第12話




 あれから俺と美雪は何時間も模擬戦をしていた。途中体力が底をつくこともあったが、それは治癒の霊術による回復と霊力を体に巡らせることで疲労を無くす方法で回復して続行した。(水分補給なんかも水の霊術でなんとかなった)


 今俺は、鍛錬場で美雪と向かい合う形で座っている。


「装備も体に馴染んだし、蒼月も問題なく扱えるな、美雪はどうだ?槍の鍛錬はしていたみたいだけどその装備を着て動くのは久しぶりじゃないのか?」


 俺は美雪にそう聞いた。


「はい、こちらにきてからは手入れをするだけで、装備してここまで動いたのは久しぶりです。てすが、特に問題はありませんね」


 美雪はそう答えた。


「それで、妖退治の日だけど3日後にしようと思う、理由としては簡単な霊術でいいからこの装備を使った模擬戦で使ってどんなものかを確認しておきたいんだ、それに美雪が実際に出来ることを見ておきたいしね」


「わかりました、後で当主様に報告しておきます。ところで若様、妖退治に関して緊張したりしていませんか?人によっては極度に緊張してしまう人もいると聞きます」


 美雪はそう聞いてきた。


「大丈夫だよ、妖を舐めているわけではないけど、攻撃、防御、支援、治癒、他にも何種類もの霊術を問題なく使えるようになったし、実際上位の霊術も簡単にとまではいかないけど十分扱えるからね」


 そう答えた。


 それに俺には前世の記憶や経験があるが、妖退治の経験はない。妖退治を学校のテストなどと同じに思っているわけでないが、かと言って緊張しすぎても本来の力が発揮できないのはどちらも同じだからな。


「それでは、私は先に失礼します」


 美雪はそう言って立ち上がった。


「ああ、わかった。それから召使いを呼んでくれるかな?一人だと着たり脱いだらがまだ大変でね。後、風呂も用意してくれる?汗を流したいんだ」


「わかりました、途中で若様のところに行くよう言っておきます。それからお風呂ですね、わかりました。それではもう少しここで休んでいてください」


 そう言って今度こそ鍛錬場から出ていった。


 美雪が出ていった後、俺は自分が今できる霊術の中でも得意なものをいくつか試してみることにした。


 まずは、肉体強化の霊術だコレは純粋に霊力を全身に巡らせるだけでも発動できるが術として発動させた方が、効果も効率も格段に上がる、分類としては支援系のものになる、俺は無詠唱もできるが確認も兼ねているのでしっかり詠唱して発動してみる。


『霊力よ、我が身を巡り、肉体を強化せよ。肉体強化』


 肉体強化の術を発動させた瞬間、体の奥底から力が漲るような感じがした。


 試しに軽く跳んでみると、3メートルほどの高さまで跳び上がることができた。また、蒼月を振ってみると技量に変化はないがより鋭くより早く振ることができたちなみに、肉体強化の霊術はそれぞれの属性を使って行使することも可能だ、ただしその場合相性の悪い属性の攻撃に弱くなったり、強化の比率が筋力や防御など、どれかに偏ることが多い。


 よし、次は攻撃の霊術を使ってみよう、前父さんに見せたのは火の霊術だったから今回は水の霊術にするとしよう。


『凍てつく氷よ、我が意のもと剣となりて敵を滅せよ。水淋氷剣すいりんひょうけん


 術を発動させると、俺の目の前に氷の剣が現れた。この術は俺が父さんに披露した『業炎火剣』の属性を水にした物で効果としては基本的に属性以外は同じ物だ。


「うん、上手くできたな次は結界をためそう、『氷剣』はこのまま維持してと...」


 俺は、満足げに頷くと術を維持したまま結界の霊術を行使する。


『霊力よ、我に害を成すモノを防ぎ拒め。守護結界《しゅごけっかい》』


 そう唱えると、俺を中心に半円状の霊力の壁が形成された。また、この結界の術は自分の体に合わせるように術を使うと鎧になるし一方だけに壁のように展開したり、防ぐ範囲が小さくなるが盾のようにすることもできる。そして、この術は肉体強化と同じように属性を使うこともできるがその時のデメリットも肉体強化と同じだったりする。


「この術もしっかり発動できてるな、防御力も試すとしようか」


 俺はそう言って、結界の外に浮かせてある『氷剣』を自分目掛けて放った。


 ガギィィィィン!


 結界と氷剣がぶつかり合いかなり大きな音が出た、どちらの術もあくまで確認のために使ったのであって全力では無かったが、結界は氷剣を防ぎ切り氷剣は結界にヒビを入れたので個人的には大満足である。


 それでは最後に治癒の霊術を試そう、本来は他に式神術などがあるが、今回は三日後の妖退治で使う術の確認が目的なので試さない。


 まず、治癒の霊術を試すために腕を軽く蒼月で切り(この使い方はなんか悪いことをしているような感じがする)、血が出てきたので術を使う。


『陽の力よ、我が意思を汲みこの傷を癒さん。治癒之光ちゆのひかり


 術が完成すると、傷口を光が包み収まると跡も残さず傷を癒した。


 前世の知識では、癒しの力は光と闇のうち光や、陰陽の陽だったりするがこちらの世界でもそれは変わらないようだ。ただ、例外的に炎や氷でも治癒の術を使えるらしい(実際に俺は使える)この方法だと属性付きの肉体強化などをしている際に効果を大幅に上げることができるようだ。


「どれも十分実戦で使えそうだな、後は強敵相手に使うような術がいくつかあるが、どれも今の術を発展させた物や単純に難易度が高く威力が大きい危険な物ばかりだからここでは使えないな」


 と、術の確認が一通り済んだところで鍛錬場の入り口から召使が一人入ってくるのが見えた。


 彼女は俺の近くまで来て。


「蒼夜様、お風呂の準備ができました、装備に関しては脱衣所で流させていただいた後、お部屋までお運びします」


 そう言った。


「ああ、ありがとう助かるよ。それじゃあ風呂場まで行こうか」


 俺はそう言って風呂場に向かった。





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 今日、すずめの戸締まり見てきましたが最高でしたね、和風な部分もあってとっても良かったです。






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