第14話 生存確認
翌日の放課後、俺の少し後ろをコソコソと付いて来る美少女が居た。
「おい鳴沢…お前、スゴい不審者感丸出しなんだが…。」
「だって、横に並んだら付き合ってるとか噂されそうで嫌でしょ?」
「…まぁそうだけど…じゃあ、もう少し遠くから離れて付いて来ればいいんじゃないか?」
「嫌よ、そしたら貴方、私を
…鳴沢は学校では俺と接点も無いし喋ってもいないのに、意外と俺の性格を見抜いている。
「ぐぬぬ…」
「私、ぐぬぬ…とか言ってる人、初めて見たかもしれないわ…。」
「………。」
「ちょ、ちょっと、無視しないでよ、私が独り言をブツブツ言ってる危ない人みたいじゃないの。」
「………。」
「貴方絶対ワザとでしょ、性格悪いわ。」
「…悪い、何か言ったか?」
俺は何か不幸な出来事が起こるのではないかと周辺に気を配っていたのだが、今のところ起こる気配は無い。
今朝もブレーキの壊れた自転車が俺に突っ込んで来たんだけどな…。
「…いいえ、私貴方に失礼な事を言ったわ、ごめんなさい。
ところで何をそんなに警戒しているの?」
「…言ったろ?俺に関わると不幸な出来事が起こるんだ…けど…。」
「…今のところ起きないわね。」
「そう…だから不思議でしょうがない。」
そんな会話をしていたら俺のマンションに到着した。
「あら、私の家と近いのね。
ここから歩いて5分くらいなのだけれど。」
「あぁ、そりゃ近いな。」
4階の俺の部屋を開けると玄関でネッコが座って待っていた。
「お邪魔します。
…貴女と会うの随分久し振りに感じるわ、毛並みが良くなったわね…
良い物食べさせて貰ってるのね、良かった…。」
ネッコは鳴沢に撫でられている間は大人しくしていた。
『猫缶しか食べて無いニャ。』
『その女に話し掛けても意味は通じて無いぞ。
カリカリも買ってやったのに、本当に贅沢なヤツだ!
俺の仕送りの生活費が厳しくなったらカリカリでガマンしてもらうからな。』
『それまで猫缶を買って来てくれるなんて、アニチは本当に優しいのニャ。』
『褒めても何も出ないぞ、オヤツくらいしか。』
『チョロっ。』
『聞こえてるぞ、その分その女にサービスしろよ。』
『解ってるニャ、アニチィー。』
ネッコが付いて来いと言わんばかりに鳴沢に何度も振り返りながら奥に歩いて行く。
「…上がって行くか?」
「変なコトしない?」
「お帰りやがれください。」
「アハハッ、何ソレ面白い。
勿論、お邪魔しますわ。」
奥のリビングにあるソファーに案内する。
ネッコはちゃっかりソファーに乗って寝っ転がっていた。
鳴沢がネッコと戯れている間に紅茶を入れたので出す。
「ありがとう、いただきます。
…あら、良い香り…
いいお茶を入れてくれたのかしら?」
「判るのか?」
「一応、いいトコのお嬢様らしいから。
ところでこの猫ちゃんの名前は何にしたの?」
「ネッコだ。」
「…は?」
「ネッコだ。」
「…冗談じゃ無かったのね、思わず聞き返してしまったわ。
ちょっとこの子がかわいそう…。」
『この女、結構いい奴ニャ!』
「…じゃあ、どういう名前が良かったんだよ。」
「そうね、エローイとかカロリーヌとか。」
「お前もか!」
『この女、アチシと気が合うのニャ!』
「…お前もか、とは?」
「…イヤ、何でも無い。
兎に角、そんな名前は日本では呼び辛いだろ。」
「そうね、呼びたくは無いわね。」
「…お前、俺をからかって遊んでるのか?」
「アハハハハッ、ご、ごめんなさい…。
ちょっと久し振りに喋ったから、人との会話が楽しくて。
……私、最近までイジメられていたの。
去年から半年くらい、殆ど誰とも喋ることさえ出来なくて…
私、家でも家政婦さんとくらいしか話せないから。
…だから、また話せる様になって嬉しいの。
本当にありがとう…。」
「そうか、大変だったんだな…
でもどうしたんだ、急に。
俺は礼を言われる様な事はしていないぞ。」
「はいはい、そうね。
だから、もう貴方の事を教室で無視したりなんかしないわ。
今度から普通に話し掛けてね、佐竹君。」
「あぁ、その必要があったら声を掛けさせてもらうよ。」
「…貴方もブレないわね…
ところで何故貴方は独り暮らしなのかしら?」
「俺の実家は他県にあってな、今の学校にとても通える距離じゃ無いから…というのは建前で、昨日言った不幸体質のせいで、家族にも害が及んだんだよ。
だから俺は独り暮らしを買って出たのさ…。」
「そうなの…貴方も大変だったのね…
立ち入った話を聞いてしまって、ごめんなさい。」
「イヤ、別に。
俺から話した事だしな。」
その後暫く鳴沢は猫じゃらしでネッコと遊んだり、オヤツをあげたりしていた。
「これからも時々ネッコちゃんと遊ばせてもらってもいいかしら?」
「…まぁ、時々なら…。」
「…さて…と。
じゃあ、そろそろお
佐竹君、私を家まで送ってくれないかしら。」
「…ここから家まで5分なんだろ?
大して掛からないと思うが。」
「貴方は不幸体質とやらで人との付き合いを避けている。
でも、今のところ私には貴方の言う不幸が訪れない。
だから、少し私で実験してみない?
他人と一緒に居て、不幸が本当に訪れるのかどうか。
暫く私と一緒に登下校しましょうよ。」
「…ハァーーーッ!?」
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