第25話 負の感情
放課後、俺は体育館裏に呼び出されていた。
昼休みが終わった後、机の中に
『放課後、体育館裏に来い』
と書き置きがあったからだ。
俺は澪と七瀬に家のカギを渡し、先生に呼び出されたので先に俺の家に行っていてくれ、と伝えてある。
どうやら呼び出した者より俺の方が先に着いた様で、試験が近いせいか体育館を使う体育会系部員は全く居ないし、扉は閉まっていて静かだ。
俺が待っていると数分後に同じクラスの男子4名程が現れた。
この学校はトップクラスでは無いがそれなりの進学校で、堀といいコイツ等といい、そんなにガラの悪いヤツ等が集まる学校では無いハズだが、どんなに頭が良くても同じ人間である以上はこういった負の感情というものはあるだろうし、それにプラスして俺の不幸体質が影響しているのかもしれないと思った。
現れた4人の中で1人が前に出る。
確か、小野田とかいう名前だったな。
「よう、陰キャ野郎。
何で俺達がお前を呼び出したか解るか?」
「…さぁ、解らんな。」
「お前が平川さんを
色々と良く無い噂が絶えない鳴沢さんは別として、平川さんまでお前と一緒に居るなんて、どんな言葉で騙したんだ。
最近は平川さんに腕まで組ませているらしいが、お前はやり過ぎた。
俺達が平川さんを守ってやらないとな。」
「鳴沢を別にしてやるなよ、鳴沢に関しての噂は全てウソだ。
オマエ等が勝手に噂を信じているだけで、彼女は普通のお嬢さんだよ。」
「…それが本当なら鳴沢さんもお前の毒牙から救ってやらないとな。」
「彼女達は俺がぼっちだから手を差し伸べてくれただけだ、普通に友達だよ。
別に弱みを握ったり騙したりしている訳じゃ無い。
明日、本人達に直接聞いてみろ。」
「弱みを握られた人が、本当の事を俺達に話してくれる訳が無い。」
「…で?それで、お前達はどうしたいんだ?」
「お前の弱みを握って、彼女達を救うのさ。
これからお前を裸にひん剥いて動画を撮る。
その動画を晒されたく無かったら、今後彼女達に一切近付くな。」
「なるほど、確たる証拠も無いのに人を疑って、自分達はヒーロー気取りで犯罪行為も許されると思っている、と。
結局最後は暴力に行き着くのか…
俺も
いいだろう、やれるものならやってみろ。
…やれるものならな…。」
「お前の様な陰キャぼっちに何が出来る、強がりはよせ。
自分からその汚い裸を見せるなら暴力は振わないと約束してやる。」
「口だけのお坊っちゃん達は俺を取り敢えず囲んではみたが暴力も自らは振るえない、と。
やる積もりが無いのなら俺は帰るぞ。」
「何だと!お前等、やっちまえ!」
俺は最初に殴り掛かって来た男の握り拳をチカラを使って止め、人差し指で受け止めた様に見せる。
受け止められた男は顔を真っ赤にして更に踏ん張るが、俺の指の前にはビクともしない。
手で駄目なら、と今度は蹴りを繰り出して来たが、俺が殴って来ていた握り拳を手で掴んで引っ張りバランスを崩させ足払いを喰らわせてやると綺麗にすっ飛び、男は受け身も取れず頭を地面に強打し気絶した。
後で頭の中を見てやらないとな…。
小野田が残りの2人に指示を出す。
「左右から2人掛かりで掴みに行け!」
その指示通り左からは小太りの男、右からはかなり大きいガッチリした男が掴み掛かって来た。
2人が完全に俺を捕まえた後で
「じゃあいいか?動くぞ?」
と前置きをした後、先ず小太りの男をチカラを使って強引に引き剥がし力任せにぶん投げ、次に大きな男をチカラで軽々と頭上に持ち上げると柔道の肩車の様に放り投げた。
投げられた2人の男は上半身のみ起きあがるも、どうしたものかと考えている様で動かない。
「これでお終いか?
小野田、お前は命令するだけで何もしないのか?」
「フッ、俺は他の奴とは違って
空手有段者だぞ、直ぐにお前を地面に転がしてやるよ。」
「能書きはいいから早く来い。」
俺は人差し指をチョイチョイと手前に動かし、掛かって来いと挑発する。
小野田にだけは特別に3秒だけ先読みをする予知能力を使った。
怒り狂った小野田がスピード重視で真っ直ぐに俺の方に飛び出し鋭い正拳突きをかまして来たが、俺はそれに合わせてカウンターフックをピンポイントで小野田のアゴに浴びせ脳を揺らし、一撃で地面に沈めた。
俺は今回チカラを派手に使わない様にと最初から考えていた。
何故ならコイツ等とのケンカの記憶を消しても明日になって俺と腕を組む七瀬を見たら、また俺にケンカを売りに来るに決まっているからだ。
それにこんな事でいちいち人の記憶をイジったり洗脳するのは大変だからな。
だから今回は俺がケンカの強い男だと勘違いする様にチカラを使った。
それに、勘違いさせたい相手はこの男子4人組の他にも居た。
「これで俺に暴力が通用しない事が理解出来たか?
先ず俺の所に来るより、明日にでも平川と鳴沢に直接確認しに行けよ。」
そう地面に這いつくばっている4人組に声を掛けたところ、体育館裏から校舎へと繋がる通路の死角から
「その必要は無いかな。」
と、七瀬と澪が現れ、俺の側に寄って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます