第10話




「若様、当主様がお呼びです」


 部屋の外から召使の声が聞こえた、おそらく妖退治の装備についてだろう。


「要件は分かるか?」


 念のため聞いておく。


「はい、妖退治の細かい説明と使う装備についてだそうです」


 やはりそうだった。


「わかった、今行く」


 そう言って俺は立ち上がり美雪にも声をかける。


「美雪行くよ、今回は美雪が俺の護衛を務めるからね、一緒に聞こう」


「わかりました、少しお待ちください」


 こうして俺と美雪は召使に案内されて父さんのいる場所まで行った。


 ゲームとかで出てくるネタ武器とかもあるのかな?


 そんなふざけたことを考えながら。


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「父さん来ましたよ」


 召使に案内されて父さんのいる場所まで来た俺はまず最初にそう言った。


「ああ、来たか美雪も一緒だな、ならまとめて話そう」


「それではお願いします」


 そうして父さんは妖退治について説明を始めた。


「まず、今回の相手は餓鬼をはじめとした最下級、下の下であっても一対一ではまず負けないような弱い妖が相手だ」


「とは言え、何事も例外はつきものだし相手が予想通りでも数が多かったりすることもあるからそれに備えて美雪には一緒に行ってもらう」


「次は装備についての説明だな、まずは美雪だが里から持ってきた装備は前に確認させてもらって一級品でしっかり整備もされていたのでそれを使ってくれ。また、怪我をした時のために通常の傷薬など以外にも霊薬も持たせるから必要があれば使ってくれ、いいか?」

 

 父さんに聞かれて美雪は。


「はい、若様をしっかりお守りします」


 と、返事をしていた。


「次に、蒼夜の装備だがここに用意したから試着してもらう」


 そう言って父さんが持ち出したのは、俺のサイズに合わせた羽織袴それも家紋入りである。


「父さん、それ動きやすさとかは大丈夫なの?あと家紋まで入っているけど...」


 俺がそう聞くと。


「何も問題ない、術を掛けてあるから動きやすさはもちろん防御面も優秀だ、家紋に関してはお前は天峰家の嫡男だからな、相手が雑魚とはいえ初陣だし問題はない、後で着て大きさが大丈夫か念のため確かめておきなさい」


 そう言われたら仕方がない。


「それじゃあ武器は?」


 実戦で使う真剣について聞くと。


「うむ、ここにある」


 と言って、長さが1メートル以上ある長方形の大きな箱を出してきた。


「この箱の中に刀が何振か入っている、その中から自分に合うと思うものを選んで使ってもらう」


 そう言って箱の蓋を開けて中身を見せてきた。

 中を覗いてみると五振の刀があり、どれも霊力などを宿していて普通の刀ではないことがわかった。


「本当にこの中から選んでいいの?随分すごそうな感じだけど」


 俺が不安になって聞くと。


「問題は無いから中から一振り選びなさい、刀の銘は選んでから教える、直感を信じて選びなさい」


 父さんにそう言われたので、箱の中の刀を見て、惹かれるものを選んでみるとする。


 まず、一番上の刀、コレは普通の刀の外見で特に何も思わない。


 二つ目、上から二番目の刀、コレはとても禍々しい気配を漂わせていて、柄も鞘も赤黒く妖刀という言葉がぴったりな印象、ただ忌避感があると同時に少しだけ惹かれる感じもある。前世の村正とかもこんなかんじだったのか?


 三つ目、上から三番目の刀、コレは二番目の刀とは逆に、とても神聖な感じがあり忌避感は無い、柄も鞘も真っ白だ、ただコレも違うと感じた。


 四つ目、上から四番目の刀、コレは二番目と三番目みたいに特別な感じはしない、それでも凄い感じはするけどなんか違う、ただ柄も鞘もとても豪華に装飾されている。


 五番目、上から五番目の刀、コレは見た瞬間にこれ以上ないものだと思った、これこそ直感といった感じで俺の体が魂が反応した、柄は黒と銀の柄糸を交互に組み合わせたもの鞘は漆黒に深くそれでいて鮮やかな蒼で水のような雲のような紋様が描かれていた。


「これです!この刀にします!」


 気がつけば大きな声で五番目の刀を指差しながら叫んでいた。

 我ながら取り乱して恥ずかしい限りだと思ったが何故だか止めることができなかった。


「その刀でいいのだな?」


 と、父さんに聞かれたので...


「はい、この刀がいいです。この刀以外あり得ません」


 と、強い口調で返した。


「なるほど、お前はコレを選ぶか」


 父さんはそういって、箱の中から刀を取り出した。


「お前に渡す前にこの刀の説明をしておこう、この刀は蒼月という銘でな、製作者はわかっておらん、前にもこの刀を使った者はいたがあくまで普通の霊刀であり特別な物では無いと言われてきた、他にも様々なことがわからないままでな、お前のように直感でこの刀だと言うのもがいなくてなずっと埃を被っていたものだったんだ」


 そう言われてなんとなく理解した、確かに俺は直感でコレだ!と思ったが同時にそうで無いものからしたら普通の刀と言われても仕方ないと、何故か思っていたからだ。


「問題ありません、この刀を、蒼月を使います」


 父さんにそういった。


「わかった、今日からこの刀はお前のものだ」


 そう言いながら俺に刀を渡してきた。


「はい」


 そういって受け取り、これからよろしくと思った次の瞬間、蒼月が光を放ち小さくなり五歳の俺が使うのにちょうどいい大きさになっていた。


「ハハハ!面白いなその刀は!蒼夜、また何かその刀についてわかったことがあったら教えてくれないか?」


 父さんにそう聞かれたので。


「わかりました」


 そう答えた。


 さて、次は消耗品をもらうのといつ妖退治をしに行くのかを聞かないとな。






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 直感で選んでいるので刀に直接触りませんし、刀身を見たりもしません、そう言う選び方なのです。




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