第48話

 




「それでは早速貴様の家に行こう」


 俺がウジウジする中紅葉はそう言った。


 まあ、実際もう疲れたからそれでもいいんだが、今回は護衛の依頼を受けてここまで来たから帰るわけにはいかない。


「ダメだ。まだ任務中だから帰るわけにはいかない。っとと、そう言えば翁面ぶっ壊れたんだった。代わりの出さないと」


 俺はそのことを紅葉に伝え、紅葉に壊された翁面の代わりを体内から出現させて顔につけた。しっかり予備を持っておくのは大事だよな。


「むぅ、ならば共に待つとしよう。別に吾を見た途端斬り掛かって来たりはしないのだろう?」


「ああ、お前は強いし。俺も一緒にいるからな。不審者扱いはされるだろうがそれだけだ」


 あとは怯えられるぐらいかな?どこまで行ったかわからないけど随分派手に戦ったし、辺り一体更地になってる時点でお察しみたいな感じだろうな。


「不審者扱いは気に入らんが...まあ、蒼夜について行くと決めた以上我慢しよう」


「はいはい、ありがとうな。それに、そうこうしてるうちに来たみたいだぞ」


 不満そうに顔を膨らませた紅葉を宥めていると、探知範囲内に美雪や楓の反応が現れた。

 ちなみに、今のは霊力を使った探知ではなく超越者になったことで格段に上がった身体能力と鍛えてきた技術によってしたことだ。我ながら本格的に人間辞めたなと思ったよ。


「夜翁様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「うぉっと!?」


 そんなことを考えていると、いつさぞやと同じ......いや、それ以上の速度で走って来た美雪が思いっきり抱きついてきた。


「おーい?美雪?」


「はっ!?大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」


「大丈夫だから落ち着け、落ち着けってば」


 抱きついてきた美雪は俺の言葉に反応し、すぐさま離れると俺の肩や胸を手でペタペタ触りながらとてつもなく取り乱した。

 うーん、こうなるのは半分予想していたが予想以上...これは落ち着くのに時間がかかりそうだ。


 なお、結局美雪が落ち着きを取り戻したのは十五分ほど経ってからだった。





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「取り乱してしまい申し訳ありませんでした」


 落ち着きを取り戻した美雪は絶賛俺の目の前で土下座している。


「はあ、別に気にしてないから頭を上げろ...と言うか立て土が着くぞ?」


 何故かポンコツ化が進んでいる美雪にため息をこぼしながら俺はそう言った。


「はいぃぃ......」


「だから気にしてないって言ってるだろう。なら落ち込むな」


「わかりました」


 まだウジウジしている美雪にそう言うと、ようやく立ち直った。


「それはそうと蒼夜様。そちらの女性はどなたですか?見たところ鬼のようですが...まさかつい先程まで戦っていた相手とは言いませんよね?」


 おっとぉ?立ち直ったと思ったらいきなり不穏な空気が漂ってきたなぁ?


「あ、ああ。そうだが?だがコイツ自身単純に強い奴と戦いたいだけだったからな。確かに全力の殺し合いではあったが、俺も楽しんでいたから小言は無しにしてくれよ?」


 そう早口で説明する俺に、美雪は頭痛を堪えるかのように頭を押さえた後、ため息を吐いてこう言った。


「はあ、細かいことは後で聞きますがひとまずは置いておきましょう。それで?こうして一緒に大人しくいるということは危険はないのですね?」


 この美雪の疑問に対しては、俺が答えるよりも先に紅葉が


「うむ。吾は蒼夜に負けたからな。これからは蒼夜の世話になるつもりだ」


 と言った。


 それに対して美雪は


「え?連れて帰るおつもりですか?」


 と、般若面越しでもわかるほどの困惑を見せた。


「まぁな。なんか戦ってて仲良くなっちゃったし、結構こいつのこと好きなんだよな。それにこのまま放っておくと絶対面倒ごとになると思うし」

 

 実際、紅葉の目的が伴侶探しだったとは言え一先ずは連れて帰らないと面倒にしかならない。てか、こんなこと言いながらも美雪のことも好きだなと頭の片隅に浮かんだ俺はクズなのだろうか?まあ、紅葉は直接言ってくれたし美雪は美雪である程度俺に好意を持ってくれてるみたいだし、俺自身男でそう言う願望が無いわけじゃないし...って何考えているんだ俺は。


「んん...そんなわけで一先ず連れて帰って美雪のいた里とかみたいに契約しておこうかと」


「わかりました。ところで蒼夜様。お話ししたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」


「ん?いいけどなんだ?」


 美雪は納得してくれたが、いきなり改まってどうしたんだろう?


「実はですね。しばらくの間暇をいただきたいのです」


「おお...おお?」


 暇?つまり俺の側仕えやめるってことか?


「な、なぁ。その暇ってのはどのくらいの間だ?しばらくってことは別に今の仕事を辞めるわけじゃないんだろう?」


 俺は少し動揺しながらも聞いた。


「はい。詳しいことは後で話させていただきますが、少しの間里の方に帰らせていただきたいのです。あっ、遅くとも蒼夜様が高校に入る前には戻ってきますので安心してください」


 ホッ...それなら一安心だ。でもなんでいきなりそんなことになったんだ?気になった俺は美雪に聞いた。


「なぁ美雪。なんでいきなり帰ろうと思ったんだ?別に前から決めてたことじゃないんだろ?」


「そうですね。元々雪女として寿命が長いですから時間の感覚は結構雑ですが、それとは別です。若様はそちらの紅葉様でしたっけ?彼女に戦いで勝たれたのでしょう?」


「その通りだな。吾は蒼夜に負けた。だから言うことに従っている」


 なぜお前が答える。


「と言うことは、若様は見事壁を超えて超越者になったのでしょう?私自身、今回の護衛において力不足を感じてしまいまして。ですので一度里に戻って鍛え直そうと思うのです。偶然ではありますがアテもありますから」


 なるほど、確かに美雪は弱くはないが上の中...いやこの感じは上の上になったのか?まあ、どちらにせよこれから先俺が戦うことのある相手だと力不足ではあるな。これで「別に気にするな」だの「強くなる必要はない」だの言えればいいんだろうが、俺は危険な目に合わせたくないし、もしそうなったら自衛できるだけの力は身につけて欲しいと思うからな。超越者になれなくとも、もっと強くなれるのなら送り出すべきだろうな。


「わかった。俺は止めない。まあ、細かいことは紅葉のことと同じで帰ってからだし、今は楓達の方が先だろう?と言うか、置いてきてこっちまで来るなんて護衛はどうした?」


「氷で作った武者を置いてきたので問題ありません」


 いやそんなところでキリッとされても...


「とにかく先に依頼を終わらせるぞ」


「はい」


「吾には関係なかろう」


「バカ言え。お前のせいで変に拗れたんだからついて来い」


 俺は関係ないとかほざきよる鬼神の首根っこを捕まえて美雪と一緒に楓達のところに歩いて行った。





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作者「よーし、更新がんばるぞー!」


学校「やあ(゚∀゚)コレ忘れないでね【授業】【宿題】その他諸々」


作者「イヤダアァァァァァァ!!!!!!」



はい、と言うわけで遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m


次もできるだけ早めに投稿できるようにするのでこれからもお願いします。

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