第7話 猫の手も借りたい<後編>
「去年のあの子の誕生日に飼い始めたんです。小学校から帰宅するときに偶然見つけて、人懐っこくて家まで着いてきちゃって...首輪もつけていなかったので、保護という意味も含めて家で預かってるんです。」
それ以来、白猫の本当の飼い主や親猫を探しているらしい。でもその中で、女の子は白猫と仲良くしてしまっているらしい。
「飼い主が見つかったら、きっと別れられなくなってしまうのではと思うんです」
それが最近の母親が気にかけていることらしい。
「念のため僕も何か情報探してみますね。もし関係ありそうな話あったら伝えますね」
と、伝えておく。しかし、捕まえたとき白猫のことを調べたときに白猫の記憶を見ると、生まれたときから野良猫で飼い主がいた様子はなかった。強いて言うなら...
「それで報酬ってどんなものを求められるんですか?」
少し心配そうに母親が聞いてくる。いつもどおり、報酬の詳細について説明する。
「...という感じで重要なのは僕が納得することであって、特にきまりはありません。僕の気分次第ではありますがそんなに難しいものは頼まないので安心してください。」
と、軽い笑みを添えて説明を終える。
しかし、あんまり母親は安心していないようにも見える。
「...じゃあ私はなにを報酬として払えばいいのでしょう?」
どうしてもそのことで頭がいっぱいらしい。実際ネット上のサイトにも、『特別な力でなんでもこなしますがそれ相応の報酬を求めます。』と書いてある。だからこそ、どうしても諦められないことや難しいことばかりの依頼が来るし、軽々しく依頼をしてくるような人はいないため多数の依頼は来ない。そこで自分の負担をコントロールする。そのため、初めて依頼を頼む人は、報酬について気にする人が多くいる。
「そうですね...」
と、内心決まっているのだが考えるふりをする。その短い間でも緊張するのか母親のゴクリと唾を飲むような音がした気がする。
「じゃあ、こういうのはどうでしょう...」
「ホントにこんなことでいいんですか?」
と、母親は心配そうに聞いてくる。
「良いんですよ。あの白猫はここでの生活が大好きみたいなんで。あなたがたと過ごせて幸せだとあの猫は感じてます。」
「なら報酬はきっちり払えるように頑張ります!」
その母親は活気に満ち溢れている。きっと、ちゃんと報酬は払ってくれるだろう。
「それでは失礼しました。またのご利用よろしくお願いします」
いつも通り、別れを告げて帰ろうとすると...
「バイバイお兄ちゃん!この子のことちゃんと面倒見るね!また遊びに来てね~」
と、猫を抱えた少女は手を振っている。それを見て、自分も笑顔で手を振り返した。
『あれだけ大好きなら、きっと報酬は払ってくれるだろうなぁ』と思いつつ目的の場所に向かう。
「お主か...私の可愛い息子を幸せに導いたのは...」
目的地についた自分にそう語り掛ける巨大な猫がいた。
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