第36話




 お嬢様...楓と話し、部屋を出て数時間が経った。

 太陽は既に落ち、辺りは夜の闇に包まれ空には美しい満月が浮かんでいた。

 俺は客間で言ったように数時間の間屋根の上に座り妖が襲撃してくるのを待っていた。


「そろそろ来そうだな」


 屋敷の塀の向こう側を見ながら俺は呟いた。

 塀の向こう側は光が無く、月光すら届かない闇に包まれており。

 この闇は妖が発する特殊な霊力によって作られている。とはいえ本来は光を通さないほど闇が濃くなることはないが、それだけその場にいる妖が強く数も多いのだろう。

 だか、俺からすれば好都合。あの老婆の占術が当たり強い妖が集まった。ならば、その妖と死闘を繰り広げれば壁を越えられるかもしれない。

 俺は客間で老婆達に言ったことを思い出しながら本当にその言葉通りになるかもしれないと、喜んでいた。


「客が来る準備をしなくてはな」


 俺はそろそろ妖の襲撃が始まると思い、腰に出現させた蒼月と戦鬼夜炎を腰に差し、手には黒炎弓を握り軽く矢をつがえながら美雪にもう少しで戦いが始まるから注意するよう霊術で知らせた。


 美雪から了解の返事を貰った俺は、さらに万全の準備で妖達を迎えるために月読様と咲耶様に教えてもらった条件付けを行った術式を使い強化した霊術を発動した。

 

 まずは『肉体強化』、次は武器を強化する『武器強化』、それぞれ時刻は夜空に満月が浮かんでいると言う条件を術式に組み込んだため、普通に発動するよりも強化率がかなり高い。

 そして身を守る『霊光天鎧』、これも肉体強化と同じく条件付けをして強化する。また、この霊術は牛鬼と戦った時は未完成だったが、あれから十年が経ち霊力の効率結界の強度共に格段に向上しているため条件付けと合わさり昔とは段違いの性能を発揮している。


 最後に『氷炎滅剣陣』を元に属性を追加した『九天神剣滅陣くてんしんけんめつじん』と言う攻撃霊術を発動した。

 この術は木火土金水の五行に四大属性の地水火風、そして陰陽と光闇を混ぜ合わせ各属性を剣にして出現させる術だ。

 出現する剣は九つあり、


 荒ぶる炎押し留めたような剣

 氷の剣身で周りに水を纏った剣

 風を視認できるほど圧縮した剣

 木でできていて外見は木剣だが凄まじい生命力を感じさせる剣

 極限まで刃を研ぎ澄まされた鉄剣

 外見は貧相だが山のような威圧感のある土で作られた剣

 常に周りに小さな雷を放つ雷の剣

 太陽の光を剣の形に固めたかのような眩い光の剣

 光を全て飲み込んでしまうかのような闇で形作られた黒剣


 これらの剣を自身を囲むように作り出した。


 別にこんな無駄に面倒な術を使わなくてもいいだろって?まあ、確かにそうなんだが。妖にも得意な属性があり苦手な属性があったりするので無駄では無い。あとは、厨二心とオタク魂が叫んでいるからだ。男のロマンを無視しちゃあいけない。

 それに、この術は九つの剣を維持しておけば霊力を込めることで各種の剣の数を増やし、敵に剣の雨を降らせる事もでき剣を媒体に結界を発動したりもできるからとても優秀だ。ちなみに、父さんにこの術を見せたら我が家の奥義にするから他の者に教えることはダメと言われたから相当な代物だと思っている。

 なお、霊力消費は上の下以上の退魔師が最後の切り札にするレベルで消費する。まあ、その分強い技でもあるから順当でもある。

 一応、儀式術としての術式も父さんに渡したから中の上以下の人でも使えないことはない。俺は霊力の量が頭おかしいので常用可能。

 

「さて、来るなら早く来い妖ども。俺は既に準備万端、いつでも遊んでやろう」


 俺は翁面の下の顔で獰猛な笑みを浮かべながら妖が来るのを待った。





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 思ったより話が進まない......(´・ω・`)



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