第26話 3人だけの秘密
体育館裏から校舎へと繋がる通路の死角から
「その必要は無いかな。」
と、七瀬と澪が現れ、俺の側に寄って来た。
俺はチカラで最初から彼女達が潜んで居た事に気付いていた。
「…いつから居たんだ?」
「よう、陰キャ野郎。からよ。」
「最初からだな。
俺をつけて来たのか…。」
「ごめんなさい、でも貴方が職員室に行かずに体育館裏に行ったから、もしかして何かあったのかと思って…。」
「そうか、心配を掛けたな。
でもご覧の通りだ、俺は自分の身は自分で守れる陰キャ野郎だから、今度から何も心配しなくていい。」
「…これで私の中で全てが繋がった気がするわ…
堀さんとの件も、きっと貴方がこうやって解決してくれたのね…。」
「…だから俺は何もしていないと言っているのに。」
「貴方は何故隠すのかしら…
やっぱり暴力で解決したから内緒にしないと不味いの?」
「……。」
「ねぇ澪っち、何の話をしてるの?」
「……。」
「ちょっと、何で澪っちまで黙るのさ、ボクにだけ隠し事!?」
俺達が訳の解らない話を始めたので、回復したらしい小野田が会話に割って入って来る。
「何か違う話で盛り上がってるところ悪いが、平川さんと鳴沢さんは本当にこの陰キャ野郎に無理矢理一緒に居させられている訳では無いのかい?」
「貴方、さっきからその呼び方、凪…佐竹君に失礼よ。
佐竹君とはたまたま学校の外で知り合って友達になったのよ。
平川さんは元々私の友達だから、私が佐竹君に引き合わせたの。
そうしたら腕を組む程仲良くなってしまったのよ。
貴方達は私に関しての変な噂のせいで私を腫れ物扱いするけれど、彼は最初から私と普通に接してくれたし、私を助けてくれた。
そんな彼が、何か私達の弱みを握ったり脅したりする訳無いじゃないの。
これで誤解が解けたのなら、今回の件は水に流しなさい。
双方共暴力を振るっているのだから、訴えても喧嘩両成敗で全員処分されるわよ。」
「…参ったな…鳴沢さんは普段こんなに喋れるんだな。
やっぱりヤクザの娘っていうのは嘘なのかい?」
「私の両親は会社役員だけど、そんな反社会的勢力に入っているなんて聞いた覚えは無いわね。」
「そうか、じゃあ鳴沢さんは誰かにワザと噂を流されて孤立させられていたのか…。
なぁ…噂を流したのはお前じゃないのか?陰キャ野郎。
その悪い噂に乗じて孤立した鳴沢さんに声を掛け、仲良くなるシナリオだったんだろ!」
「なっ…いい加減にしなさい!
私の噂をわざと流したのは堀さんで、佐竹君はそれを助けてくれたのよ!それを…!」
「もういい鳴沢。
小野田、俺はお前とどんなに語り尽くしても解り合えない奴だって事が良く解ったよ。」
「奇遇だな、俺も激しく同意するよ。」
「俺はお前のくだらない推理を聞いているヒマは無い、もう帰らせてもらうぞ。
それから最後に1つだけ言わせろ。
俺は降りかかった火の粉は必ず打ち払うからな。
よくよく考えてから行動しろよ…じゃあな。」
俺は最初に気絶した男の頭の中をX線透視して異常無い事を確かめた後、その場を立ち去った。
1度教室に帰り荷物を纏めて下校する。
すると校舎出入口で待ってくれていた澪と七瀬が合流した。
「済まない、アイツ等に呼び出された件を内緒にして…
2人を危ない目に巻き込みたく無かったんだ。
それから1つお願いがあるんだが…。」
「お願いってなあに?」
「俺の不幸体質の事は誰にも言わないで欲しいんだ。
誰かがそれを知れば面白がって寄って来るだろうし、俺は無駄に誰かを傷付けたく無いんだ。
澪も七瀬も見ただろう?俺に降りかかる事故を。
もしバレたら何の為に前髪を伸ばして陰キャぼっちを長年演じて来たんだか分からなくなる…。」
「…うん、解ったよ、ボクは絶対に言わないから安心して!
凪きゅんの前髪はボク達が守るんだから!
ねっ、澪っち。」
「えっ…?そっ、そうね!
そうだわ!私も絶対に言わないから。
私もそう思ったからさっき彼等に言わなかったのよ、七瀬さんが腕を組む理由を。
…絶対凪君に前髪は切らせないわ…。」
2人は何かを理解し合った様な感じで見つめ合い、頷き合っていた。
よく解らんが、多分大丈夫だろう…
そもそも友達が俺の周りに居る時点で既にイレギュラーなのだ。
万が一超能力や不幸体質が皆にバレたら最悪洗脳で何とかするしか無い。
例えこの素晴らしい、友達という存在が失くなってしまうとしても…。
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