赤だが、もしかして自分で言ったことを恥ずかしがっているのか?俺は嬉しかったぞ?」

 

 俺がそう言うと、月読は肩を少し跳ねさせはしたが決して顔は上げず。


 ぐりぐりぐりぐり  ごんごんごんごん


 と、顔を痛いほど胸に押し付けたり何度も頭突きをしたりしてきた。


 




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 コーヒー(ブラック)飲みながら書いてた。あと、人間関係の描写って大変上手く書ける気がしない(てか恋愛したことない奴がラブコメかけるかいボッチだし)

 

 それから、遅れてしまってすみません。

 (´・ω・`)

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