第23話 共感…?
あの後七瀬を駅まで送ったが、俺からなかなか離れなかった。
よっぽど怖かったのだろう。
それから解散前に3人でトーキングアプリのグループトークを作った。
自宅まで帰ったところで澪が俺の家に上がり込み、ネッコを撫でくり回しながら
「ねぇ、ラーメン屋さんはいつ連れてってくれるのかしら?」
と拗ねた様子で聞いて来た。
「そうか悪かった、行きたい日にいつでも連れて行くよ。
只、夕方からしかやってないからそれを考慮してくれ。」
「じゃあ、今日でいいかしら。
ついでに近くのスーパーで朝食用の食材を買いましょう。
それから、今度から夕食も作りましょうか?
私は家政婦さんが用意してるから家で食べるけど。」
「イヤ、そこまでしてもらったら大変だろう、気にしないでくれ。」
「私ね、料理を作るのは好きなの。
それを貴方に美味しいって食べてもらえるのは嬉しいわ。
それに一緒に作れば作り方も覚えるだろうから、私に作らせたく無いのなら作り方を早く覚えればいいのよ。」
「別に作ってもらいたくない訳では無いんだ、ただ澪の負担になるのが心苦しいだけだ。
澪の料理は凄く美味いから本当に有り難いんだが、澪はそれで良いのか?
澪の両親も朝早くから夜まで俺の家に出入りして、快く思わないだろうし。」
「あぁ、両親の事なら気にしないで。
うちは共働きだし家に帰って来ない事も多いから殆ど顔も合わせないしね。
家政婦さんにも家庭の事情で料理が出来ない子の家に教えに行くと言えば嘘にはならないでしょう。
勿論男友達だとは言わないけれど。」
「…解った、ではよろしくお願いするよ。
ただ、澪が今後負担に感じる様であれば登下校と朝食も含めて直ぐに止めてくれ。
それでどうだろうか。」
「えぇ、解ったわ。
じゃ、今度から下校途中にスーパーに寄る事にしましょう。」
「でも、どうしてそこまでしてくれるんだ?
何のメリットも無いのに…。」
「…共感…なのかもしれないわね。
私の両親は殆ど家に居ないから、育ての親が家政婦さんと言っても可笑しくないくらい。
まぁ家政婦さんが居るだけ私の方が恵まれてるんでしょうけれど。
それに最近までイジメられて独りぼっちだったし。
貴方もその体質のせいで家族と離れて友達も作れずに独りぼっちで、随分と大変な思いをして来たんでしょう?
だったら、少しくらい良い思いをしてもバチは当たらないんじゃないかしら。
良い思いと言っても、友達と登下校するとかお昼を一緒に食べるとか、朝ご飯や夜ご飯を誰かに作ってもらったりとか、他の人と比べたら普通の事なんでしょうけれど。
だから凪君と
「澪…本当にありがとう…。」
俺が澪の手を両掌で握って感謝の気持ちを伝えると、澪はあたふたしながらも手を握り返して来た。
「凪君って、本当に同じ年齢とは思えないわね、随分と大人びた感じがするわ。」
「そうだな、俺はこんな境遇だからか他の人と比べて達観したところがあるのかもしれない。」
「………ところで、
「…あぁ、済まない。」
俺が手を離すと澪は顔を赤くさせていた。
俺達はラーメン屋が開く時間までネッコと遊びながら時間を潰し、ラーメンを食べに行ってからスーパーで買い物をした。
その後1度俺の自宅に帰り、食材を冷蔵庫に詰めてから澪を鳴沢家の前まで送り届ける。
「ラーメン美味しかったわ、特にチャーシューが。」
「そうだろう、ニンニクを入れると更に美味い。」
「明日臭わないか気になるわ…。」
「俺が一緒に居る時は、俺が臭った事にしたらいい。
というか、俺も臭ってるかもしれないけどな。」
「美味しかったから仕方無いわね。
それじゃ、ありがとう、また明日。」
「あぁ、また明日。」
俺は、『また明日』と言える相手がいるのは嬉しい事だと思った。
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