休息/異世界ごはん事情
麗奈が目覚めると、そこはレイナの部屋、自室だった。体を起こすと頭痛が走る。体が鉛のように重い。傍らにはネミルがいた。
「よかった。気が付いたんですね」
「あれ。あたしって確か……」
炎の中にいたはずだ。すぐに麗奈は思い出した。魂とつながるための道を進み、それを成し遂げたことを。瞼の裏で見た光景を鮮明に。
「ネミル。あたし、魂とつながれたかも」
「本当ですか!?瞼の裏の景色が変わって最初は、みんな喜んで集中を切らしてしまうんです。私もそうでしたし。それを乗り越えても、長い長い道を歩いていくために集中を続ける必要があります。本来は、景色が変わってから、休憩したりしながら慣らしていくことで、魂の道を歩く感覚をつかんでいくものなんです。それを繰り返しながら少しずつ魂に近づいて、肉体の奥底にある魂とつながるための準備をするんです。一度にそれを全部できてしまうなんて、よほどの集中力と根気がなければできないことなんですよ」
麗奈は一度見えたその景色を絶対に離したくなかった。その先に求めるものがあることは明白だったからだ。何度も耐えた。ゴールを目指して炎の中を進み続けた。並大抵のことではないと思ってはいた。だが、それを成し遂げなければ、聖女として求められる役割を果たすことなどできないと、麗奈はおぼろげながら理解している。
「……もう夢中だったからね。絶対にここで魂とつながって力を手に入れるんだって思って。それでゴールまで行けた。それだけだよ」
聖女たる人物の気概とはこういうものなのだと、ネミルは感じていた。村でのこともそうだ。麗奈は簡単に言ってのけたが、いざ自分が同じ状況に立たされた時、迷わず飛び込んで誰かの盾になれるだろうか。おそらく無理だ。常人離れした精神性と集中力でもって、麗奈は間違いなく聖女として立った。魂との接触もそうだ。普通ならば歯止めがかかる。ひとまずこれまでと足が止まる。だが麗奈は限界に挑んだ。立ち止まることを良しとしなかった。だからこそ、ここまでの短期間で浄力を使うための下地を整えた。これだけのものを見せられて、思わずにはいられない。彼女こそが聖女としてこの世界を救うかもしれないという可能性を。
「体の具合はどうですか?頭の使い過ぎで、不調が来ていませんか?」
「うん、疲れてるよ。気絶してどれだけ寝てたかはわからないけど。あ、でも、お腹は減ってる!」
麗奈は目覚めてからずっと空腹を感じていた。体を動かすこともそうだが、頭を使い続けるというのも体力を消費するのだ。魂とつながることにだけ集中し、自分の体のことなど気にも留めていなかった。もっとも、そういった意識をも超えた先にあるのが魂との接触なのだとしたら、これ以上ないほどの成功を一度につかんだと言える。達成感をかみしめながら、今日の夕飯に意識を向ける。空腹は最高のスパイスだ。何が出されてもあっという間に完食してしまうことだろう。
「そういえば、そろそろ夕食ですよ。部屋まで運んできますね」
「いいよいいよ。食べに行くから」
「ダメです。ゆっくり体を休めないと」
ネミルに説き伏せられ、夕食が届けられるのを待つ。
「どうぞ。今日は特に美味しそうですよ」
「お~!夜ご飯だ!ハンバーグか~!いいね。ネミルはハンバーグ好きなの?」
麗奈の何気ない問いにネミルは顔を赤くしてうなずいた。中学生くらいの年代の彼女に、年相応の面を垣間見て可愛らしさを感じながら、ふと疑問に思ったことがある。
「あのさ。あたしもあんまり詳しくないけど、聖職者って食べ物に気をつけなきゃいけないって聞いたことあるんだ。その点この世界の、誰だっけ。シュリム様?はどう考えてるのかなって」
「食べ物についてですか。シュリム様の教えの中に、肉食についての事柄があります。生物の肉については、魂が
「そっか。じゃあ、ありがとうございます、いただきますだね」
与えられた命の証明を明日への糧として生きる。それは世界の理。どこの世界でも、どんな時代でも、生物が生きていく限り、命をつなぐ限りそれは不変だ。
ネミルと二人で食卓を囲む麗奈。今日のメニューは、パンとシチュー、ハンバーグにサラダだ。なかなかにボリューミーで食べ応えがある。
「そういえば、こっちに来た時はちょうど昼時だったっけ。向こうはどうなってるんだろ……」
「麗奈さんがレイナ様の体に宿っているこの状況があるなら、麗奈さんの体にレイナ様がいる、ということでしょうか」
この状況になってから、改めて現状を
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