第65話




コンコン


「来たぞ、紅葉」


 あれから風呂に入った俺は、時間になったので紅葉の部屋の前まで来ていた。

 

「っあ、ああ、来たか。入ってくれ」


 俺は紅葉の少し慌てたような気配に、首を傾げながらも言われるがままに部屋に入った。


「それじゃあ、邪魔するぞ」


 部屋の中は純和風と言った感じで、暗めの色の文机や座椅子、箪笥などが置いてあり、落ち着いた雰囲気を出している。


「それで?この時間に俺を呼んでどうしたんだ?」


 と、俺は聞く。


「ふむ、蒼夜よ。吾と其方が会ってからどのくらい経った?」


 と、聞き返してきた。


 俺はいつもと調子の違う紅葉に少し違和感を覚えながらも、返事をする。


「そうだな。一年は経っていないが数ヶ月は経っているな」


「そうであろう?それと、もう一つ書きたいのだが、月読の依代はいつ完成する?」


「それは...どうだろうな?月読に急かされたからもう時期完成だが、明日一日使えばおそらく完成か、完成間近になるだろうな」


「そうか」


 俺の返事を聞いた紅葉は、なにか覚悟でも決まったのか、顔を引き締め俺を真っ直ぐ見ながら口を開いた。


「蒼夜、今夜我を抱いてくれ」





_________________________________________

_________________________________________



数分後



「ふう、落ち着いた。すまんな、取り乱して」


「いや、吾も些か急に言いすぎた。すまぬ」


 先ほどの紅葉の言葉に混乱した俺は、数分ほど呆然としていた。おそらく客観的に見れば、奇声を出したり変な動きをしたりはしていないだろうが、目が忙しなく動きまくったり、よく見れば体が細かく震えたりしていたのがわかるくらいには動揺していただろう。


「それで、さっきの言葉なんだが...その、冗談ではないんだよな」


「そう、だな。冗談ではないぞ、其方との仲を義父殿や義母殿たちに認められてから、吾は其方と体を重ねたいと思っていたが、最初のうちは出会ったばかり故自重していた。だが、其方が余りにそう言う素振りを見せないので流石に焦れてしまってな」


「そうか...」


 紅葉がそう思っているとは思わなかった俺は、呆然と呟いた。

 

 いや、俺としてもいい加減関係を進めたいとは思っていたんだ。

 紅葉との出会いをきっかけに多人数を娶る覚悟も決まった訳だし、数ヶ月経ってすっかり天峰家に馴染めたようだから今日あたり聞こうと思ったんだが、まさか先に言われるとは...


「紅葉、言い訳に聞こえるかもしれないが、俺がそう言うことに興味がないと言うことはない。むしろ、超越者になり体がさらに頑強になってからは、紅葉や美雪を見るたびに少なからずそういった衝動が出てきて困るほどだ」


「ならば何故?何故吾を、婚約者にまでなった吾を抱いてくれないのだ?」


「それは、だな。紅葉が天峰家になれるのを待っていたのもあるが、その後は俺の気持ちの整理の側面が多かったな。ただ、俺の我慢も限界に近かったからな、入学式の辺りで誘おうと思ったんだが、襲撃のせいで一ヶ月も忙しくなってしまってな。ごめん」


 俺も正常な思春期男子高校生。我慢するなんて無理。


「そうなのか...」


 紅葉は俺の話を聞くと、顔を伏せ肩を震わせた。

 

 俺が少し不安になっていると、紅葉は顔を上げ俺に抱きついてきた。

 そんな彼女を受け止め、その顔を見ると艶やかで美しい笑みが浮かんでいた。


「も、紅葉?」


「嬉しいぞ、吾の一人相撲かと思ってとても不安だったのだ。」


 そう言うと、俺の胸に顔を埋め、強く体を押し付けてきた。


「ごめんな、不安にさせて」


 俺は紅葉の頭を撫でながらそう言った。


「そう思っているなら、吾を抱いてくれ。今のでもう我慢が効かなくなってしまった」


 そう言った紅葉に、思わず美雪たちの事を思い浮かべてしまい少し固まっていると。


「安心しろ、美雪と紗枝には許可をもらっている。月読に関しては初めての接吻...ファーストキスだったか。それを取られたからな、こちらの初めてを吾が貰っても構うまい」


 と続け、顔を上げるとキスをしてきた。


「はむ...うにゅ...ちゅ..」


「ちゅ...はむ..ちゅ...」


 それから数十秒キスを続けると、どちらともなく唇を離し。


「それとも、まだ決心がつかないか?」


「...そんなわけがないだろ!」


 揶揄うように紅葉にそう言われた俺は、紅葉の唇を奪いもう一度キスをした。


「ん!?ちゅ...ちゅむ...んん....ちゅう...」


「はむ...ちゅ...はむちゅむ....ん...はむ...」


 そして、今度は数分経ってから唇を離す。


「蒼夜っ、蒼夜ぁ...」

 

 ああ、これはもう、我慢は無理、だな。


 茹で上がった頭で紅葉の声を聞いた俺は、ぼんやりとした思考の中、霊術で触れることなく押し入れを開けて布団を敷くと、横抱きにして持ち上げた紅葉を布団に寝かせ、覆い被ると。


「もう、止まらない、からな」


 俺の言葉に、紅葉は瞳を潤ませながら頬を赤くし小さく頷いた。

 そんな普段と比べると、いじらしい紅葉の仕草を見た俺は、鎖が千切れたような音を幻聴しながら、考えることをやめ、紅葉に襲いかかった。












_________________________________________

_________________________________________




 力尽きた..._:(´ཀ`」 ∠):







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る