第27話 居眠り

 ケンカがあっても勉強会はするという事で、今日も俺の家に澪と七瀬と3人で向かっている。


 いつもは俺に引っ付いている七瀬も今は俺から少し離れた所で澪と2人、話をしていた。

 難しそうな顔をしていたので聞かない方がいいと思い離れていたから内容は知らないが、時々


「澪っちズルいよ、そんな大事な事を何で今まで教えてくれなかったのさ!」


とか、


「後で動画をもう1度確認するよ。」


とか、


「もう他に隠し事は無いかい?

 何ぃ〜っ、料理作ってるぅ〜!?

 これからは正々堂々と勝負だからねっ!」


とか聞こえて来たが、何の話か俺には解らなかった。



 家に着くと、ネッコがまた玄関で俺達を出迎えていた。

 ネッコもご機嫌伺いに毎回ご足労な事だ。

 きっと2人に貰えるオヤツが目当てなのだろう、今日も2人にすり寄っていた。


『アニチ、このちゅるちゅるというオヤツは本当にウミャイんだニャ〜、また買って来て欲しいニャ。』


『解った解った、今日も静かに頼むぞ。』

 

『了解ニャー!

 貰うもの貰ったらゴロゴロしてるニャ。』


 オヤツを食べ終わって満足そうなネッコは自分の口の周りをペロペロと舐めながらゆっくりと立ち去っていった。

 

 俺達は昨日と同じでダイニングテーブルを使い勉強をしていたが、七瀬が時々勉強とは関係の無い質問をして来た。


「凪きゅんは何であんなにケンカが強いのかな、何か格闘技でもやってたの?」


「イヤ、何も習った事は無いな。」


「で、堀さん達をどうやってやっつけたのさ?」


「…記憶にございません。」


「そんな政治家みたいな返答しないでよw」


「お前達本当にしつこいぞ、俺は何も知らないと言っているのに。」


 2人はそれを聞いて、ヤレヤレという感じで苦笑をしていた。

 そこで例の眠気が一気に襲って来る。


「…済まないが急に眠くなった、ソファーで寝てるから帰る時間になったらそのまま引き上げてくれ。」


 俺は2人にそう告げるとフラつきながらもソファーで横になり意識を手放した。



 うーん…何かいい匂いがする…。

 それに…温かいし柔らかい…?

 頭の位置も高い…ソファーにクッションは無かったハズ…

 何だか頭も撫でられている様な…

 ゆっくり目を開けるとそこには俺に膝枕をしている澪が俺の頭を撫でながら微笑んでいた。


「…今何時だ…?」


 俺はそう言いながらポーカーフェイスを決め込んでいたが、実際はドキドキしていた。

 七瀬といい澪といい、今どきの高校生ってこんなにスキンシップが激しいのだろうか…俺はぼっちだからよく解らんが。


「今は夜の8時くらいね。」


「どうしたんだ、膝枕なんて…

 重かっただろ、脚は痺れて無いか?」


 俺は起き上がろうとしたが澪に押さえつけられた。


「大丈夫よ、貴方今日は疲れたのね…

 いつも不幸体質で大変なのに、今日はケンカまで売られてしまって。

 何だかうなされていたから心配だったの…

 全然起きないしね。」


「そうか、心配を掛けたな。

 俺は時々こうして突然眠くなる時があるんだ。

 今後迷惑を掛けるかもしれないから先に言っておくよ。」


「それも不幸体質と何か関係があるのかしらね。」


「…何とも言えないな…。

 そういえば七瀬はもう帰ったのか?」


「そうね、彼女は電車通学だから家まで帰るのに時間が掛かるし。

 …それにしても、貴方の髪はサラサラね…

 ずっと触っていたいくらい。」


「あぁ…触りたければ別に何時でも構わないが…。

 目が隠れる様に、前髪を常に垂らしてなければいけないからな。

 ゴワゴワの癖っ毛では無理だ。」


 澪が俺の頭を撫でた拍子に俺の前髪をめくり、澪の目と俺の目が合った。

 澪の顔はポッと赤くなると同時に俺から目を逸らす。


「さっ、私もそろそろ帰らないと。」


 澪は俺を抱え起こすと帰る準備をし始めたので、俺は


「もう遅いから送って行こう。」


と澪に伝えると、澪は


「ありがとう、お願いするわ。

 貴方って、ずっとぼっちだった割には良く気が回るのよね…人たらしなのかしら。」


と笑った。


「せめて思い遣りがある人と言ってくれ。」


と俺は肩を竦ませた。

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