第20話




 俺は今美雪に絶賛甘やかされている最中である。

 美人でスタイルの良い雪女に甘やかされている現状は世の中の男が血涙流して羨ましがること間違い無しである。


 まあ、それは置いておいて。聞きたいこともあったから聞くとしよう。


「美雪、昨日のことって結局どうなったの?」


「昨日?ああ、牛鬼の事ですね?あの後当主様と奥様を交えて色々話しましたが問題はありませんでしたよ。それから、若様の退魔師の格が中の上になることが決まりました」


 おお、まだ5歳なのに中の上はなかなか良いんじゃないだろうか、でも昨日倒した牛鬼は異常個体で強さも上の下はあったはずだけどなんで中の上なんだろう?


「その顔はなんで上の下を倒したのに中の上止まりなのかと聞きたいんですね?理由は簡単ですよ、まず若様は実力は確かですが、まだまだ経験が足りません。他にも5歳児が上の下など認められないという退魔師たちもいますし、当主様や奥様もまだ幼いのに上の下の実力を持った妖と戦わせるのは心配なんでしょう」


「そうなんだ、納得したよ。それはそうと、牛鬼の角とか死体って何に使うの?」


 俺は美雪の説明に納得したので別の気になっていることを聞いてみた。


「そうですね、基本的に妖から取れる素材や瘴気や霊気が濃く強い妖や霊獣が住む場所にある霊材などは剣や鎧などの武具になったり霊薬や霊薬ほど効果はなくても傷薬や解毒薬、病に効く薬などに使えます。牛鬼の場合は角はそのまま使ったり砕いて鉄に混ぜたりする事で武器や防具を作れますし、皮なども革鎧や剣帯などの戦いに使う物になります。あと牛鬼の使う武器などは棍棒の他に稀に斧を持っている個体もいるので、そのまま使ったり加工して別のものになったりしますね。若様は昨日牛鬼の異常個体を倒していますので近いうちに当主様から素材をどう使うのか聞かれると思いますので考えておくと良いかもしれません」


「わかったよ、ありがとう」


 へぇー、やっぱりゲームみたいに武器防具に薬にして使ったりできるんだ、牛鬼の素材で何作ってもらおうかな?まあ、それは今度考えよう。


「そう言えばさ、昨日いきなり異常個体にあったわけだけどよくある事なの?」


「いえ、それはあり得ません。牛鬼がよく出るとされている場所ならともかく、あそこの森は餓鬼などの弱い妖しか出ないはずなのに通常個体であっても牛鬼が出た時点で異常です」


「やっぱりそうなんだ」


「そうですとも。でも最近は所々で異常個体が出たり通常個体であっても数が多かったりして大変らしいです」


 うーん、この世界ってゲームの世界と似てる部分あるけどそのせいなのかな?俺の歳的に多分主人公とかと同年代だと思うんだけどやっぱりラスボス的なのとかいるのだろうか?だとすれば自分や家族を守るためにもこれからは情報集めに精を出さないといけないな。


 俺がそう考えて唸っていると。


「若様、今度は考え事ですか?眉間に皺がよってますよ?」


 美雪にそう言われ眉間を指でグリグリされた。


「うわっ!何するの美雪」


「今日は私に甘えてくださると約束したではないですか。難しいことを考えるのは明日にして今日は私に甘えてください」


 美雪はそういうと俺の顔を美雪の方に向かせ、俺の顔をその大きな胸に埋めるように抱きしめてきた。


「ふぎゅっ」


「こうしているとやっぱり若様も5歳の子供と実感できます。いつもは刀や霊術の鍛錬ばかりで子供のように遊んだりしていないので少し不安だったのです」


「それは、心配かけたみたいでごめんね」


 確かに俺は、日に日に上達する刀や霊術が楽しいというのもあったけど、それ以上にここがゲームの世界と似ていて強い妖がいるというのがわかってから自分や家族を守るためにも少し無理をしていたかもしれない。


「これからはもっと美雪や母さんに甘えることにするよ。だから、これからもよろしくね」


「はい、どんどん甘えてください」


「それじゃあ早速もっと抱きしめてもらおうかな」


「いいですよ。はい、ぎゅー」


 美雪に抱きしめられながら俺は改めて強くなろうと思った。大切なものを失わないためにも強くなって妖を倒すのだ。まあ、牛鬼との戦闘で強い奴との戦いがどれだけ楽しいのかを知ってしまったからというのもあるけどね。


「あ、そう言えば若様。初陣を終えられたので近いうちに神仏より加護をいただく儀式があると思いますよ」


「え!何それ聞いてない!霊術とかと違うの?」


「はい、本当の神仏からの加護です。子供がある程度の歳になると儀式をして神仏から加護をもらうのです。かく言う私も木花咲耶姫このはなさくやびめの加護をもらっています。そのおかげで雪女であるにも関わらず火の霊術をある程度使えるのです。細かいことは近いうちに当主様がご説明なさるかと」


 え!なになに神仏の加護!?霊術で使った『風神之加護』とかじゃなくて正真正銘本物からの加護のこと?そんなの聞いてないよ!


 これは、不安で夜しか眠れないな。


 ていうか美雪って木花咲耶姫の加護持ってるんだ、だからこんなに甘えると安心するのかな?



 俺はそう思って美雪の胸に抱かれながら眠りに落ちた。









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 木花咲耶姫って全名だと木花之佐久夜毘売らしいですね。この作品では全名ではなく他の作家さんも使ってる有名な名前を使う予定なので他の神仏、例えば建速須佐之男命だとシンプルに素戔嗚尊って書いたりする予定です。



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