第37話
妖達は俺が各種強化の術を使い、『九天神剣滅陣』も発動させて五分もたたずに屋敷に突撃してきた。
「シッ」
ドスッ
「最初の方はやっぱり問題なさそうだな」
ただまあ、突撃してきたと言っても数が多いだけで妖の強さは中の上ばかり、稀に上の下が混ざる程度で弓だけで問題なく殲滅できる。
だが、これは上の上の強さを持つ俺だから言えるのであって屋敷で楓を守っている護衛達からしたら十分脅威になる。
「もう少ししたら本命も出てき始めるだろうから保険もかけておこう」
俺は『九天神剣滅陣』を屋敷の上に円を描くように展開し、そこそこ多い霊力を流し込んで術を媒体に屋敷全体を覆うようにして結界を発動させた。
この結界は上の中までの妖なら問題なく弾き、中の上以下の妖なら反撃して倒せるほどの代物だ。
なお、これも父さんによって天峰家の奥義扱いとされた。
「よし、屋敷はこれで問題ないだろうから今度はこちらから行こう」
俺は結界が問題なく発動したのを確認すると黒炎弓をしまい、腰に差した戦鬼夜炎と蒼月を左右の手で抜き放ち結界の外に出て妖の集まっている屋敷から少し離れた広場のような場所まで妖を切り捨てながら走った。
「よう妖共、今夜は月が綺麗だな」
俺は広場に着くと集まっていた妖に向かってそう言い放ち手当たり次第に斬りかかった。
「ははっ、こんなに沢山の強い妖がいるとは依頼を受けて正解だったな」
妖と戦いながらも俺は歓声をあげた。
そう、この場にある妖は弱くとも上の下であり、一番数が多いのは上の中、上の上も少なくない。
しかも、単純に力で押してくる鬼のような妖もいれば、糸や毒などの搦手を使う虫のような姿をした妖もいる。限界を超えて超越者になることを望んでいる俺からすればこの状況は感謝すら出来る状況だった。
「はっはっはっは!いいぞお前ら、もっと殺しに来い!!」
命懸けの戦いで興奮した俺は両手の刀を振い『業炎火剣』などの霊術を使って妖を屠りながら叫んだ。
これこそ俺が望んだモノ、数強さ共に申し分ない敵と極限の戦いは俺の魂を震わせる。
鬼が斧を振り下ろせば蒼月でで受け流し戦鬼夜炎で一刀両断にし。虫が糸を吐き毒を飛ばせば霊術で強風を起こして吹き飛ばし、炎の剣で焼き尽くす。
そうやって俺は戦い続けた。
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「もう終わりか?」
戦い始めて一時間が経っただろうか?最初優に百体以上いた妖は数を減らし、今では上の上が何体かと上の中が二十体前後までになり。上の下に至っては一体残らず死滅していた。
これではダメだ。もっと自分を追い込まなければ、寧ろ限界を越えるためにはここまで消耗してからこそが本番。
俺は自分の状態を確認しながらそう思ったその時。
「おい、そこの退魔師。随分と物足りなさそうな顔をしているな?」
何処からか女の声が聞こえた。
物足りなさそうな顔だと?俺は面を被っているのだ。顔の表情などわかるものか。
「誰だ?」
俺は聞き返す。
「なに、貴様がその翁面越しでも分かるほど不満げな顔をしているから話しかけただけだ」
そう言って俺の前に現れたのは鬼だった。
だが、鬼と言っても牛鬼のように人型の異形ではなく限りなく人に近い姿で美しい女の姿をした鬼だった。
歳は十八ぐらいか濡羽色の髪をハーフアップにし、目は切れ長の瞳に猫のように瞳孔が縦長な赤眼、モデル以上に整った体を黒を基調とした着物に包んでいて女神のようだと思ったが、額の二本の細長い角が彼女が鬼であると証明している。
何より、彼女から発せられる威圧が上の上の妖以上、つまり彼女が超越者であると表している。
「こんなところにお前のような鬼が何の用だ?」
俺は気になったことを尋ねた。
「なに、偶然通りがかってな。少しよってみるとお前が妖共相手に立ち回っているのが見えてな、見学していたのだ」
と言った。
「ならば何故今になって出てきた?」
「
「それは知っているがお前は超越者だろう?お前の基準では俺は強者ではないと思うがな」
「そんな事はない、霊力の量は異常なまでに多いし刀や霊術の技術は素晴らしい。何より戦闘を楽しんでいる。これだけ理由が揃えば吾が戦いたくなるのに十分だ」
...なるほど、壁を越えるのにこれほどうってつけの相手もいないが今は時期が悪い。
この鬼と戦えば残っている妖共に対処出来ないし、美雪に頼ろうにも流石に上の上数体を楓達を守りながら戦うのは無茶が過ぎる。
俺がそう考えていると目の前の鬼が動いた。
「なにを考えているかは知らんが、吾は今すぐにでも貴様と戦いたいのだ。そちらから来ぬのなら吾から行くぞ」
そう言うと同時に出現させた刀を右手に持ち向かってきた。
「なっ!もう少しぐらい我慢をっ...」
「強者を前に我慢など出来るものか!!!」
彼女はそう言いながら刀を振るった。
俺は慌てて彼女の刀を受けるために両手に持つ二刀の刀を交差させたが、受け止めきれず後ろに吹き飛ばされた。
ドガッ!バキッ ズガーン!!
吹き飛ばされた俺は楓の屋敷まで吹き飛び、幸い結界は術者である俺をすり抜けさせたが堀を吹き飛ばし屋敷を壊しながら楓や美雪、屋敷の者達が集まっている部屋に突っ込んだ。
「夜翁様!?」
「大丈夫ですか!!」
突っ込んできた俺を見た楓は悲鳴をあげ、美雪は叫びながら俺に駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか夜翁様!今霊薬を出します!」
俺は急いで俺の治療をしようとする美雪を止めて言うべきことを言った。
「美雪、霊薬はいらないこの程度自分で治す。それよりもお前は楓や屋敷の者達を連れて今すぐここを離れろ」
「どういうかとですか!?」
「面倒な鬼に絡まれてな、ソイツは俺が相手をするからお前はみんなを連れて屋敷から離れろ。念の為壁役も同行させる」
俺は美雪に指示を出すと、式神符を全て使い鷹や鴉、狼や虎などの姿をした式神を作り出し、とある霊術を使う為に触媒を出して詠唱を開始した。
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ちょっと中途半端なところになった。(´・ω・`)
戦闘が絡むとテンション上がって筆が踊っちゃうんですよね。_:(´ཀ`」 ∠):
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