第67話





 フレイとシャルロッテ可愛いかよ(おっと誰か来たようだ)




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「痛っ...」


 いきなり抱きつかれた俺は、依代を完成させたばかりで疲れていたのもあり、思わず尻餅をついた。


「つ、月読?」


 俺は依代に宿っているであろう月読にそう呼びかける。依代には様々な種類があり、凡庸性が高く様々な神が降臨できる依代もあるが、俺が今回作ったのは月読専用の依代であり、その依代が動くのならば月読が中に入って動かす以外にありえないからだ。


「遅いではないか!我がどれだけ待っていたと思っている!」


 俺に抱きつき、胸に顔を埋めていた月読はいきなり顔を上げるとそう言った。


「それは...その、ごめんな。でも、これでも急いでたんだぞ?これから先お前が長いこと宿る予定になる依代だから材料も一番の物を集めたし、作業も手抜きなどもってのほかだから、可能な限り丁寧にやっていたんだ、それを考えれば早い方ではあるんだぞ?」


「うぅ〜うぅ〜...」


 俺がそう反論すれば、月読は駄々を捏ねた子供のように唸り出し、胸をポコポコと殴る。

 まあ、実際はポコポコどころかボコボコなんだが、俺は超越者だから特に問題はない。


「まあ、色々面倒ごとが入ったとは言え、最初の予定より一ヶ月もズレたのは事実だし、お前に俺が女とイチャイチャしているように見えたのなら、それは俺の責任だ。ごめん」


 俺はそう言って謝り、月読を強く抱きしめた。


「むぅ、そう言われたらこれ以上怒れぬではないか。言い訳でもすれば存分に叱ってやったものを。あと、もっと強く抱きしめよ」


「わかったよ、ごめんな」


「仕方ない、ゆるそう。だが、その代わりに今夜我を抱け」


「ふぁっ!?」


 いきなり何を言うのかね?この女神は。


「昨晩、其方と彼奴がまぐわっていたのを我が知らぬと思ったのか?初めての接吻を我がもらったとはいえ、彼奴に自慢されたくなどないし。我自身十年...いや十五年も待ったのだ。断じて拒否など許さぬぞ?」


「おぉう」


 これは、本気マジだな。

 咲夜さん助けてくれないかなぁ。あのがあれば月読ももう少し落ち着くと思うんだが...


 俺がそう思い木花咲耶姫を思い浮かべると、脳内に【がんばって】と言いながら満面の笑みを浮かべ、サムズアップをする桜柄の着物をきた女神が現れた。

 今度会う時はロシアンルーレット(全部当たり)を土産に持って行ってやろう。


「それで、蒼夜よ。返事はどうした?」


 これは、逃げられんな。好きな女にここまで言わせたのならば、応えねば男が廃ると言うもの。

 ただ、紅葉の時もそうだったが俺の方から言いたかった。男の体面的に......


「わかったよ。我ながらクズだとは思っているが、月読ことも嫁にするって決めてるからな。今夜は寝かせないぞ?」


「望むところだ」


 俺はそう言うと、絶対に話さないとばかりに、月読を抱きしめる力を更に強くし、その唇を奪った。







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 あの後、しばらく時間も忘れて月読とイチャイチャしていたが、月読の気配を捉えて様子見をしていた紅葉が、痺れを切らしたのか作業場に突撃して来たことで中断された、が。


「月読よ、嬉しいのはわかるが来てそうそうアレはどうなのだ?曲がりなりにも三貴神ならば、もう少し慎みを持ってはどうだ?」


「ほざけ鬼め、その場で押し倒さなかっただけ理性が効いていたと思え。貴様が一年も持たずに我慢できなくなったのを、我は十年...いや、十五年も我慢したのだぞ?」


「ぐぬ、それを言われると叱れぬではないか。まあ、蒼夜も気にしていないどころか、随分と嬉しそうにイチャついていたようだし、これ以上は言わぬ」


 そして、現在は居間で茶を飲みながら話をしていた。


 あと、月読?あれは十分に"押し倒した"に入ると思うぞ?


「何か変なことを考えてはおらぬか?蒼夜」


 俺の考えを察知したのか、月読は茶請けの羊羹を食べながらもこちらに鋭い視線をよこしてくる。


「いや?何も変なことなんて考えていないぞ?」


 その視線に思わずドキリとしながらも、なんとか平静を装ってそう返す。


 「はあ、まあ良い」


 しばらく、疑っていたのか俺のことを見たままだったが、これ以上は無意味と諦めたのか月読は視線を切り、紅葉に話しかけた。


「それはそうと、紅葉。何か我に食わせてくれぬか?昔から人の子等は奉納で海の幸や山の幸を寄越すのは良いが、料理された物を奉納されたことは少なくてな。茶請けの...羊羹と言ったか?これも美味故、人の料理に興味があるのだ」


「ふむ、それならば吾と共に作ってみるか?最近では調味料や調理器具も多種多様に増えて、作っていてなかなか楽しいぞ?蒼夜も美味しそうに食べてくれるしな」


 まあ、普通に絶品だし、好きな女の手料理なのだから当然である。


「ほお?ならばそうしよう。台盤所へ案内せよ」


 あー、そういえば月読って前世の神話だと夜の食国を統べるって書いてあったな。ご利益の類でも五穀豊穣とかもあるし、月や占いの神格と比べて強くないだろうけど、食に関する神格も持ってそうだな。

 いや待てよ?食といっても食べる専門で、作るとダークマター製造とか無いよな?


 俺はそんなことを考えながら、つい先ほどまでは、今にも喧嘩を始めそうなほど空気が悪かったのに、今では仲の良い姉妹のように料理をしようとキッチンへ向かう月読と紅葉を見ていた。


「ズズー...」


 あぁ、茶が美味い。


 さて、俺は俺で料理ができるまで、蒼月の手入れや護符の作成でもするとしようか。

 あと、月読の着る服や住む部屋なんかも、召使に言って用意させておかないとな。



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 あい、今日はちょっと短めです。


 星、ハート、フォロー、よろしくお願いします。


 そういえば最近、新しいアニメが始まりましたが皆さん何が好きですかね?個人的にはまだ吟味中ですけど面白いのぼちぼちあると思います(ケッシテソノセイデシッピツガオソクナッタワケデハナイデス。エエハイ、ソノトオリデストモ。アリエマセンヨ、ハハハ)

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