第33話



 父さんから護衛の任務を受け、美雪と準備をし始めてから三日目の昼、今日の夕方から護衛の任務に着くことになるのでそろそろ出発する必要がある。


 今回、護衛をするにあたって準備した物は傷薬や霊薬などをそれぞれ二十前後、霊符は式神符が2人で八十ほど、治癒の霊符が2人で二十ほど、身代りの霊符、まあヒトガタで良いかそれは2人で五枚ずつの十、それとは別で攻撃を結界で防ぐ護符を2人で三枚ずつ身につけることになった。


 何故数にばらつきがあるのかと言えば制作難易度もそうだが、素材の希少性や使う頻度を考えた結果だ。


 さて、持っていく物の確認もできたが美雪にも聞いておくか。


「美雪、何か忘れ物は無いか?」


「はい、若様。薬や符はしっかりありますし、武器防具の手入れもちゃんと完了しています」


 美雪はそう言いながら、何も無いところから手の平に槍を出現させた。

 これは、別に美雪の氷炎黒槍が特別なのではなく多くの退魔師は自身が扱う武器や防具、希少な道具などと魂の契約を結ぶことで体にその武器や防具、道具などをしまい、いつでも出現させることができる。

 実際、俺の蒼月や黒炎弓、戦鬼夜炎や翁面に着物なども俺の意思一つでいつでも出し入れが可能だ。


「問題がないなら良いよ。それじゃあ、そろそろ出発しようか、目的地も結構離れているみたいだし」


「わかりました。車の準備をさせますね」


「ああ、頼む」


 すると美雪は部屋を出て車を出す準備をしに行った。

 ちなみに、今日は初陣の時と違って見送りは無い、というのも父さん達も現役の退魔師で、昨日から父さんは母さんと紗季さんは紗枝を連れて妖退治に行っている。

 十年前と比べて全員強くなっており、父さんは上の中ではあるがその中でも上位の一握りに入っている、母さんは上の下ではあるが戦闘力自体で言えば上の中でもやれると思う、紗季さんも上の下に上がったし紗枝もそう遠くないうちに上の下に上がれるだろう。

 なお、俺に振り回された美雪は妖ゆえの基礎能力の高さと生まれ持った潜在能力でいつの間にか父さんと同等以上の強さになっていた。振り回した俺がいうのもアレだが流石だよな。


「若様、車の準備ができたので出発しましょう」


 そうしていると、美雪が俺のことを呼びにきた。


「わかった、今行く」


 それじゃあ、護衛対象の家に行こうかね。




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「若様、つきましたよ」


「おお?思ったより近かったな」


「はい、どうやら天峰家の近くに別荘があったようなのでそちらまで来て下さったようです」


 御三家は大体どの家も本家筋は京都か東京にいることが多いのでそこまで行くかと思ったが予想に反してすぐ着いて驚いてしまった。(なお、天峰家は京都と東京の間の人気の少ない場所に本家が建っている。比較的近くに雪女の里もある)


「へぇー、立派な別荘だな」


「はい、さすがは御三家と言ったところでしょうか」


 そう言い合う俺たちの前には、俺の暮らす屋敷程ではないが十分立派と言える屋敷が建っていた。

 と言うよりかは、俺の屋敷は本家の屋敷であり目の前の屋敷は別に分家の屋敷でもなく別荘の一つである時点で結構おかしい、うちもこんな別荘ないと思うんだけどな(そもそも、血筋なのか美味いものを食べるとかならまだしも別荘だとかの贅沢は全くしない)


「それじゃあ、護衛できたことを知らせよっか」


「はい」


 そう言って、俺と美雪はそれぞれ着物(家紋は隠してある)とお面(翁面と般若面)、刀弓槍を装備して門の前を警護している門番二人に話しかけた。


「ここは玉龍家の屋敷で間違いないな?」


「誰だ?」


 相手の門番二人は少し警戒した感じで聞き返してきた。


「今回、そちらの家のお嬢様を護衛に来た者だ」


「なっ!と言う事は貴方が夜翁か?」


「そうだ、わかったのならば屋敷の中に伝えてくれ」


「わかった、少しの間お待ちください」


 こちらの正体を理解した門番は途端に対応を丁寧にしてきて片方が屋敷の中へ指示を仰ぎにかけて行った。


「安心しました。義孝よしたか様から護衛が来るとは聞いていましたが実際に来てくれてしかも上の上の退魔師が来てくれたのは本当に良かったです」


「そうなのか?」


 義孝と言うのは今回依頼をしてきた護衛対象の父親だ。


「はい、実際にこれまでは襲撃があるたびに義孝様が殲滅していたのですが今回は事情があり来れず、しかも今回の襲撃は前までよりも強い妖が来ると占いで出たと言っていたので義孝様と同格の方が来てくださって本当に安心したです」


「そこまで言うのならこれまでの襲撃も決して楽に乗り越えられたというわけではないのか」


「ええ、義孝様が大半を殲滅しましたが撃ち漏らした妖を倒すために何名かが死にはしませんでしたが重傷を負ったりしましたから」


 なるほど、それなら確かに同格以上の者に依頼を出したくもなるか。それに今回はこれまで以上の襲撃だと言うのだから門番が安心するのも無理はないか。


「若様、相当危険なようですね」


「ああ、だが依頼を受けた以上やる事はやらないとな、それに屋敷の中でより詳しい話を聞けると思うしな」



 俺は美雪と話しながら、屋敷の中にかけて行った門番が戻るのを待っていた。






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ちなみに翁面のデザインはエルデ◯リングに出てくるやつと似た感じと思っといてください。

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