第47話
「側仕えだと?」
俺の言葉に紅葉はキョトン、と首を傾げながらそう言い返した。可愛いな。
「ああ、お前は強者を探してあっちこっち行ったりしていたんだろう?誰かれ構わず挑んでその相手が死んでもアレだし、お前が重傷を負ったりしても気分が悪いし、だったら手元に置いておく方がいいと思ってな」
俺がそう言えば、紅葉は顎に手を当てて考えこんだ。
実際、俺が気に入ったって言うのもあるが大半が本音だ。それに、これから先も一緒にいてくれるなら手合わせしたりできるからな。
そう考えていると、考えをまとめたのか紅葉がこちらを向きこう言った。
「なるほど。吾は負けた身であるし、不束者だがお世話になろう」
「ん?」
「ん?」
あ、また首を傾げて可愛い...じゃなくて!
「ちょ、ちょっと待て。不束者だがってどう言うことだ?」
「どう言うことも何も、こう言う場合はそう言うのではないのか?昔の者達はこう言っていたぞ?」
は?昔の者達?......ああ!昔の婚姻ではそう言ったりもしたか。...いや待て!昔の者達はわかるが婚姻の場で言うようなことをなぜここで言った!?
紅葉の発言に戸惑った俺はつい聞き返した。
「お、おい。お前の言ってる意味はわかったが、何故そうなる?その言葉は婚姻の場で言うような言葉だぞ?」
「だから言ったのではないか」
「え?」
「え?」
首を傾げるの破壊力高すぎやな...じゃなくて!(デジャヴ)
「OK落ち着こう。まずは深呼吸だ」
「落ち着くのは貴様だ。何だいきなり取り乱しおって」
おお、そうだな。スゥー フゥー スゥー フゥー......良し!
「それで、紅葉は俺の言葉をどういった意味で受け取ったんだ?」
「なんださっきから一人でアタフタしおって...まあいい。で、さっきの言葉だったか?確か貴様が吾に側仕えになれと言ったことだったか」
「ああ、それでなんで不束者なんて言葉が出てくるんだと思ってな」
いや本当になんで?俺単純にそばに置いとくつもりで言ったんだけど。
「おかしな事を言うのだな。女に側仕えにならなど、側女になれと言っているようなものだぞ?ましてや吾のような鬼は己を倒した者を認める故に、そうやって求められれば喜んで応じるというもの。まあ、人格破綻者やら悪い意味で狂人の場合は勝ち負け以前に手段を問わず抹殺するだろうがな」
oh...そう言えばコイツが骨董品っていうのを忘れてた。紅葉の価値観は平安時代とまで行かずとも戦国時代や江戸時代辺りで止まっていそうだからな。それなら側仕え=側女...まあ愛人とか妾とかそう言うものと捉えても仕方ないのか......
ようやく納得の行った俺は、紅葉の誤解を解くために話し始めた。
「紅葉。俺がさっき側仕えになれって言ったのは最初の説明が理由だ。確かにお前は美人だし、俺自身そう言う気持ちがないかと言えば嘘になるが、そもそも側女だの妾だのを目的としてそばに置くわけではない。それに、そばに置いておけばいつでも手合わせしたりできるだろうからな。今回は俺が勝ったが、手段を問わなければ俺もお前も出していない手札がまだまだあるだろう?」
俺は少し早口になりながらも紅葉への説明を終えた。
「むぅ。そうなのか」
「そうだ」
「わかった。貴様の説明も理解できるしな」
ふぅ。少し不満気だが納得してくれたか。
俺がそう思い安心した次の瞬間、紅葉は予想外のことを言った。
「ならば吾の方から言おう。蒼夜よ吾を貰ってくれ。なに、伴侶になった際は当然尽くすし。こんなに良い男なのだ、もう二、三人増えても構わん」
「はぁ!?」
こ、こいつ!?納得したかと思ったらとんでもないことを...!?
「な、なんでか聞いてもいいか?」
俺はメチャクチャになりそうな顔の表情筋をなんとか制御しながらそう聞いた。
「うむ、元々今夜吾がこうしてここに来たのは勘に従った結果なのだ」
「というと?」
「吾は戦いが好きな鬼ではあるが、見て分かる通り女でもある。数百年好きに生きてきたが、ふと人々の家庭を見たり古い知り合いが伴侶を見つけるのを見ると吾も欲しくなってしまったんだ。そして、そう思いながら日々を過ごす中、吾の伴侶になれる存在がいるという保証も何もない勘が働いてな。その結果こうして蒼夜と出会ったわけなのだ」
マジか。
「これまでに伴侶を作ろうとは思わなかったのか?」
「作ろうとはした。だが、吾が納得できるものがいなかったのだ。貴様は我儘と思うかもしれないが、吾は強さを信奉する鬼でもあるが故に少なくとも吾と同等でなければ納得できなかったのだ。それに貴様も知っているだろうが、壁を越えて超越者となると半神や亜神の類になり不老になるからな。吾は途中で死に別れるのが嫌だったが故に自身と同等の強さを持ち、超越者に至った者を探していたのだ。まあ、元々不老の種もいるが...要するに吾の我儘の結果貴様と出会い惚れたのだ」
紅葉は俯きながらもそう話してくれた。
確かに現れ方が不自然ではあったが、まさか伴侶探しをしていたとは。とはいえ、今ここで「よろしくお願いします」などと言うわけにもいかない。実際退魔師の家の当主が複数人を娶っていることは知っているし、家の父親もそうだ。将来的には俺もそうなるだろうから抵抗はあまり無い。だが、だからと言ってホイホイ承諾するのはなんか違うんだよな。
「はあ。お前の話はわかった。俺も最初は傍迷惑な鬼だと思ったが、こうして壁を越えるきっかけをくれたし、戦いも楽しかったからな。それに、紅葉は美人だし俺も男の一人として妻に出来るならとても嬉しいことだ。だが、俺はお前と会って一日も経っていない。だから一先ずは側仕えとして我が家に来てもらう。そこでお互いにもっと多くの事を知った上で改めて話したいが、いいか?」
俺自身、結構我儘を言ってる自覚はある。事実、さっきの戦いの中でお互いの事を自然と理解できたから紅葉もこれが言い訳じみたことなのは理解しているだろう。
ただ、美雪や紗枝であったり父さんや母さん達家族に話さず決めるのもどうかと思っているからこんなことを言った。
そんな俺の言葉を聞いた紅葉は目を瞑って頷いた後...
「言い分はわかった。ならば後で改めて答えを聞く。その時は逃げることは許さんからな?覚悟しろ」
と言って笑ってくれた。
「ハハ...ありがとう。その時は必ず返事をするよ」
その笑顔に固まった俺はどうにかその言葉だけを口から絞り出した。
はあ、アレコレ理由をつけて先延ばしにしたはいいが、既に惚れてしまったみたいだ。これはどう足掻いても逃げたりは無理だな。逃げる気もないが。
_________________________________________
恋愛パートがわからん( ˙-˙ )
本当はもう少し上手く書きたかったんですが、経験不足ですね。申し訳ない_:(´ཀ`」 ∠):
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます