第15話 実験①
俺は渋々鳴沢の家まで彼女を送って行った。
やはり鳴沢といると何も起きない。
まぁ毎回外出する際に必ず何かが起きるワケでは無いし、建物内では外出時よりも不幸な事は起こりにくいので、俺も学校に何とか通えているのだが。
鳴沢の家は自分でお嬢様と言うだけあって、かなり大きな庭付き一戸建てだった。
「それじゃあ、私の家の方が学校から遠いから、明日から私が佐竹君の家に迎えに行くわ。
今日はありがとう。」
「なんだ、鳴沢家の場所を教えたのだから明日から迎えに来い、と言われるのかと思った。」
「だって迎えに来てって頼んでも貴方が本当に来てくれるか分からないし。
それにネッコちゃんと会える機会も増えるかもしれないじゃない。」
「ウチに来る前は、俺と一緒に居るところを見られたら噂されそうだからイヤだって言ってたじゃないか…
やっぱり止めないか?」
「よくよく考えたら、私の事を噂する友達すら私には居ないのよ。
だからその件に関しては、どうでもよくなったわ。
それにこの実験で新たな発見があれば、貴方もぼっちで居る必要は無くなるかもしれないじゃない。」
「ふむ…。」
「私、ふむ…とか言ってる人、初めて見たかもしれないわ…。」
「………帰る。」
「そう、送ってくれてありがとう。
じゃ、また明日。」
…また明日、か…
俺はチカラが使える様になってからずっと独りだったから、こんな実験などした事が無い。
この実験の結果、本当に鳴沢が俺の近くに居ても大丈夫な人であれば、それはそれで大発見ではある。
がしかし、それが判ったとしても鳴沢だけ特別な人間という事が判明するだけで、俺が今後ぼっちなのは変わり無いのではないか…?
まぁ、取り敢えず明日から鳴沢に害が及ばない様に気を付けないとな…。
そんな事を考えながら家に帰った。
翌日、鳴沢は本当に迎えに来てソファーに座りながらネッコを撫で回している。
「ちょっと、来るって言ってあるのだから準備くらいしておきなさいよ。」
「…こんなに早く来るなんて思ってないから。」
俺は寝間着代わりのジャージのまま朝食を摂っていた。
炊いた米と納豆、インスタント味噌汁だ。
ネッコには先に食べさせてある。
「ちゃんと料理してるのね、朝食は食べないとかコンビニ弁当とかかと思った。」
「米を炊いただけなのに、これを料理と呼べるのだろうか…
生きるために多少は作るが、自分で作った物が美味いと思った事は無い。
面倒くさい時は作らないから、コンビニ弁当はハズレでは無いな。
後は惣菜をスーパーで買うか外食か。」
「この辺に外食なんて出来るお店あったかしら?」
「あるだろ、蕎麦屋に町中華、夜にしかやってない豚骨ラーメン屋とか。」
「私、ラーメン屋さんとか行った事無いわ。
そのラーメン屋さん、美味しいの?」
「あぁ、特にチャーシューが美味いぞ。」
「今度連れてって。」
「……実験が成功したら考えとく。」
「そこは成功してもしなくても実験に協力した報酬として連れて行きなさいよ、外食しても不幸体質で周りに迷惑掛けて無いから食べに行けるんでしょう?
だったら私が居ても居なくても一緒じゃないの。」
「全く無いことはないんだ、調理器具や包丁が飛んで来たりとか。
だから実験次第だ。」
「…本当なのかしらね、危ない目に遭ったところを1度も見た事無いのだけれど。」
「離れて見てれば後で解るさ。」
そして俺は身支度を終え鳴沢と家を出て、登校中に実験を開始する事とした。
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ラーメン屋さんは実在しますが、別にお店の回し者ではありません。
是政橋も実在します、写真も近況ノートに貼り付けましたので、なんとなくこの小説の舞台がイメージ出来るかもしれません。
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