第32話 七瀬の弁当と女心
俺はあのイジメの件からクラスメイト達に同情の目で見られる様になったが、見られただけで誰も近寄っては来なかった。
きっと隠しカメラでもセットしてるんじゃないかと思っているのだろう。
俺の方としても、誰も寄って来ない方が助かる。
…あぁ、そういえば心優しい女の子が1人だけ近寄って来た。
澪が俺に、
「気付いてあげられなくて、ごめんなさい…。」
と謝って来た。
「心配を掛けたくなかったから言わなかっただけで、全く問題は無い。
本当は黙ってDVDを先生に提出して秘密裏にイジメを終わらせる積もりが、小野田がクラスメイト全員の前で俺に冤罪をふっかけて来たから仕方無く公開処刑してやったまでだ。
先生達には言ってないが、本当は俺の上履きが捨てられていた時、アイツ等の上履きも俺が捨ててやったんだ。」
と
「貴方らしいわね。」
と笑っていた。
6月になり衣替えがあって女子の制服が薄くなり、もっと暑い時期が来れば更に目のやり場に困ることだろう。
いつものメンバーで昼休みにベンチで集まり、七瀬の作った弁当を食べた。
ベンチに座る位置はいつも俺が真ん中、左隣が澪で右隣が七瀬だ。
「凪きゅん、どうかな?美味しい?」
「…うん、これはこれで素材の味がして…うん…。」
「不味いなら不味いって言ってあげなさいよ、七瀬さんのためにならないから。」
「…素材本来の味が際立っている。」
「…つまり、塩味とかが足りないという事かしら?」
「うん…まぁそういう言い方も出来るな…。」
「そっかぁ、薄過ぎたか。
ごめんね、次も頑張るね。」
「期待している。」
「しかし暑くなってきたねぇ、木のおかげで日陰にはなっているけど、そろそろ教室で食べる?」
七瀬がブラウスの胸元部分を開けてパタパタと手で扇ぐ。
俺は一瞬目が行くが、バレたら困るので目線を逸らした。
「ほら、凪君が困ってるから止めなさい。」
…一瞬でもバレる様だ、良く見ていらっしゃる。
「え〜っ、凪きゅん、見たい?」
七瀬がニヤニヤしながら、わざとボタンを1つ外した。
「ちょ、ちょっと何してるのよ、凪君をからかうのは止めなさい!」
澪が左側から俺に覆い被さる様にしながら右側に居る七瀬の胸元に手をかざして俺から見えない様にする。
ちょっと澪、色々と当たってるし2人共顔が近い…
これを口に出せば俺が意識してるのがバレバレなので黙っていよう…。
「あ〜っ、凪きゅん顔が赤くなってる、可愛い〜っ!」
てか、顔が赤いって言われてるからバレてる〜っ!
チクショウ、俺だって男だぞ!
「七瀬、いくら友達とはいえ俺だって男なんだから、見ていいと言われたら見てしまうぞ、からかわないでくれ。
それから澪、その…当たってるから気を付けてくれ、色々と勘違いしてしまうから。」
胸が当たっていた澪は急に俺から離れ、七瀬は俯き、2人共顔を赤くして照れ始めた。
「なっ…凪きゅんも見たいんだ…男の子なんだね、からかってゴメンね。」
「私ったら、はしたない…
以後気を付けるわ。
……してくれてもいいのに…。」
「何か言ったか?」
「いいえ、何でも無いわ。」
澪が俺の脇腹をつねって来た。
「イテッ…。
澪、俺は何か悪い事をしたか?」
「いいえ、何もしてないわ。
何もね…。」
俺は澪がつねった理由が解らなかった。
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