第12話 新人はネコ

 「誰に電話したの?」

 人型のネコは凛大に聞く。

 「防衛軍」

 凛大は単語だけで答える。その手は謎の生物を触れずに拘束している。

 防衛軍。それは、世界の均衡を守るという目的の元、活動している組織である。どの国にも属さず、基本的には戦争の裏で環境などへの影響を抑えたり、超能力などの、一般的に見ない異質なものを保護または排除するなど、さまざまな機能を持った組織である。

 「今回の依頼は防衛軍からだったんだ。隊員が丁度いないところに、謎の生物が現れたから、一度こっちで対処してほしいと頼まれたんだ」

 凛大は、そう言うと手の力を抜いた。すると周囲からいつの間にか人間が飛び出てきていた。人間は、魔法陣的なものを出す者と、謎の生物に何か取り付けている者に大きく分かれている。そして、一人の人間の男が近寄ってきた。それに警戒したネコは身構える。

 「構えなくて大丈夫」

 そう凛大は声をかけられて、内心警戒しながらネコは気を緩める。

 「こんばんわ。夜分遅くの依頼に応えていただき感謝します。今は女性ですな。家までお送りしましょうか?」

 特に下心は無さそうに、素直に心配しているようだった。

 「大丈夫。可愛くて優秀な新人が守ってくれる」

と、凛大はヒト型のネコを見ながら言った。

 「新人...ですか。珍しいですな、新人を受け入れるなんて考えられませんよ」

 不思議そうにヒト型のネコを見ながら男は言った。

 「私だってそういうことくらいする」

 凛大がそう言うと男は驚いたように言った。

 「そうですか...それはそれは大変ですな」

 「この人間だれ?」

 唐突に話に入ってきたのはネコだった。

 「申し訳ありません。まだ名乗っておりませんでしたな。私は、防衛軍第六軍副隊長・シュレインと申します。以後お見知りおきを」

 防衛軍は全部で8つの部隊と非正規部隊、特別部隊で構成される。基本的に強さではなく、活動内容、活動地域などで分けられている。

 「まぁ、今日はもう遅いから帰る」

 凛大はそう言うとネコの手を握った。

 「ご協力、ありがとうございました!」

 その場にいるほとんどの人間が凛大に向けてそう言った。

 「転移」

 凛大のほほ笑みが防衛軍の人間に向けられると、小さな声の詠唱とともにその場を後にした。


 「疲れたぁ」

 そう、一気に気が抜けたような声を出しながら凛大はベッドに倒れこむ。

 「防衛軍からも依頼が来るのか...」

 何か考え事をするようにネコは呟いた。しかしそれを無視して凛大は口を開いた。

 「ということで...こっちに来て」

 凛大は部屋の真ん中に立ってネコを呼ぶ。

 「ここ?」

 ネコは何も知らずに凛大の前に立って片方の膝を床についた。

 「そうそうじっとしててね?」

 そう言いながら凛大はネコの頭を少し撫でた。その直後、触れている部分が光り出した。

 「我、この者に名を与える。『桜夜(さよ)』。そう名付け、この者と我が生命の契約を結ぶ」

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