第6話 猫の手も借りたい<中編>
お風呂を出ると、純白ともいえるほど白い猫がこちらを見ている。たぶん、早く家に帰りたいんだろう。僕としても、長居されると困るし、猫用のごはんや家具は置いてないから、僕も白猫も不便というか、居心地がよくないと思う。
「まあ、早めに帰りたいよな」
「にゃあん」
もう返事にしか聞こえない。準備しながら、依頼確認としてパソコンを開く。そこに、一軒の通知が入っていた。
『依頼を取り消しさせていただきます。唐突にすみません』
という、依頼取り消しの連絡が入っていた。確認してよかった。そう思っていると、なんだか白猫が誇らしく胸を張っているようにみえる。何が言いたいのだろう。
「まあ、早く帰りたいよな」
少し急ぎ気味で、片付けや戸締りをして白猫を抱えつつ外に出た。猫とはいえ、あまり超能力を知られたくない。その情報がいつどこで漏れるかわからない。そういうことを含めて、徒歩で依頼人の元へ向かう。
「割と近いほうだな」
30分くらい歩いて、依頼人の家まで着いた。少し大きめの家。自分の家に比べたらかなりお金持ちじゃないのかと思ってしまう。
「我が家よりだいぶ大きいな。君が出ていくなら僕が代わりに住もうか?」
と、冗談のつもりで言ったのだが、白猫は本気だと思ったのか抵抗しだした。
「じゃあなんで逃げたんだよ。羨ましいくらいだよ」
その一言を聞いて、話を逸らすようにそっぽを向いた気がした。
そんなこんなで、インターホンに手を伸ばす。その指がボタンを押そうとしたとき、
「トキちゃん!」
小学生らしき少女が家から飛び出してきた。一目散に白猫のもとに走ってきては僕から猫を取りあげ、強く抱きしめている。トキと呼ばれた白猫は、少し苦しそうではあるが自業自得だし、意外と嫌そうには見えない。今このときの幸福を実感しているようだ。少女は、何も言わずとっとと家に入っていった。そして、慌てたような母親らしき人物が出てくる。
「反応が遅れて申し訳ありません!報酬というものは、どんなものがいいですか」
母親らしき人は、焦ったように言う。
「初めてのご利用ですね。そんなに焦らなくても大丈夫ですよ」
と、とりあえず落ち着いてもらう。
その人は「中にどうぞ」と申し訳なそうに家の中に入れてくれた。
部屋にはペット用の家具や白猫と少女が写る写真が飾ってある。
「猫ちゃん、大切にされてるんですね」
と、会話を始める。すると母親は猫の話を始めた。
「あの白猫は、確か去年のあの子の誕生日に飼い始めた猫です。」
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