第3話 超能力と何でも屋サイト

 今日は学校も休み。家で一人のんびり過ごせる...というわけでもない。

今から、この前の畑仕事の依頼報酬を受け取りに行くのだ。でも、この前のように高速で向かうわけにはいけない。何故なら日中だから。別に、できない訳ではなく、人目につくから、したくない。結局のところできない。

 普通に考えたらわかるが、一般的に考えて依頼をこなすときの自分は、人間離れした行動を取っている。

 例えば先日の畑仕事の依頼なんて移動に秒速60m、つまり時速約21万キロ。土を湿らせたり、植物を消したりなんていう明らかにおかしいことをしている。そんなところを見られてしまっては、僕を使って悪事をしょうとする人間が現れるかもしれない。妬ましく思ったり、頼ろうと思ったりする人間がいるかもしれない。使いようによっては兵器になる。国や環境、世界を豹変させる原因になる。僕にだって大切な家族や時間がある。それらを壊さないために、壊されないために必要以上に力を使ったり見せたりしてはいけない。

 この超能力は、母も知っている。物心ついたころには力を扱えるようになっていた。母は僕にこの現実離れした力の影響力を何度も説明してきた。しかし、母は僕が”何でも屋”という名目で超能力を使っていることを知らない。それどころか、僕が超能力を持っていることを知らないかのように過ごしている。

 僕が何でも屋を開いた理由がいくつかある。

 一つ目は、人助けがしたかったから。こんな恵まれた特別な力があるのに、役立てないなんてことはしたくない。

 二つ目は、怖かったから。自分が得体のしれない力が使えることが広まればどうなるかわからない。でも自分がこの力を知っておかないと、力の制御ができなくなるとか、もし僕以外に同じような力をもって困っている人がいたときに助けられるように、力に慣れておきたいと考えたから。

 大雑把に言うとこんなところである。まとめていえば、

”自分のしたいことをするため”

なのである。

 そのために、高校生になってからパソコンを買って、ひとつのWebサイトを作った。


 ”超能力者によるなんでも屋”

 「超能力を頼りたい人、無理難題を頼みたい人はご連絡ください。」


 そしてこのサイトは、理由は分からないが、世界中に...異世界に...

繋がって、裏で頼られる謎のWebサイトとなった。


 「これ依頼報酬な。いつもありがとう。一人とは思えないほどに早く正確な仕事はいつも通りだな。どうやってやってるのか知りたいよ。超能力は実在しないとばかり思っていたけど、お前さんの仕事見ると信じざるを得ないんだよなぁ」

 依頼主のおじさんはそう言ってくれる。

 「全部、企業秘密ですよ。超能力なんてバレてはいけないんです。今回もご利用ありがとうございます」


 報酬はなんでもいい。僕が納得できるものをくれればいいのだ。金、ごはん、物、命、土地だって受け付ける。重要なのは、その感情。感謝の気持ちとかそういうものがやっぱり大事なのだ。だから報酬はなんだっていい。


 「またご利用おねがいしますね」

と、ニコっと笑顔をみせて、僕は家に帰った。

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