第49話






 さて、俺は今修羅場?的なのも問題なく乗り越えて紅葉と美雪を連れて楓達の元へ向かっているわけなんだが......


「若様は超越者になったようですが、やはり強かったですか?」


「うむ、最初上の上の時点で凄まじかったが、吾との戦いの中壁を越えてな。そこからは凄かったぞ。本来壁を越えたばかりでは調整のためにガタつくはずだが、すぐに調整を完了し十二分に実力を発揮していたからな」


「そんなぁ、せっかく私も上の上に上がって足手纏いにならずに済むと喜んだのに...」


「さして気にする必要はあるまい。美雪は雪女であろう?随分昔に超越者となった雪女を見たことがあってな、美雪は奴と似ている部分があり、おそらくだが血縁関係があるのだろう。それに、蓄積という点では蒼夜よりも勝っているからそう遠くないうちに追いつけるはずだ」


「そうだといいのですが...そういえば紅葉様は何故今宵ここに来られたのですか?先程は山奥で隠居していると聞きましたが」


「むぅ、それを聞くのか...少し恥ずかしいが話そう。吾も女であろう?故に婚姻...今では結婚というのだったか、それに憧れがあってな...だが、我自身超越者であり鬼であるが故に強者でなくては伴侶として認めづらくてな...まあ、あとは選り好みした結果ではあるが。その結果として今ここにいる。ちなみに、吾は一夫多妻にも理解がある故安心して蒼夜に迫ると良い」


「なっ!?何を言ってるのですか!私はあくまで若様の側仕えで!決してそのような不純な気持ちは...!」


「おかしなことを言う。蒼夜は既に超越者で寿命を気にする必要はないし、昔から幼い頃から側に仕えてくれた女子を妻の一人として娶るのは退魔師の家系ではよくあることであろう?」


「む、昔とは違うのです!紅葉様の価値観をそのまま持ってこないでください!」


「だからと言って気持ちを抑える必要はあるまい?ほれ、さっきから蒼夜に熱い視線を向けているではないか。それとも今蒼夜に聞いて気持ちをはっきりさせるか?おー...」


「わー!?わーわーわー!!やめてくださいー!?」


「あっ!何をする!口を塞ぐでな...むぐむぐ」


 とまぁ、こんな感じで女3人よれば姦しいを体現しているわけだ。二人だけど。

 いやね?色々話すだけなら別にいいのよ?紅葉は今の常識足りないだろうし、美雪も色々気になるところがあるだろうからさ?実際最初のうちは世間話だったしな。

 ただ、だんだん雲行きが怪しくなって気づけばこんな状態に...あと紅葉、確かにこの二、三年美雪からくる熱視線は多くなったが鋼の精神で受け流しているのだから話題にあげないでくれ。まあ、超越者になってあとは経験だけで当主になれるだろうから、いい加減考えなければならないんだろうが...


 とりあえず


「あー。紅葉も美雪もそろそろ楓達のところに着くから静かにしてくれ。あと、ちょくちょくこっちまで会話が聞こえてるから勘弁してくれ」


 と!俺が二人に言えば。


「うむ、わかった」


「えっ?えっ?まさか聞こえてた?紅葉様!もし聞こえてたらどうしてくれるんですか!?」


「うわっ!?いきなりつかみかかってくるでない!?あっ!やめっ!」


 はい。バッチリ聞こえてました。あと俺、静かにしろって言ったよな?言ったよな?


 むしろさっきより騒ぎ出した二人にうっすら青筋を立てながら俺は楓達の元に向かった。





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「おっ!楓達が見えてきたな」


 あの後もうしばらく騒いだ後、二人は俺が静かにしないと殴ると言ってようやく静かになった。


「はい。楓様達には念の為警戒を解かないように言っておきましたから問題はないと思います」


 なるほど、確かに警戒は解いて無いな。ただ、霊力の反応や生命力の反応を見る限り少なからず重症者はいるみたいだな。幸い死者などはいないようだが。


「ん?蒼夜達が護衛していたのは玉龍家の者だったのか?」


 俺が安心していると紅葉がいきなりそう言った。


「あれ?俺話したか?」


「いや、話しておらんな。ただ、吾は昔玉龍家の者と戦ったことがあって気配が似ているからそう思ったのだが、当たりのようだな」


 へー。確かに美雪のことも昔に先祖みたいなのにあったとか言ってたしわかるもんなんだな。コツとかあれば後で聞こう。


「ところで何故玉龍家の者を護衛していたのだ?」


「ああ、それはだな。玉龍家の娘さんが特異体質でな妖を定期的に誘き寄せてしまうみたいなんだ。それに、ちょうど彼女の父親や玉龍家の者達が用事で護衛できなくなって俺のところに依頼が来たんだ」


「なるほどの、確かに昔からそういった特殊な体質を持った者達はおったな。まあ、奴等は退魔師として恵まれている事に感謝すると同時に中には憎んでいる奴もおったが」


 ふーん?紗枝も特異体質だしあとで詳しく聞いてみるか。


 そんなことを話しているうちに、あちらも俺たちを見つけたようで楓が手を振りながらこちらにかけてきた。


「夜翁様!ご無事だったんですね!」


 楓は目の前で止まるとそう言った。


「まあ、大変ではあったが無事だな」


 俺は楓が特に怪我をしていないことを確認するとそう返した。


「えっと、夜翁様そちらの女性は?」


 紅葉の存在に気づいた楓はおずおずと聞いてきた。


 うーん、どう説明したものか。とりあえず今は誤魔化して後で説明させてもらおう。流石に疲れたしな。


「彼女のことは後で説明させてもらう。今は先に怪我人を治療しよう。それに休むために小屋も立てないといけないからな」


「...わかりました。ですが説明してくださいね?」


「ああ。わかってる」


 楓は少し不服そうではあったが、おとなしく言うことを聞いてくれた。



 


 さて、まずは楓に言った通りに怪我人の治療をするとしよう。










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待たせたな_:(´ཀ`」 ∠):


作者VS学校


WIN学校   LOSE作者   (´・ω・`)


 

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