第14話
初めて妖を退治してからはや数時間。森に入った時にはまだ明るかった周りもすっかり暗くなり空には綺麗な満月と煌めく星々が絶景を生み出している。
「美雪、もうだいぶ時間も経ったしそろそろ帰らない?」
俺は、今日数十匹目となる餓鬼を斬り捨てながら美雪に聞いた。
「そうですね、もう十分でしょう。と言うより、若様が思いの外妖を倒すのに抵抗が無くてこんな時間まで続けてしまいました」
少しバツの悪そうな顔をしながら美雪は言った。
「それじゃあ、森を出よう。俺たちが無事なのは父さんたちも護符を通して知っているだろうけど心配させたくないからね」
「はい、そうしましょう。念の為、探知の霊術を使いながら帰りましょう」
美雪はそう提案してきた。
探知の霊術とは、簡単に言えば術にもよるが霊力を使ったソナーやサーマルスコープなどの相手の隠密を見破ったり、自分とどの程度離れた距離に相手がいるのかがわかる術だ。使い方によっては、相手の強さがわかったり罠を察知したり他の霊術と混ぜて追尾や自動迎撃などもできるようになる。(なお、ここまで出来るのは上位の家の当主クラスが最低ラインである。主人公の父親は得意ではないが可能)
「わかった、探知の術は俺が使うよ。美雪は装備の確認をして準備して」
「はい」
俺は、そう言うと探知の霊術を発動させた。
発動させると頭の中に周囲の地形を模した図形のようなものが現れ、俺自身や美雪を含めた周囲の生物や妖の反応が示された。
すると、急にとても大きな反応が3つ現れ俺たちの方に向かってかなり速い速度で向かってきた。
「美雪!周囲を警戒しろ!強い反応を持った妖が3体、こっちにかなり速い速度で向かってきている。多分、最低でも中の上はある妖だ」
俺は、慌てて美雪に妖が向かってきていることを言い備えるように言った。俺自身も蒼月を抜いて相手に備えた。
「若様、逃げられそうですか?」
美雪が聞いてきた。
「いや多分難しい、それに逃げれたとしても中の上以上の妖3体を放置はまずい」
俺はそう返した。
実際、中の上以上3体確実に1体は上の下以上の妖だ、そんな化け物を放置出来ないし、分家の者では討伐は不可能だろう。
「美雪、父さんに緊急信号を送る術符は持っているか?」
「はい、念の為と渡された物を持っています。使いますか?」
よし!これなら父さんを呼べる。おそらく、今家には父さんと母さんの2人がいるし来れなくても屋敷の護衛に当たっている者の中でも強い人を1人でもよこしてくれればなんとかなるだろう。
「ああ、その術符を使って父さんに強い妖が出たと伝えろ。また、妖がここに来るまで少し猶予がある。俺はその間に自分と美雪に可能な限り術を付与して備える」
「わかりました」
美雪が返事をして術符を使い父さんに連絡を入れているのを確認した俺は術を行使した。相手は強敵、使える霊術は全部使う。仏などの真言も一緒に使えれば良かったんだが、霊術ばかり練習していて実践で使えるレベルではない。
まずは、肉体強化。
『霊力よ、我が身を巡り、肉体を強化せよ。肉体強化』
詠唱をして尚且つ印を結んだ効果を上げたモノを俺と美雪に発動する。
次は、武器の強化。霊力を流すだけでも強化出来るが、それ用の術があるのだから使うのに越したことはない。霊力はまだまだある。
『霊力よ、我が武器に宿りて強化せよ。武器強化』
これも印を結んで効果を上げて俺と美雪の武器に使う。
次は結界。
『霊力よ、我が身を包みて、敵の攻撃を防ぐ鎧となれ。
この術は、体に沿って発動され対象の動きに合わせて動く結界だ。こう言った結界は強度不足になったりすることがあるが、そこは改良した術式の効率と俺の膨大な霊力であれば問題はない。当然、印を組んだ効果を上げている。
ひとまず、俺と美雪の強化は完了。父さんへの連絡の方は...
「若様、強化ありがとうございます」
「それより、父さんへの連絡はどうなった?」
「はい、問題なく繋がりました。こちらに向かうと言っていました。また、無理はするなと。けれど倒せるなら倒してしまっていいとも言っていました」
どうやら父さんはちゃんと来れるらしい。それにしても、倒してしまってもいいって出来るならやるが期待が重いなぁ...
「父さんらしいな。ところで、もうそろそろ来るが準備はいいか?美雪」
俺がそう聞けば。
「はい、準備万端いつでも大丈夫です」
そう答えた。
「それは何より、それじゃあ俺はもう一つとっておきの術を使おう」
「とっておきの術ですか?」
「ああ」
そう、俺にはとっておきの術がある。とは言え、この術はまだ未完成。そもそも前世でアニメなんかを見て複数の属性を同時に扱う魔法使いが格好良いとか思ったのが始まりだ。効果は、各種属性の剣を作り出しそれを操ると言う物。今の俺は火剣と氷剣を同時に作り出せるだけだからまだまだだ、だけどその分作り出す剣の数を増やし、威力を補うという感じだ。
『炎よ、氷よ、異なる二種の力を持って、我が敵を滅する剣陣を生み出さん。
俺が術を行使すると、目の前に氷剣と炎剣がそれぞれ5本ずつ、計10本生み出された。
これらの剣は、俺の思うがままに操れる。
まあ、マニュアルは大変だから俺や父さん他にも刀だけじゃなく剣使いの動きを記憶して、それを元に敵を指定してオートで攻撃をさせることも可能だ、将来的には全部1人で制御したいけど今はまだキツイからね。
「若様、いつの間にそんな術を身につけられたのですか?」
美雪が驚きながら聞いてくる。
驚いてもらえるのは嬉しいけど、俺がやったのって客観的に見ると、元々あった術を属性を変えて使ったり、数を増やしたりしてるだけなんだよね。
「まあ、大変だったけど元々あった術を元に作ったから楽な方だと思うよ」
俺はそう言った後。
「無駄話はこのぐらいにしておいてそろそろ敵も来る頃だからしっかり相手をしないとね」
「はい!」
俺と美雪はそれぞれ刀と槍を構えて敵が見えてくるのを待った。
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今更ですけど更新頻度は不定期なのでお願いします。当分は毎日やってくつもりですねぇ。
あと、この世界は退魔師以外は基本現代日本と変わりません。ただ、妖のせいで都会以外は基本的に田舎だったり自然そのものだったりします。
こんな感じでちょくちょく設定投げて行くんでお願いします。
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