第19話 恋煩い:アキ
「昨日、部活の見学来てくれるって言ったよね⁉」
そのアキの一言を聞いて、一瞬焦るが何とか冷静を保つ。
「昨日した話でしょ?別に今日見学に行けるとは言ってないんだけど...」
「早めにしないと来なくなるでしょ?」
意地でも連れていくという強い執念を感じる。
「あんまり経験ないのに、入ってもあんまり意味ないと思うけどなぁ」
と、凛大は気だるげに言ってみた。
「入ってから頑張ればいいじゃん」
そう言いながらアキは勉強を始めた。
『面倒くさいなぁ...』と思いつつ、今日の学校生活が始まった。
「ここはこの公式を組みかえて...」
数学の授業。凛大はすでに問題を多めに解き終えて外を眺めている。別にそこまで先生は厳しくないし、”凛大”という生徒を一人の生徒として理解しているからこそあまり指摘してこない。1人1人のスタイルを理解してくれる最高の教師である。たまに挙手していないのに当てて意地悪しようとすることもあるが、凛大の場合は全部対応できるから問題ない。
「今日もボーっとしてるね?またネコちゃん?」
かまってちゃんなのか知らないが、アキはうっとおしい程に話しかけてくる。
「どうしてそんなに話しかけてくるの?」
素直な疑問を述べる。
「百人一首部に入れるから」
どうかしてるとも思うが、そこまで執念深く勧誘してくるならなにかあるんだろうと、凛大は思った。
「ここ教えて?」
アキは会話を無視して問題の解き方を聞いてくる。もちろん凛大はその問題の解法について説明を始める。
『こんなにもアピールしているのに...』
『こんなにも一般高校生なのに...』
「さぁ、部活行こー♪」
恐ろしい笑顔で、凛大を部活に誘拐しようとする。
「別に行くとは言ってないんだけど...」
「逆に行かないとも言ってないじゃん?」
いつも凛大の一言一言を細かく聞いている。というより、凛大の発言に残された穴をしっかり見つけて突いてくる。
『面倒くさいなぁ』と、また思いつつアキに誘拐されていった。
「わぁ!こんにちは!噂の新入部員さん?」
「はい!とりあえず今日は見学で連れてきました!近いうち入部させます!」
凛大の入部は強制らしい。言われるがままに百人一首部の和室に来た。和服の女子たちが一生懸命に百人一首に向き合っている。
「ちょっと待ってて~」
アキはそう言って隣の部屋に行った。着替えにでも行ったのだろう。
「どうして見学に来る気になったの?」
アキの先輩にあたる人。頭の後ろで一つ結びにしていて花柄の着物が非常に似合う。
「いやぁ、入ろうとはまだ思っていないんですが、アキさんが恐ろしい程に勧誘してきて...」
凛大はそのまますべてを説明した。
「できれば入部してくれると嬉しいな~。女子しかいないからさ、イケメンが一人入るとみんなの気合が一気に入るんだぁ」
と、訳の分からないことを言う。とりあえず凛大は
「イケメンじゃないし仮にイケメンだったところでそんなに変わらないんじゃないんですかね?一時的なやる気は慣れるとまた失いますよ?」
と、正論を返しておいた。
「お待たせ~」
アキの声が和室中に響く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます