第26話
俺は今、月読命の神域にいる。
加護を授かる儀式の最中に招かれたからだ。そこで色々と話をし、加護をもらえる事になったのだが...
加護を授かる時を待っても目の前で手をこちらに突き出している月読命は固まっていた。
「えっと、どうかしましたか?」
俺はつい気になって聞いてみた。
「むっ、そのだな、其方に加護を与えようと思ったのだがどの程度与えればいいのかと思ってな」
「と、言いますと?」
「我の加護を受ける者が長い間いなく、ましてや神域に招くことが出来る者など初めてでな。加護の強さをどのくらいにすればいいのかが分からなくてな」
手を突き出して固まっていたのが動いたと思ったら、彼女の口から驚きの言葉が出てきた。
「つまり、初めての事で加減が分からず困っていると?」
「そういうことだ」
俺が思わずそう聞くと肯定の返事が返ってきた。
「..........」
「..........」
しばらくお互いに動かず無言の状態が続いた。
「其方はどうすれば良いと思う?」
「俺に聞かないでくれ、俺神じゃなくて人間だから」
「むぅ、それもそうか」
彼女は唇を尖らせそう言うと、眉を寄せ思案顔になった。
俺はそんな彼女を可愛いと思ってしまった。
「ふむ、分からぬことは仕方ない他の者に聞くとしよう」
「他の者に聞くとは?」
「なに、分からぬから他の神を呼び出して聞くだけだ」
えぇぇぇ、それいいの?と言うかここに他の神呼ぶの?大丈夫?
不安になった俺は聞いてみた。
「えっと、他の神様を呼ぶのは大丈夫なんですか?怒ったりしません?」
「安心せよ、弟のように面倒な神は呼ばぬ。知り合いで人がいてもさほど気にせぬ奴を呼ぶからな」
「さようで...」
全く安心ができない、多分彼女の言った通り問題のない神なんだろうけどやっぱり不安だ。
それにしても呼ぶ神は誰なんだろう?
「ちなみに、何方を呼ぶので?」
「咲耶を呼ぶ」
「???」
咲耶?そんな名前の神いただろうか?どっかで聞いた事があった気が...
「ふむ、全名は木花之佐久夜毘売。其方には木花咲耶姫と言った方がわかるか?其方の側仕えが奴の加護を持っているだろう」
「ああ!」
そうだ!美雪が加護の話をしてくれた時に加護をもらったと言っていた。
「でも呼んでも大丈夫なのか?」
「どうせ暇しておるだろうから問題なかろう」
「それならいいのですが」
暇してるならいいのか?
「それにしても其方、いつも通りに話せと言ったのに堅苦しさが残っておるな」
「それは...俺は前から親しい人と話す時でもたまに敬語が出たりするんだよ、それに、いいとは言ってくれたけどやっぱり敬う気持ちとかがあるからね。どうしても出たら時は出るかな」
言わないでくれ、そのことは自分でも自覚しているし前世からのことだ。
「まあ、それなら仕方あるまい。とりあえず咲耶を読んで、加護の加減を聞くとしよう」
彼女はそう言ってこめかみに指を当てて目を閉じた。
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月読命が木花咲耶姫に(多分)連絡をとり始めてから少し経った。
目を開けた彼女は俺に向かって。
「うむ、今少し待てすぐに奴が来ると言っておったからな」
「そんなのか、わかった」
もうすこしでくるようだ。
それはそうと。
「ところで、言葉遣いはどうしよう?今は貴女が言ってくれたから崩しているけれど、木花咲耶姫が来るのなら敬語の方がいいのか?」
「別にそのままで構わぬ。奴もどうせ気にせぬだろうからな。それに、我には敬語を使わぬのに奴にだけ敬語というのも気に入らぬ」
「わかった」
気に入らぬ、ね。いやそれ貴女が言ったんでしょうに、やっぱりどこか理不尽なところがあるような内容な。
俺がそんな不敬な事を考えていると。
「ほれ、何を考えているかは知らぬがもう奴が来るぞ」
そう月読命に言われた。
「あっ、はい」
俺はそう答え、居住まいを正して待った。
そうして少し経つと、どこからか花の香りが漂ってきて桜の花弁が少しずつ現れ始めた。
そして、月読命から少し離れた場所が光ったと思ったら、花弁が集まり人の形をとって弾けた。
「何の用ですか?月読。今直ぐ来いなどと、こちらの疑問にも答えず一方的に呼びつけるなんて」
そう言って、弾けた花弁の中から現れたのは赤や桃などの赤系の色と白を基調とし、その上に桜の花や花弁の紋様がついた着物を着た美女だった。
髪は赤っぽい黒に桃色のメッシュが入り、目は薄く金色が乗った黒で、顔自体も月読命が綺麗系だとすれば綺麗系と可愛い系を足して二で割った感じだ。
スタイルは月読命と同じで黄金比といえるものだ。
って、そんな事よりさっきもう少しで来るって言ってたけどほとんど無理矢理では?
「そんなことはどうでもよい。我が貴様を呼んだ理由は此奴だ」
「そんな事って、用件も言わずに無理矢理呼び出しておいて何を...言って...」
月読命は木花咲耶姫の抗議を無視して俺を指差し、木花咲耶姫はそのことにまたしても抗議をしていたが月読命が俺に向かって差した指を見てそれに従い俺の方を向いた事で言葉を途切れさせ、俺をみたまま固まった。
「お初にお目にかかります。天峰蒼夜です」
その事に居た堪れなくなった俺はとりあえず改めて自己紹介をした。
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