第46話
「綺麗だ......」
その姿を見た時、俺の口からは自然とその言葉が出ていた。
月明かりに照らされる中、片手に刀を持ち堂々とした姿を見せ。その身に紅蓮の炎を纏い、足元には炎で出来た大きな紅蓮華が咲き誇っていた。
「中々嬉しいことを言ってくれるではないか」
彼女は微笑みながらもそう言った。
「ああ、世辞なんかじゃない。本当に綺麗だと思ったからな」
まったく、戦いの最中だと言うのに見惚れてしまった。まあ、戦女神のように凛々しく美しい姿を見て見惚れるなと言う方が無理な話だが。
「そ、そうか...」
すると今度は、少し戸惑ったように身をよじりながらそう言った。
んー照れたのか?わからんけど。
「ん、んん。そんな事より貴様はさっきから吾のことを褒めるが、貴様とて我と同じような者だぞ?」
紅葉にそう言われて自分の姿を客観的に見てみることにした。
片手には蒼月を持ち、全身に淡い月光のような蒼色の光を羽衣のように纏い、足元には月光で出来た蒼蓮が咲き誇っていた。
「おお...確かにこれは人のこと言えんな。と言うか、これは予想外というかなんというか...」
自分の姿を確認した俺はつい苦笑いを浮かべてしまった。
「何故貴様が戸惑っているのだ。自身の使う術ぐらい把握しておけ」
ごもっとも。
「いやぁ、確かにそうなんだが。この術ってさっき詠唱しながら構築した術でさ。元になった術はあるけどこんなに派手になるとは思わなくて...」
俺は正直に白状した。
「なんだそれは。頭のネジが外れているのか?」
酷い言われようだ。
「まあ良い。刀を構えろ、蒼夜。決着をつけるぞ」
紅葉はそう言って紅炎を脇構えに持って行った。
「そうだな、全身全霊の一撃で決着とする...だったよな」
俺はつい先ほど戦いの中で紅葉が言った言葉を思い出しながら蒼月を八相に構えた。
本来剣道においては使わない構えだが、実戦であればとても有効的な構えだ。
互いに構えをとった俺たちは、全力で霊力を滾らせた。すると、紅葉の炎と俺の月光は答えるかのように激しく揺らめいた。
「やるか」
「ああ」
俺は周りの時間がとても遅く感じるほど深く、深く集中した。これはおそらく紅葉も同じだったのだろう。
そして、それからどれくらい経ったかわからないが、互いに示し合わせたかのように踏み込んだ。
「ガアアァァァァァァァ!!!!!!」
「ハアアァァァァァァァ!!!!!!」
互いの間にあった距離を瞬きの間に消し去り間合いに入ると、紅葉は右斜め下からの切り上げ、俺は右斜め上からの切り下ろしを全力で放った。
キィィィィィィィン!!!!
蒼月と紅炎がぶつかり合った瞬間時間が止まっていた。それは十秒か、一分か、それとも十分か。いや、一秒にも満たない時間だったのかもしれない。
そして、止まっていた時間が動き出した瞬間......決着がついた。
「カカ...吾の負け、か」
「ああ、俺の勝ちだな」
俺と紅葉は刀を振るった姿勢のまま止まっていたが、俺の手には蒼月がしっかりと握られており。紅葉の手には紅炎が握られておらず、少し離れた地面に突き刺さっていた。
「それで、吾は負けたわけだがどうする?」
互いに姿勢を元に戻すと紅葉がそう聞いてきた。
「どうする、とは?」
「そのままの意味だ。吾は負けた、故に首を刎ねられようと文句は言わん。吾がこれからどうなるかは貴様が決めることだ」
紅葉はそう言うと地面に直接正座で座り、目を瞑った。
そして俺は、いきなりの事に固まっていた。
紅葉をどうするか、だと?言ったら今はわかる。敗者が勝者に従うと言うのはこれまでの紅葉の言動でなんとなくわかっていたからだ。だが、だからと言っていきなり言われて戸惑わないわけではない。一旦深呼吸をしよう。
スゥー フゥー スゥー フゥー
よし、戸惑いも落ち着いたし真剣に考えよう。まず、殺すのは無しだ。俺は紅葉のことを気に入っている。叶うならばもう一度。いや、何度でも再戦したいからな。ただ、このまま放すってのも無しだ。本人が納得しない可能性もあるし、放したら放したで他の奴に挑んで死なせる可能性があるのを考えるとダメだ。
となると、実質選択肢は一つだけなんだよなぁ。まあ、俺が怒られたりすればいいだけか。
「よし。紅葉、お前の処遇は決めたぞ」
俺が声をかけると、今まで目を瞑っていた紅葉が目を開けて俺を見上げた。
「そうか。それで?吾をどうするのだ?」
「ああ、お前の処遇は
俺の側仕えになることだ」
俺はそう紅葉に言った。
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ようやく二人目、ハーレムタグが詐欺にならなくてよかった..._:(´ཀ`」 ∠):
あ、死んではいないので更新停止とかにはなりません。
お待たせしてごめんなさい。m(_ _)m
これからはもうちょい早めに投稿できるように頑張り......たいなぁって思います(願望)
誤字脱字があれば報告していただけると助かります(´・ω・`)
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