第56話






「戻ったぞー」


 ついにこの時が来てしまった。


 紅葉と話して二時間ほど、ちょうど夕方ごろになって父さんたちは帰ってきた。超越者になってより鋭敏になった感覚から、母さんや紗季さん、紗枝も一緒なことがわかる。


 ふう、これで逃げられなくなったな。


 俺は改めて覚悟を決め、美雪に父さんたちを呼んでもらう。


 そして、しばらくすると......


 コンコン


「若様。当主様方がいらっしゃいました」


 美雪が部屋の扉を叩き、父さんたちが来たことを知らせた。


「入っていいぞ」


「失礼します」


 美雪は返事をすると、扉を開けて入ってきた。その後ろには父さん...と母さんたちもちゃんといる。紗枝の表情が少し怖いが、話ぐらいは聞いてくれるだろう。


「帰ったぞ蒼夜。それで話というのはなんだ?」


 部屋に入った父さんは、俺の隣に座る紅葉見て少し目を見開いたが、すぐさま動揺を隠してそう聞いてきた。


「おかえり父さん。母さんたちも。一先ず席に座ってくれ。話も大事な話だから落ち着いて話したい」


 俺がそう言うと、四人は俺の向かい側に座り、美雪はお茶を淹れに行った。


 そしてしばらく無言の時間が続き、美雪がお茶を淹れて戻り、全員の前に湯呑みを置くのを待って俺は話し始めた。


「まずはおかえり父さん」


「ああ」


「受けた依頼に関しては、屋敷を潰してしまったけど問題なく終わらせたよ」


「そのことなら義孝から聞いている。娘を守ってくれてありがとうと言っていたぞ」


「それなら良かった」


 うぅむ、緊張するな。


「それで本題なんだけど...」


「ああ」


「俺、依頼の最中に超越者になりました!」


 まずはジャブを、と。そんな感じで超越者になったことを父さんに報告した。


 すると父さんは...


「本当か!?」


 少し前までの緊張した雰囲気を吹き飛ばして、立ち上がり。驚きに満ちた顔でそう聞き返してきた。


「本当だよ。嘘をついても仕方ないし、依頼の最中に運良く壁を越えられた」


 俺がそう返せば


「そうか!そうか!よくやった!!」


 そう言ってとても喜んでくれた。

 さて、喜んでいる父さんには申し訳ないが、俺にとってはここからが本題である。


「喜んでいるところ悪いんだけど、それよりももっと重要な話があるんだ」


 俺がそう言えば、喜んでいた父さんはすぐに顔と息を整えて、とても真面目な雰囲気を出して聞き返した。


「その話はそちらのお嬢さんが関係あるのか?」


「そうだよ」


「それで、その大切な話とはなんだ?」


 よし、覚悟は決めただろう?ならば後は言うのみ。


「彼女は紅葉と言って、玉龍家の護衛の依頼の最中に出会ったんだ」


「そうか。それで?」


「高校卒業してからになるなるだろうが、彼女と結婚したいと思っている」


 .............


「冗談とかではなくてか?」


「こんな大事なことを冗談で言ったりしない」


「そうか...」


 俺の言葉に父さんは少し考えた後に、紅葉の方を向いて


「紅葉さん。本当に息子と結婚したいのですか?」


 と、そう聞いた。


 すると紅葉は...


「うむ、義父殿よ吾は本気で蒼夜と結婚しようと思っている。見ての通り吾は鬼故、吾を倒した蒼夜と一緒になることに否はない。それに、元々吾が蒼夜に一目惚れをして戦ったのだから、むしろとても嬉しく思っている」


 と言った。


 な、なんか、隣で聞いていると恥ずかしいな。


 そう思っていると、紅葉の話を聞いた父さんは深く息を吐いてこう言った。


「なるほど、詳しい話は後で聞くがしっかりと本気で考えていることはわかった。それに、元々お前は女誑しの気があったからな。認めよう。まあ、唯達も言いたいことはあるだろうから後で覚悟しておくことだ」


 ふう、なんとか許可をもらえたか。

 どうせならここで言ってしまうか。


「ありがとう父さん。それと...言いにくいんだけど多分これから先も増えるかなって...」


 そう俺が言うと、父さんは顔を変なふうに歪め


「......まあ、本人達がしっかり納得しているならオレから言うことはない」


 そう言った。









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熱中症なりかけた_:(´ཀ`」 ∠):


皆さんも体調にお気をつけください


星とハート、フォローに誤字報告よろしくお願いします(´・ω・`)

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