第54話








「はっ!」


 現実に戻った俺は、反射的に飛び起きた。


「マジかぁ」


 そして、先ほどのことを思い出して唇に指を当てながら呆然とした。


「本格的にクズ男になる準備が必要そうだなぁ」


 まあ、クズと言っても法律云々的には合法だし、何処ぞの外道の類と違って飽きたら捨てるなんて考えは持っていないし俺の今の父親だって嫁が二人いるわけなんだが、前世の記憶を引き継いでいるのもあってこの世界で普通だとしても幾らか精神的な抵抗が生まれるわけだ。

 妖だの犯罪者だのを殺すのには抵抗ないっていうのにな!


 ちなみに、この世界における犯罪者は普通の強盗や殺人を犯した手合いもいるが、それ以外に危険で封印した妖を故意に解放したり、邪神の為に生贄を集めているようなのもいるから自然と退魔師として活動している中で会うので、その際は躊躇いなく首を刎ねるように言われていた結果である。


「ゴロゴロ転がってどうした?」


「うおぅ!」


 アレやコレや考えたり悩んでいたりしていると、いつの間にか来ていた紅葉に蹴り飛ばされた。


「いたた...いきなり蹴ることはないだろう...」


「貴様が延々とゴロゴロ転がっていたからだろう。どうせくだらな事で悩んでいたのだろうがな」


「そんなわけ...」


 いや待てよ?確かに俺の考えや悩みは前世では正常かもしれないが、退魔師の家の当主が一夫多妻を許されているこの世界で天峰家次期当主の俺がこのことで悩んでいるのはやはりくだらないと言われても仕方ないのでは?

 俺は先程の考えを繰り返すかのように床をウジウジと転がった。


「だからそれをやめろと言っている」


 そしてまた蹴られた。


「くげ...まあ、俺が悩んでいることについてはそれっぽい理由をつけてグダグダしているだけで腹は決まってるから問題ない。それよりも美雪はどうしたんだ?」


「何を悩んでいたのかは知らぬが結論が出ているのなら吾からいうことは何もない。あと、美雪は今昼食を作っている。誰かが随分長くダラけていたせいで朝食もまだだからな」


「それはすまんかった。それはそうと、さっき月読の領域に来てたけどどうやって来たんだ?」


 俺が聞こうと思っていたことを聞くと紅葉は当然のことを話すような口調で説明した。


「別に難しくはない。ちょうど蒼夜の部屋から懐かしい気配を見つけてな、それで状況はわかったから後はその気配を辿って空間を渡れば簡単に行ける」


 簡単ではなさそうだな。でも、やれるようになると便利そうだし予定通り教えてもらおう。


「それどうやるのか後で教えてくんない?」


「別に構わん」


 やったぜ


「蒼夜様ー!紅葉様ー!昼食の準備ができましたー!!」


 と、ここで見計らったかのように美雪の声が届いた。


「む、出来たみたいだな。教えるのは昼食の後でよかろう」


「ああ、俺も腹減ってるからな」


 それにしても、最初の印象と全く変わったなぁ美雪。最初の頃は大声出したりせず、ほとんど笑いもせず、クールな美人な感じだったのにいつのまにかポンコツな残念美人になってしまって。


 俺は紅葉と一緒に歩きながらそんなことを考えていた。









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短め



_:(´ཀ`」 ∠):



イキテルヨ?




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