第28話



 月読命から加護をもらた後、月読命と木花咲耶姫から結構な無理難題を言われてしまった。

 まあ、一旦それは置いておこう。先延ばしにもできたし。


「ところで、俺はもう加護をもらったから戻ってもいいのか?」


 戻り方知らないけど...と思いながら聞いてみた。


「うん?まだ戻ることは許さんぞ?他にも色々教えることがあるし、話したいこともあるからな」


「そうね、私も同じだわ。教えることは全部月読がやるでしょうけど話は私もしたいもの」


 そう言われてしまった。

 これは、いつ帰れるのか不安になってきた。


「えっと、あんまり長い間ここにいると父さん達が不安がりそうなんだけど...」


「安心しろ、ここと現世では時間の流れが違うからな。ここに数日居ようとも現世ではほんの数秒程度だ」


「だから、遠慮なくお話ししましょうね?」


 俺が気になった事を聞くと二柱ともが笑みを浮かべてそう言ってきた。


「...それじゃあ、よろしくお願いします」


「よろしい」


「ふふ、楽しみだわぁ」


 本当にいつ帰れるんだ?これ。

 そんな事を思いながら、神域での神とのお話と修行が始まった。



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「こう?」


 俺は術を行使しながら月読命に聞いた。


「そうだ、これなら十分ものにしたと言えるだろう。もっとかかるかと思ったが思いのほか早く習得したな」


「ええ、普通ならもっと掛かるのでしょうけど、本当に早かったわ」


 月読命達との修行が始まって一ヶ月ようやく御墨付きをもらって現世に戻れそうだ。


 ちなみに、俺が二柱から習ったのは加護をもらう時に木花咲耶姫が言っていた神降しの術でそれとは別に月読命には月や夜に関する術を教えてもらい、木花咲耶姫には花に関する術や癒しの術を教えてもらった。

 どちらも、独特な術ではあったが効果は凄まじく鍛え上げればかなりのものになるだろう。あ、木花咲耶姫から教わった術は美雪にも教えてあげよう。

 それから、これらの術とは別に既存の術に何かしらの制限を掛けることにより効果を上げる方法なんかも教わった。

 例えば、肉体強化の術と組み合わせて少し霊力の消耗が大きくなるが昼の間だけや夜の間だけなどの制限を掛けて強化の倍率を上げたりなどだ。

 これは、それぞれに対応した術式を組む必要があるがそれをやるだけの効果はあると言える。


 とまあ、こんな感じでこの一ヶ月はとても収穫が多かった。


「これで合格ってことはもう戻るんだな」


「なんだ?寂しいのか?最初は現世で時間が経ってないから不安がっていたくせに」


「そりゃあ、こっちで一ヶ月修行している間に向こうでは一ヶ月間植物人間とか嫌だしな。でも、向こうでは時間が経っていないってわかったし、ここで色んな術を教えてもらいながら話したりして一ヶ月過ごしたら寂しいって思うのは当たり前だと思うんだが?」


「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。それだったら、向こうに戻ったら神像を用意してお供物でも供えなさいな。私は貴方と関わりがあるだけで加護を与えていないから難しいでしょうけど、月読なら貴方に加護を与えた神だからお供え物をすれば夢の中で会えるかもしれないわよ?」


「うむ、その通りだな。というわけで、戻ったら我の神像を作りお供物を供えよ。それと、夢ではなくこうしてはっきりとした状態で会いたいのなら壁を超えて超越者になれ、そうすればまたこうして会えるからな」


「ああ、わかった」


 よし、それなら戻ったら神像を作ってお供物をしよう。お供物って何がいいんだろ?普通だったら酒と水、米と塩なんだろうけど月読命ならそれ以外にもお菓子を供えたら夢に出てきてくれそうだな。


「それでは、そろそろ其方を向こうに返すとしよう」


「そうね、いくら時間が経っていないとは言え、一ヶ月は少し長かったもの」


 二柱はそう言った。


「そうか、わかった。一ヶ月の間色々教えてくれてありがとう」


 俺は、頭を下げてお礼を言った。


「構わぬ、其方のことは前から気に入っていたのだし、久しぶりに加護を与えた存在だからな」


「私も楽しかったわよ?美雪ちゃんを通して見ていた時もあったし個神的にも気に入ったからね、たくさんお話しできて楽しかったもの」


 二柱はそう言って微笑んだ。


「それじゃあ、またいつかこうやって会おう。その時は超越者になってるからさ」


「うむ」


「ええ」


 一旦の別れを終えて、俺の意識は薄れていった。



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神の視点side



 その後、蒼夜がいなくなった空間で月読命と木花咲耶姫は話していた。


「月読?もしかして貴女あの子に惚れたの?だからあんなに強い加護をつけて色んな事を教えたのでしょう?」


「なっ!?ば、馬鹿を言うな!久しぶりに加護を与えられる存在、それも神域に招ける程だぞ!?だからだ!」


 木花咲耶姫が月読命に笑いながら言うと、月読命は美しい顔を赤く染めて慌てて弁明した。


「あら、そう?でも昔から見ていたのでしょう?それにあの子は気づいていなかったけど、貴女随分と女の顔をしていたわよ?術を教えている時もたまに愛おしそうにあの子の顔を見ていたもの」


「命がいらないようだな?咲耶。切り捨ててくれる!」


「あら、怖いわぁ。ふふふ」


 月読命の反応が面白かったのか木花咲耶姫が更に煽るように言うと月読命はどこからか呼び出した太刀を片手に木花咲耶姫を追いかけ回した。


 月読命が持つ太刀はどこか蒼月と似た雰囲気を持っていた。


 





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