第57話





 さて、紅葉と俺が婚約者になって数ヶ月が過ぎた。あと、もう少しで高校入学だ。

 ちなみに、父さん達に紅葉のことを話した後、紅葉は母さんと紗季さんに質問攻めにされ。俺は紗枝に部屋に連行され、言質こそ取られなかったが、まあ、逃げられないだろう。

 それと、美雪はそれから一ヶ月ほど経ってから里に帰郷した。帰る際に次会う時に言うべきことがあると言っておいたから察してくれているだろう。(多分)


 では、それ以外何をやっていたかって?

 まあ、紅葉と模擬戦をして超越者の力を物にしたり、紗枝も含めて三人で町にデートに出かけたりだな。と言うより、今世ではおそらく初めて町に出た気がする。妖退治の移動で通ったりはしたが、それ以外は周りに何もない天峰家の本家で鍛錬ばかりしていたからな。

 なんなら今も瞑想がてら霊力の操作技術を鍛えていたりもする。


 なお、紅葉に月読にキスされた事を言ったら問答無用で唇を奪われた。(嫉妬してくれているようで少し嬉しい)


「おい、蒼夜。いるか?」


 そうしていると、部屋の外から紅葉が声をかけてきた。


「ああ、いるぞ。何か用か?」


「吾ではなく義父殿だな。なんでもまた儀式をやるそうだ」


「わかった直ぐに行く」


 俺はそう言って廊下に出た。出ると紅葉が首に抱きつき、唇を重ねてきた。


「むぐっ...」


「はむ...ちゅ...」


 十秒ほど唇を重ねて満足したのか、紅葉は舌をチロリと出しながら首の後に絡めていた腕を解いた。


「はあ、キスしたいならしたいと言えばいいものを。いきなりはビックリするだろう」


「月読に先を越されたのだ。このくらいは構わないだろう?」


「月読には会う度にお前ばかり狡いと言われてわがままを言われているんだがな」


 実際、超越者になったおかげで問題なく呼べるようになったのか、夜神域に呼ばれることが増え、その度にわがままを言われている。まだ一線を超えていないが、現状を考えると気を付けていなければ、襲われかねない。


「ふん、嫉妬するぐらいならば降りてくればいいものを。いつまでも神域に引き篭もっているから吾に取られているというのにな?」


「はは...」


 まあ、そのことは本人(本神)も自覚しているのか、最近は会う度に依代の催促が来るようになった。


 依代とは、言ってしまえば器であり神からすれば能力制限を対価とし、地上を見て回れるというものだ。まあ、神によって素材の相性もあれば作り手の技量も欠かせないのでそうそう作れるものではない。


 実際、今使っている依代も上手く進んではいるが、素材の値段だけでも俺がこれまで十年かけて稼いだ金額がかなりの額吹っ飛んでいる。(退魔師の仕事は程度によるが基本上位であれば普通に億単位が報酬として払われる)

 具体的に言えば、樹齢千年クラスの杉を始めとした御神木とされる樹や特殊な環境で育ち、たっぷり霊力を含んだ月下美人(花言葉はガン無視、そもそも月の神に月下美人花言葉を言ったところで仕方がない)や、他にも神が直接鍛えたとされる神鉄に空から降ってきた隕鉄。そして、月読から強い加護を与えられ超越者となった俺の血(プライスレス)など。考えるのも恐ろしい金額となっている。


 まあ、なんやかんや月読にも惚れているわけで、そんな女のわがままは聞いてあげたくなってしまうから仕方がない。

 ちなみに、作り手も俺だったりする。何故かと言えば、加護を与えられた人間が直接作った方が親和性が高いからだそうだ。


「おい、蒼夜。何をボーッとしている?行くぞ」


 俺が頭の中で誰にいうでもなく考えていると、不審げな顔をした紅葉が急かしてきた。


「あ、ああ、わかった。行くよ」


 なお、驚かせたいからと月読からは紅葉にバレないようにと言われている。(キツくね?)







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「父さん、いる?」


 紅葉に案内され、部屋の前まで来た俺はノックすることもなく部屋に入りながら尋ねた。


「おう、いるぞ。ってか入ってきてるじゃないか」


「別にいいだろ?紗枝とかの部屋ならノックするけど」


「ククク、尻に敷かれてるのか?」


「父さんも同じだろ」


「まぁな」


 そんな軽口を言い合いながら、俺は椅子に座り父さんはお茶を入れてくれた。


「それで?今度は何の儀式をするんだ?加護の時もそうだったが、いきなりは辞めて欲しいんだが」


「まあ、加護の時はお前が思った以上に成長が早かったからだな。今回は単純に忘れていただけだが」


 おい。


「それに、今回は加護ほど重要じゃないからな」


「で、結局何をするんだ?」


「式神召喚」


「は?」


「式神召喚」


 二度言われた。いや聞こえてたよ?でも式神召喚ってどういうこと?


「式神って式神符から作るやつ以外に、妖を従属させるのがあるのは知っているけれど、他にもあんの?」


「あるぞ。具体的に言えば、霊獣や神獣を呼び出して契約する。この場合従属ではなく、ある程度対等な関係になるから、妖みたいに使い潰したりは無理だがな」


 あー、そういえば式神術が有名な家系は霊獣や神獣が多くいることが多かったけど、そういう事なのか?


「でも、俺に必要か?」


「必要だと思うぞ?式神にもよるが、高性能な前衛、中衛、後衛がいると安全性が増す。他にも偵察や回復、連絡など様々なことに使えるからな」


「うむ、胡蝶も吾の式神だからな。より正確には眷属だが、何かと便利だ」


「へー」


 あ、紅葉が言った胡蝶というのは紅葉が連れてきた女性で、元々胡蝶蘭で長い時を経て人型になった妖だ。


「なら俺もやるよ。それで?準備にどのくらいかかるんだ?」


「すぐ終わる。神々に呼びかけるよりは楽だからな。それに、お前は超越者になったからな。呼び出される側もすぐ来ると思うぞ?」


「うむ、相性もあるが相性が合えばすぐ来るだろうな」


 二人ともこう言ってるし今からやるか。


 と言うことで、俺たちは庭に移動した。








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テスト?知らない子ですね(^ω^)

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