第12話 事件解決、その後

 俺は昨日スケッチブックを学校に置いてきてしまったのだが、陰キャぼっちの俺に興味がある奴は居ないので見られる心配は無いから、帰りに土手で処分する事にした。


 そういえばクラスメイトのほぼ全員が、堀の流した鳴沢の怪しげなウワサを信じている様だが、これはどうするべきか…

 堀もその取巻きも、もし鳴沢と平川がイジメの件を学校に改めて訴えたいと言い出した時のために、イジメた記憶は消さずにそのままにしてある。

 鳴沢と平川も、今の2人の友人関係を崩さないためにも俺はイジメの記憶を消すべきでは無いと判断した。

 だからクラスメイトのウワサも鳴沢が今後クラスの中で存在感を発揮していけば、そのうち無くなるだろうと思い、これ以上の手助けはしない事に決めた。

 そもそも他人ヒトの脳みそなんて、いじくらない方が良いに決まっている。

 失敗したら怖いしな…(本音)

 失敗した事は無いが…(多分)。



 その日の休み時間、トイレから帰って来た俺は教室前の廊下で鳴沢と平川が楽しそうに会話をしているのを見つけた。

 きっと鳴沢が堀と取巻きの謝罪動画を平川に見せて、お互いにスッキリとして話が弾んでいるのだろう。

 良かったな、2人共…。


 それを横目に俺が自分の教室に入ろうとしたら、丁度堀の取巻きが教室から出て来るところでぶつかりそうになり、


「キャーッ!」


と堀の取巻きに叫ばれた…。


「おっ、おい、急に現れるんじゃねーよ、ビックリするだろ!

 わっ、私に近付かないでくれ、頼むからっ…ヒッ…。」 


 取巻きはそう言い残し、廊下を走って何処かへ立ち去った。

 それを見ていた周りの生徒達は、何かあったのかと邪推した目でコチラを見る。

 おかしいな、堀以外に大した事してないのに…

 俺の洗脳って、本当に効いてるのかな…


「俺は今、何もしていない…。」


と独り言を口走ったところで誰が聞いているワケでも無いと周囲を見たところ、その一瞬だけ鳴沢と目が合ったが、俺はそのまま教室の中に入った。 

 


 その日の放課後、俺は是政橋の下付近の河原でパイロキネシスのチカラを使いスケッチブックを火にべていると、


「…何を燃やしてるのよ…。」


と背後から声が掛かったため、俺はビックリした。


 声の主は鳴沢だった。

 俺のクレアセンティエンス(危険や避けるべき状況を感覚的に察知する超能力)は、うまく作動しなかった様だ。

 しかしスケッチブックの内容が鳴沢に見られるのも、ある意味俺が裏で暗躍していた事がバレるから危険なのだが、何故作動しなかったのか…

 もしかしたら、鳴沢には超能力の耐性でもあるのかもしれない…。


「みっ、見るな、エッチ!

 エロ本を燃やしてるんだよ、あっちに行ってくれ!」


 俺は急いで火力を上げると一気にスケッチブックを燃やし尽くした。

 鳴沢は俺の足元の燃えカスをジッ…と見ている。



「………そんなに知られたく無いの…?」



「あぁ、男には女に見られちゃならないモノもあるんだ、例えばベッドの下とかにな…

 処分する時も誰かに見られない様に捨てたりするの大変なんだ、だから燃やすんだよ。」


 知ったかぶっちゃいるが、俺はエロ本は買った事が無い。

 エロ本なんて買う時も誰かに見られないかリスクがあるのに処分する時も大変だろ、スマホがあれば十分だ。


「……ふーん………

 

 …アリガト…」



「エッ?何か言ったか?

 そんな事より、もう鳴沢には話し掛けるなっていう約束だったよな。

 それに、俺の様なクラスの陰キャぼっちに今後話し掛けても何も良い事は無いぞ。

 …それじゃあな。」


 俺は付近の砂を集めてスケッチブックの燃えカスを埋めると周囲に火が燃え移って無いかを確認し、家に帰ろうとした。

 が、ふと引っ張られた感がしたので左手を見ると、鳴沢が俺の袖を右手で摘んでいた。


「あっ、あの……

 そっ、そう、あの猫ちゃん元気?

 私、あの子の様子を見に行きたいわ…。」


「…えっ? 

 ……エェーッ!?」


 …どういう事!?

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