第19話



「ぐでー」


 今俺は自分の部屋でのんびりしている。


 昨日は牛鬼の異常個体を倒した後も家に帰ってから心配した母さんにひたすら大丈夫なのかと聞かれた。愛されていると実感できたが疲れていたのにすぐに眠れなくて美雪が助けてくれなかったら倒れていたかもしれない。やっぱり早く体が大きくなってほしいな、昨日の戦いだって大人の体だったらもっと早く終わっていた。


 それはそうと、今日は紗枝と色々離したり遊んだりする予定だし美雪も今日は甘やかすって昨日戦いの後言ってたからな。いつまでものんびりしてないで軽く部屋を片付けるとしよう。




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 とはいえ


「もともと自分で掃除したり召使いの人たちが掃除してくれたおかげでそんなに散らかってないんだよね」


 本を棚に戻したり襖を開けて換気するぐらいで、掃除といってもすぐに終わった。


「紗枝もそろそろ来るかな?」


 そんなことを考えていると。


 ガチャ


「にいさまー!」


 扉が開き、紗枝が部屋の中へ飛び込んできた。


「紗枝走ったら危ないだろう?」


「はやくにいさまにあいたかったからしかたないです。それにみゆきおねえちゃんもきてるからいいのです」


「美雪が?」


 どうやら紗枝だけでなく美雪も来ているようだ。


「まだ来ていないみたいだけど?」


「おねえちゃんあるいてたからさえのほうがはやいの」


 紗枝は美雪を置いてきたらしい。


「紗枝様、走らないでください。転んだりしたら危ないでしょう」


 そんなことを話していたら美雪も部屋に入ってきた。


「さえはころんだりしないもん」


「それでも誰かにぶつかったりすることをあります」


 おっと、このままだとせっかく遊ぼうと思っていたのに説教になってしまう。


「まあまあ美雪、今日のこと紗枝は楽しみにしていたんだから多めに見てあげて。紗枝も実際走ると誰かにぶつかったり転んだらして危ないからダメだよ」


「若様がそういうのでしたら今日のところは何も言いません」


「うーわかりましたにいさま」


 俺がそういうと2人はとりあえず納得してくれた。


「それじゃあ紗枝?今日はどうする?」


「きょうはにいさまにれいじゅつをみてもらうんです!」


「わかったよ、まずは霊術で遊ぼうか。美雪念の為よろしくね」


「わかりました若様」


 というわけで今日は霊術で遊ぶことになった。


「じゃあ紗枝、どんな霊術で遊ぶ?」


「さえがひのたまをだすからにいさまはみていてください!」


「わかったよ、でも部屋の中で火は危ないから出すのは水の玉にしようか」


「わかりました!」


『みずよ、わがいにしたがいきゅうたいとなれ。すいきゅう』


 紗枝はそういうと霊術を使って自分の前に水の玉を作り出した。


「どうですか!にいさま!」


「うん、とってもいい出来だよ。もう霊術が使えるなんてすごいな紗枝は」


「えへへ」


 俺が褒めるとさえは可愛く笑った。


「さえはちゃんとできました。にいさまもみせてください」


「うーん、それじゃあちゃんと霊術を使えたご褒美に見せてあげよう」


 俺はそういうと庭側の縁側に出て庭の方を向き霊力を練った。


『水よ、我が霊力をもって龍となり空を飛べ。水龍』


 練った霊力を使い術を行使すると地面から3メートル程の高さに全長10メートル程の体が水でできた龍が現れた。


「どうかな?」


 俺が紗枝と美雪に聞くと。


「わああ!にいさますごいです!りゅうですみずでできたりゅうがでてきました!!」

 

「はい、素晴らしいです。数日前より更に霊術の腕前が上がっています」


 2人ともすごいと褒めてくれた。


 恥ずかしいけど普通に嬉しいな。


「にいさま!わたしもにいさまみたいにじゅつがつかえるようになりたいです!」


「それじゃあこの後は、紗枝に霊術を教えてあげよう」


「ほんとうですか!?やったー!」


 霊術を教えてあげると紗枝に言うと、飛び跳ねて喜んでくれた。

 俺は部屋の中に戻り。


「紗枝、こっちにおいで霊術の練習をするんだろう?」


「はい!」


 そうして、紗枝との遊ぶ予定は霊術の練習に変わった。




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 あれから数時間。


「すーすー」


「ずっと練習して霊力もたくさん消耗したから疲れたのかな?」


「でしょうね。体質上、紗枝様は霊力は多いですがあれからずっと霊力の操作や霊術などを練習していましたから」


 紗枝は頑張って練習していたが疲れて眠ってしまった。そんな紗枝を布団に寝かし、残った俺と美雪は、お茶を飲みながらゆっくりしていた。


「紗枝は寝ちゃったけどこの後どうする?」


 俺がそう美雪に聞けば。


「どうするも何も昨日、戦いの後に当主様が来るまでの間に約束したじゃありませんか。若様には存分に私に甘えてもらいますからね」


「そう言えばそうだったね」


 昨日の夜に、今日は美雪に甘えると約束していたのを思い出した。紗枝と霊術の練習をしていてすっかり忘れていた。


「忘れてましたね?」


「ごめんってば」


 美雪にジトーと睨まれ慌てて謝る。


「でも、甘えるって言ったってどうすればいいの?」


「簡単です。若様は私に無抵抗に抱きしめられたり撫でられたりしていればいいんです」


「それはちょっと恥ずかしいんだけどな」


「誰も見ていないので問題ありません。紗枝様だって寝ていますし、それとも約束を破るのですか?」


 美雪にそう言われた俺は。


「確かに恥ずかしいけど嫌だなんで言わないよ、約束だしね。でも抱きしめたり撫でたりするだけなのが楽しいの?」


「はい、とても楽しいですよ?昨日の夜だって膝の上に乗せて頭を撫でたりしてとても楽しかったですから」


「ええー」


 俺に逃げ道はないようだ。ていうか、母さんと言い美雪と言い俺の逃げ道を当たり前のように潰す人が身近に多いのはどうなんだろう?

 もしかして、紗枝も大きくなったら母さんや美雪みたいに逃げ道を潰してくるようになるのかな?


 そんなことを考えた俺は、美雪に抱きしめられながら布団で眠っている紗枝を見た。






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