最終話 導くための祈り

「守っていた?」

「そう。あなたは事件で当時の親友がなくなった現場を真直に観た。もちろん、ショックも一時的にはあった。けど、精神的側面では意外にも回復が早く治りかけであった。小学生の頃だから詳細に記憶してないが、恐らく笑顔や歩行等は容易くできるようになっていた。もちろん、声も出せるようにと思った矢先、不運にも何かが攻撃してきた。サナはずっとその何かと戦っていなければいけず、声は発せなかった。当時の現場の写真を大家さんから見せてもらったけど、あそこ一帯は昔から呪詛が関わってきたイワクつきなのよ。」

「なるほど…。」

「残念だけど、その子の父親はその場の波長に飲まれておかしくなった。母親もその子も、最終的には。良縁も強制的に切られ助けを求めれなかった。今はあの一帯は、一部の霊能者達が解決してくれたそうよ。まあ、解決といっても完全にではないけど。とにかく、あなたは一時的なショックに付け込まれて憑かれた。入学式の日、教室入ってすぐ貴女だけ黒い空気が視えたわ。」

「私が言葉を発せないのは自己紹介前から理解していたんですね。」

「そうねー。」

天井から呼び鈴が鳴る。

「おっと。そろそろ朝礼ね。先に教室に戻ってなさい。放課後、カヤも連れて改めて教えるわ。私は、まだ業務があるし。」

「はい。」


〈その後、放課後にて。〉

より詳しい内容を小澤先生からカヤと共に聞いた。

黒い空気、呪詛、”何か”は先生ですらよくわからないとのこと。ただ、他者に害をなすのは紛れもない事実だそうだ。

そして、私が声を取り戻せたのはカヤのおかげとのこと。

カヤには強いご先祖様による守護がいるからだ。2人の縁が繋がったのを世間では偶然と呼ぶ。しかし、先生からしたら必然であるとのこと。過去、現在、未来は全て長い線で既に出来上がっているらしい。これも定められた運命かもしれない。先生的には自宅訪問で憑き物が離れると目星が付けてたが、想像以上に奥深く私の魂にめり込まれていたのだ。それが時間を呈してカヤの力で衰退させたのだ。

一方、小澤先生が今任務を受けてる怪現象はこの高校にあるが、それから一週間後に解決したそうだ。以前から研究にも満足したのか、先生はここでの教員生活を続けるとのこと。

「土地的にも恵まれた高校なのよね。縁だわぁ。」


「カヤ、小澤先生。ありがとうございます。」

こうして、私は無口ではなくなった。


〈約4年後…。4月初め。〉

私は大学3年生になり始めた。

今では普通に話せる。友達も1年時にでき、法学部での勉強にも充実している。弁護士はキツイけど、行政書士の国家資格を先月取得できた。他にも、日商簿記2級や漢字検定準1級等と授業以外の勉強が楽しくて活力に溢れる。

カヤは高校卒業後、スポーツ系の専門学校に通い、今では高校や大学の強豪校で女子陸上専門のスポーツトレーナーである。

カヤの仕事柄会える機会は減ったけど、必ず毎年顔を合わせている。恋人としての継続は高校卒業と同時に終わらせた。2人で話し合い納得した結果だ。大人になり更に自分の世界を広げたい。それはどちらも感じていたこと。今でも思う。カヤとの出会いがなければ間違いなく今の私はいない。闇に葬られていた。きっと誰かが私とカヤを導いてくれたのかもしれない。


優しい誰かが。


そして、誰しもが

優しさ、生きる力、希望という光を胸に持ち合わせるよう

私は今日も祈る。




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無口な私 『光へ導く存在と共に』 辻田鷹斗 @ryuto7ryu

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