第24話 中間テスト

 次の日の昼休み、澪が


「そろそろ中間考査があるけれど、2人共勉強は大丈夫なのかしら?」


と言い出した。


「うっ…イヤな事を思い出させないでよ…

 どうしよう…ボクちょっとヤバいかも…。」


「じゃあ頑張らないとな。

 俺は大丈夫だ、予習復習だけで何とかなる。」


「えーっ、随分と余裕なんだね。

 凪っちはいつも何位くらいなのさ?」


「俺か?俺はいつも20位あたりをウロウロしてるぞ。」


「どうかボクに勉強を教えてくださいっ!」


「あっ…あぁ、別に構わないが、俺は人に教えた事は無いから上手く教えられるかは分からないぞ。

 澪はどうなんだ?」


「私は1桁をウロウロしているわ。」


「そうだった、半年くらい会話して無かったから、澪っちが頭良いの忘れてた!

 それじゃ勉強会しようよ、2人でボクに勉強を教えて欲しい。

 よろしくお願いしますっ!」


「「いいぞ(わよ)。」」


 そして勉強会の場所は俺の家になった。



 2人は早速今日の放課後からウチに来る事になったのだが、七瀬は俺と行動を伴にする間は俺と腕を組む様になっていた。

 大変悪目立ちをしているのだが…

 特に同じ学校の生徒からの視線が刺さる。


「気にしない、気にしない。」


 何故か七瀬はまんざらでもなさそうだ。


「そ、そうか…七瀬がいいのならいいんだが…

 彼氏とかは居ないのか?」


「居たらこんなに男の子とくっついたりしないかな、絶賛大募集中だよ。

 …凪きゅん、立候補する?」


「…この不幸体質をどうにか出来ない俺には、まだ早いかな…。」


「…凪きゅんが、一緒に居たいと想う人がいればね。

 こうやって、くっついていればいいんだよ。

 そしたら、その子は幸せかな。」


 七瀬は更に俺の腕にギューッと抱き付いて来た。

 

「ちょ、ちょっと、くっつき過ぎよ!

 私が居るのだから、そもそもそんなにくっつかなくたって大丈夫なのに…

 人目があるから、離れなさいっ。」


 澪が七瀬を引っ張るも、七瀬は俺にガッチリしがみ付いて離れない。


「離れるのはイヤ、怖いもん。」


「貴女、本当に怖いと思ってるの?

 顔がニヤけてるわよ?」


 「そんなコト無いよ〜。」


 と言いながら、七瀬は澪にテヘペロ顔をして誤魔化した。


「もしかしたらトラウマになってしまったのかもな…。

 七瀬済まない、早く俺の家に行こう。」


 俺達は雑談をしながらも寄り道すること無く俺の家まで移動した。



 扉を開け玄関に入るとネッコが座って待っていた。


「キャー、可愛いネコちゃんだね!

 触ってもいいかな…?」


 七瀬はゆっくりと手をネッコの頭に近付けて撫でる。


『アニチとミオと知らない足音が聞こえたニャ。

 アニチの新しい女かニャ?』


『んなワキャー無い!

 どちらも友達だよ。

 それより今日は勉強会をするから静かにしていてくれ。』


『了解ニャ、オヤツよろしくニャ!』


『解った。』


 ネッコは澪にも1度擦り寄ると、そのまま部屋の奥へと歩き去っていった。


「ありゃ、ネコちゃん行っちゃった。

 名前は何ていうの?」


「ネッコだ。」


「…は?」


「ネッコだ。」


「…冗談じゃ無かったんだ、思わず聞き返しちゃった。

 ちょっとあの子がかわいそう…。」


「…じゃあ、どういう名前が良かったんだよ。」


「そうだねぇ、エローイとか…」


「それはもういい!」


「…急に怒ってどうしたの…?」


「…あぁ、取りみだして済まない。

 …こっちの話だ。」


「…貴女も同じテレビを見てたのね…。」


と澪が独り言を言っていた。



 俺達はダイニングテーブルの椅子にそれぞれ座り、七瀬の質問に俺と澪が答えるカタチで2時間程勉強を進めた。

 俺は途中、独りでスーパーに弁当や惣菜を買いに行った。

 今日からテスト期間が終わるまでは澪に負担が掛からない様、料理は辞退してあったからだ。


「2人共、今日はありがとう。

 明日からも勉強会をお願いしてもいいかな?」


「あぁ、いいぞ。」


「私も構わないわ。」


「じゃあボク、後は家でやるよ。

 家で解らない所はまた明日教えてね。」


「あぁ、じゃあ駅まで送って行こう。」


「じゃあ、私も帰るわ。」


「どうする?一緒に七瀬と駅まで行って、それから澪の自宅まで送ろうか?」


「じゃあ、それでお願いしようかしら。」


 そして澪と七瀬はネッコに別れを告げて、俺の家を出発した。



 先ずは3人で駅まで向かい、七瀬と別れてから澪を送り、もうすぐ鳴沢家に着くという所で澪がゆっくりと俺に近付き、腕を組んで来た。


「…どうしたんだ?急に…。」


「…私も彼氏は…やっぱり何でも無いわ。

 ……貴方は今、幸せ…?」


と澪は俺の顔を見つめて来た。


「……あぁ、澪と七瀬が居てくれて、俺は今とても幸せだ。」


 俺がそう答えると澪は俺の腕から手を離し、アッカンべーと俺に向かって舌を出した後、丁度到着した自宅の門の中に入って行ってしまった。 

 何か気に触る事を言ってしまったのだろうか…と思うと同時に、女の子のああいう仕草はとても可愛いな…とも思った。

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