第9話 カミネコ受け入れの儀

 「あら?ネコ...なんでうちにいるの?」

 母は言う。

 「ネコ捨てようとしてる人がいたから怒ったら、自分にはもう面倒見れないけどいい子だから貰ってくれないか?って言われて...一旦引き取ってきたんだけど...なついちゃって...飼ってもいいかな?」

 少し沈黙が続く。険しい顔をしていた母は少し経つと笑顔になって、

 「珍しいわね、動物を飼いたいなんて。ちゃんと面倒見るのよ?一緒にお世話するけど連れ帰ったのはあなただからね?」

 「ありがと!」

 それは高校生とは思えない、小学生のするような反応。男子に来る思春期や反抗期とは似て似つかない反応だった。でも母は満面の笑みでいる。ネコも嬉しそうではある。

 「早くご飯とか買いに行こうよ。あんまりご飯食べてないかもしれないよ?」

 ネコは不思議そうな顔で、二人を見る。思っていた、知っていた人間とは違うような気がした。

 「まだ帰ってきたばかりだからちょっと準備させて?」

と、母は言いながら自室へ入っていく。

 「準備しよっか?」

 ネコは驚く。何か違う。さっきまで見ていた人間とは似ているが違う雰囲気。

 「みゃぁぁん」

 ネコは問う。

 「ごめん。また夜話すよ」

 準備できた母と家を出る。ネコは首輪も何も無いから家でお留守番になる。何かあったときは...命さえあればいいといことで...


 「今日は女の子なのね。今は不自由ない?」

 「うん。大丈夫...」

 一見普通の高校生に見える『月霜凛大』。でも裏の顔は超能力を持った、何でも屋。そして、もう一つの秘密...性別が...


 「とりあえずご飯とトイレ的なやつだけでいいよね?」

 ネコを飼っている家庭なら必ず知っているとも言えそうなご飯。簡易的なトイレ、と言っても砂(?)とかのよくあるやつ。その他少しのペット用品を買った。やはり、ネコ一匹家に留守番させるのはどうしても心配になる。

 「さっきから心配そうね。早く帰ろっか?」

 母は気づいてくれて、早く帰ってくれた。

 「ただいまぁ~」

 玄関に来たネコに一目散に駆け寄って抱っこする。そのモフモフは異常なほどの癒しを与えてくれた。

 母がご飯などの準備をしてくれている間に、ペット用品のセットだとか収納だとかをする。「いただきます」の後も自分のご飯よりもネコにご飯をあげることに夢中になる。

 食べ終わってお風呂に入るとき、ネコは着いてこようとした。でも拒んだ。母が苦笑いをしながらネコを抱いて離れた。お風呂が今の凛大にとって好ましくなかったから。


 「ごめんね。凛大、お風呂だけは誰とも入ろうとしないの。ちょっと大事な訳があって。入れない訳じゃないからいつの日か一緒に入れるといいね」

 「にゃぁぁん」

 母の説明に、ネコはいつもと変わらないように鳴いた。

 「まぁ、こんなこと言っても分からないか。あの子は、無理するからいっぱい癒してあげてね?」

 母の頼みに、ネコは頷くようにして鳴いた。

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