第40話
楓様達と妖を迎え撃つ準備をしてから少し経ち、視認できるほどの距離まで妖が追いついてきました。
「皆さん、既に見える位置まで妖達が来ましたが私たちなら問題なく殲滅できます。決して気後れしてはいけません」
「「「「はい!」」」」
私が発破を掛けると皆様は覚悟を決めた表情で頷き、返事をしました。
「それでは、式神と神像達お願いします」
次に私は、若様が呼び出した式神と神像達に妖を迎え撃つ様お願いしました。
ダッ!
私のお願いに頷いてくれた彼等は地面を蹴り勢いよく妖に向けて突撃をし始めました。
「グガァァァァ!!!!」
「ムウゥゥゥン!」
当初の予定通り、神像二体の内一体は上の上の妖の一体を相手し。もう一体の神像は上の中の妖を三体同時に相手をし始めました。
残りの式神達も六体の上の中相手に自爆同然の攻撃などで倒すなどして自分の役目を果たしてくれています。
であれば、私は残りの上の上一体を相手し、楓様達には全員で上の中を一体相手にしてもらう必要があります。
元々、式神符は若様と私で合わせて八十枚あり。若様が寄越してくださった式神の数は半分の四十体、上の中相手に六、七体で相手をしているので此方を助けるのは難しいでしょう。
「式神達よ、十五体は楓様達を援護しなさい。残りは私と共に上の上の妖と戦います」
残りの式神符を取り出した私は、霊力を注ぎ四十体の内十五体を楓様達の援護に向かわせます。この式神達は若様の作った式神とと比べ戦闘能力が低いので、おそらく肉壁にしかならないでしょうが、無いよりはマシです。
「般若さん、ありがとうございます」
式神を送ると、既に戦い始めている歌恋から感謝の言葉が届きました。
そちらを見てみると、歌恋は上の中を相手に防御と回避が主体ではありますが上手く立ち回り。その間に他の者達も陣によって妖を弱体化させ、逆に強化した術を複数人で叩き込み堅実にダメージを与えています。
楓様も、時に前に出て歌恋が支えきれない部分を補ったりして上手く立ち回っています。
流石は玉龍家の姫ですね。
私の式神も危ない時に壁になったりなどして役に立っている様です。
「さて、私たちも始めましょうか」
その事を確認した私は、目の前で律儀に待っているのか此方の様子を伺っているのかは知りませんが未だ襲ってこない妖に向き直りました。
「式神達、相手を撹乱しなさい」
私は強化系の霊術を発動させながら式神達にそう命じました。
ですが相手の妖は異形型、上半身は人型ですが下半身は脚が4本ありケンタウロスの様なのとも違う気色の悪い形をしていて、そのせいか跳躍力が強く飛び上がり式神達を踏み潰したりなどして容易く屠ってゆきます。
ですが、元々邪魔をさせたり気をさらせる程度にしか役に立たないと知っていたので焦らず槍を構え、着地した瞬間を狙い突進しました。
「はあ!」
「グギェェェェェ!!!???」
着地の瞬間を狙ったこともあり、私の攻撃は命中。霊術による強化と純粋に霊力を流したことによる威力増大などで底上げされた槍は素の性能と合わさって、足を一本切り落としてしまうほど強力になりました。
ですが、相手も上の上。足を切り落とされた事に怒った妖は私の方に向かって霊術を使い土で作った槍やバスケットボール程の大きさの土塊を放って来ました。
『氷壁』
その威力はとても強く、雪女である私が作った氷の壁を砕き。幾つかは、防ぎきれず私に向かってきました。
まあ、この程度であれば問題なく槍で叩き落とせるので問題はありませんが。
「ギュアェェェェ......」
そうして戦っていると、所々から妖の断末魔と思われる叫び声が聞こえてきました。
楓様達の方は、未だ戦っている最中で負傷者や霊力を消耗した者に霊薬を飲ませたりなどしながらも有利に戦いを進めているようなので問題はないでしょう。
そして、断末魔の上がった式神と神像が戦っている方では上の中の妖は全滅していました。ですが、その代わり最初四十体いた式神は自爆や倒されたりなどで五体ほどまで減り、若様が神降しまで使われた神像も一体は妖と相打ちという形で壊れておりもう一体も上の上の妖と戦いってはいますが既に所々ひび割れ片腕は既に捥げてしまっています。
ただ、相手の妖も無傷とはいかず全身から血を流して息も絶え絶え、そこに残った式神も加勢に向かったのでおそらく倒せるでしょう。
とならば、
「問題は此方ですね」
私は治癒の霊符を握りつぶしながら呟きました。
既に私が呼び出した式神は大半が倒されており、相手の妖も足や腕を切り落としたにも関わらずそれらの部位を再生させて外見上は無傷です。
再生するにあたって霊力を消費したでしょうから消耗がないという事はないでしょうが、私の実力は上の中で持久戦だと勝てるかどうかは怪しいところ。
「どうしましょうか」
そう言って妖と攻防を繰り広げながら悩みはしますが、解決方法自体は頭に浮かんでいます。数時間前、楓様の屋敷で若様に話した炎と氷を融合させた術を使うという事です。
この術であれば再生能力に優れた上の上の妖でも倒せるでしょう。
「ですが今ここで成功させるのは...」
ただでさえ訓練で成功させるどころかいつも霊力を消費して不発に終わったり、暴走して爆発したりしているというのにどうやって実戦の中で成功させると言うのか。
そこまで考えて私はつい数時間前に若様に言われた事を思い出しました。
《でもさ美雪、実際美雪は木花咲耶姫の加護をそれもかなり強いものを授かっているのだからできないことはないと思うよ?それに美雪は雪女で妖だから氷の扱いだけでなく霊力の扱いも本能的にわかるんだろう?ならもっと自分の雪女としての部分や木花咲耶姫から授かった加護に身を任せて力の流れのままにやれば案外うまく行くんじゃないかな?》
そうです。私は若様達と暮らし、里での暮らしも人間らしかったので忘れていたりしましたが、雪女で妖です。
妖は人と比べて霊力の操作や霊術の行使が本能的によるものが大きいのです。ですが私はこれまで人と同じように理性的に術式に沿ってばかりでした。それは決して悪いことではありませんが、妖としてはそれに頼りすぎると本来の力を出せないと幼い頃母や周りの大人達に言われたのを忘れていました。
それに私には木花咲耶姫様の加護があります。この加護のおかげで雪女ではありますが、炎の霊術も高威力で使うことができているのです。
ならば雪女という妖としての本能と、木花咲耶姫様の神格の一つである火の神としての一面を強く意識して思うがままに霊力を操り術を行使すれば良いのでは?
その考えに至った私は、懐から勾玉を取り出して砕きました。
この勾玉には若様の霊術が込められており、砕く事によってその術を行使できます。
『
この術は相手を氷漬けにして封じる拘束系の霊術で、勾玉を砕いて行使する際雪女である私の霊力を少し足せば効果がとても上がり上の上の妖でもある程度の間は閉じ込めておかことができる。
そうして、目の前の妖が閉じ込められたのを確認した私はこれまであまり意識してこなかった雪女としての自分と自分の魂に刻まれた木花咲耶姫様の加護を強く意識し、体の内側を覗くように意識を沈めた。
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(´・ω・)(・ω・`)こんなんでええんやろか?
ふとした拍子にスマホの電源が落ちて書いた小説保存してなくて発狂したことってありません?自分は発狂しましたよ(経験済み)
_:(´ཀ`」 ∠):
あ。誤字脱字の報告も見つけたらお願いします。(脳死で書いてたりすると結構やらかす)
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