第31話 結末

「伊東先生、この際だから全てお話しします。

 俺は小野田達にイジメを受けていました。

 隠しカメラで証拠も撮っています。

 これを見てもらえますか?」


 俺は昨日チカラで作成したばかりのDVDをクラスのテレビで再生した。

 その内容は、俺の上履きをゴミ箱に捨てて喜んでいる小野田とその取り巻き、その次に俺の机に死ねと彫刻刀で彫っている小野田とその取り巻き、そして最後は俺のロッカーを蹴ってボコボコにしている小野田が映っていた。


「このイジメのDVDの他に、今回の俺に対する窃盗と暴行の動画も今スマホで撮影しました。

 俺は小野田達の事が許せませんので、学校と警察に訴えたいと思います。」


 それを聞いた伊東先生は大きくため息をつく。


「佐竹、今まで気付いてやれずに済まなかった。

 今から授業は自習とする。

 それから今DVDに映っていた者は一緒に職員室に来い。」


 それを聞いてガックリとうなだれる取り巻き達。

 それから、クラスメイト達からこんな声が聞こえた。


「私、さっき佐竹君のリュックを触ってた小野田君を見たの。

 まさか泥棒をしてたなんてね…。」


「あんなイジメをしてたんだね…

 佐竹君に関する黒い噂は小野田君が言いふらしてたんでしょう?

 やっぱりあの内容はウソなんじゃないの?」


「そうよね、悪い噂を流された鳴沢さんと、悪い噂を流した佐竹君がいつも一緒に居るハズが無いもの。

 きっと佐竹君への嫉妬から、小野田君が嘘をついたのよ。」


「凪君、あれからイジメられていたなんて…

 気付かないなんて、友達失格だわ…

 本当にごめんなさい…。」 

 

 えっ…?最後の…ちょっ、えっ…?

 まぁいい、彼女には後できちんと話そう。


 まだ続くヒソヒソ話を後に、俺は床に転がっていた小野田の首根っこを掴んで引き摺り、教室の扉の方に歩き出す。


「おいおい、佐竹。

 いくら何でもそれは無いんじゃないか?」


「じゃあコイツはどうするんです?

 主犯をここに放置するんですか?」


「起こせばいいじゃないか、起こせば。」


「起こしたら又暴れるんじゃないですか?」


「あぁ…確かに。

 じゃ、お前達、小野田を運んでくれるか?」


 先生が小野田の取り巻き達に小野田を運ぶ様に頼むと、取り巻き達は渋々それに従って小野田をおんぶし、職員室まで運んで行った。


 俺は廊下に出たのと同時に、俺と小野田のロッカーのフタをチカラで大至急元通りに交換した。

 俺のロッカーがベコベコに凹まされた証拠のDVDが存在するのに、俺のロッカーが全く無傷だったら動画を捏造したんじゃないかと疑われるしな。



 俺達が伊東先生を筆頭に全員で職員室に入ると、何事かと集まって来た先生方が伊東先生に今回の事件の説明を受けていた。

 そして俺達生徒は個別に分けられ、先生方に事情聴取をされた。

 その際、俺は学校側に今日持って来たDVDを提出し、明日スマホの動画もDVDにして渡す事となった。


 それから更に事情聴取が進んだ結果、取り巻き達の口から俺と小野田達の体育館裏でのケンカも学校側にバレたが、小野田達が俺を裸にひん剥いて動画を撮ろうとしたのを避けるための正当防衛として、俺の暴行はお咎め無しとなった。


 それにより、そのケンカの原因となった澪と七瀬も先生に呼び出された。

 俺に弱みを握られて一緒に居させられているのではないかと質問されたそうだが、一笑に付したそうだ。


 他に俺が隠しカメラを学校内に持ち込んだという件に関しても学校側から注意されたが、イジメの証拠を撮影するのに仕方なくという理由であったので不問とされた。

 そもそも隠しカメラなんて存在しないから、全てのデータを持って来いとか言われても困るんだが、そこまでは言われなかった。



 その後、小野田とその取り巻き達は謹慎になり、正式な処分待ちとなった。

 俺は学校側から警察沙汰だけは勘弁してくれないかと頼まれたためそれを承諾し、更に小野田を退学では無く停学とし、俺のクラスから追放するだけで済ますという軽減処分を学校側に申し入れた。


 表向きは本人に更生して欲しいから、というもっともな理由を学校側に伝えたが、本当の理由は、小野田が俺の財布を盗んだとされる件が実のところは俺のチカラによる捏造だからだ。

 それに上履きとロッカーの件は本人達に仕返ししてるしな。


 しかしこれで本人達に反省の色が無く再度何か仕掛けて来る様な事があれば、俺はアイツ等の脳内をイジくることに決めている。


 こうして、今回の騒動に関しては全て無事に終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る