第十六話 改善
虐め解決からしばらく経過し、私達は2年生へ進級した。
担任は変わらず小澤先生。クラスもほとんど変わらずカヤといつものように過ごす。愛し愛されて。
一体いつ小澤先生から具体的な改善案が提示されるのだろうか。
4月の帰り道、春の暖かい空気が澄む。いつものように途中の川岸からカヤと自転車を押している歩く。メッセージで伝えようと入れてると突如清澄で高い声が耳に入る。
「私は納豆苦手かな。」
「へっ?」
カヤは驚き立ち止まったまま私を眺める。ん?どうしたのかしら?
「サナ、もう一度言ってみて。」
もしや。
「わ、私は納豆にが…て、かな。」
嘘。うそでしょ!あれ?なんだろう?涙が。滴る。
「サナ…。」
それは安堵からの涙だった。声を発っすることは随分前から出来てた。それでもここまでハッキリ言葉を流せるとは。今まで願ってきたことなのに。嬉しさより安堵が勝っていた。
「ふっ。えぐっ。カヤ…。」
カヤは笑顔で無言のまま私を抱きしめる。
後日、朝始業の前に小澤先生へ報告しに行く。1人で職員室に入室する。小澤先生はパソコンと睨めっこしていた。近くにくると私に気付き問う。
「あら、おはようございます。何か御用かしら?」
目をしっかり見て言う。
「…おはようございます。」
「…………hおおお!?!!?!」
ビックリしたのか他の教員も何事かと注目する。
「小澤先生。私、こんなにも綺麗に話せるようになりました。」
満点の笑顔を見せる。
「はーーー、よかったねー!いつから話せるように?」
「ちょうど昨日の帰りです。」
「おーそうかそうかー!昨年自宅にサナさん家に訪問してもうそろかなー?と思っていたけど予想より時間が掛かったわ。」
え?
「もしかして、あの時質問して帰ったのって…。」
「うん。サナがっもうそろ声を取り戻せるのではと確信できたからなのよ。けど、思いの外長くなってしまったわね。ごめんよ。ハッキリした説明できなくて。」
先生は顔の前に手を合わせて謝る。
「いえ。無事に今声を出せるので一件落着です!」
「そう。良かったー。いやー。人生初!!2度目の予想失敗だわ。やっぱり人って面白いわ。」
あの聡明で天才な小澤先生でも1度は予想を外していたんだ。
「あっ、そうそう。原因なんだと思う?。」
「んー?精神的ショック?けど、どうして私が声を発せなくなってずっと証明できなかったのでしょうか?何度も精神科で診ても明らかではなかったですし。」
「それはね。霊的作用によるものよ。」
「霊的?先生にしては随分似つかわしくない推察ですね。」
「確かに。科学的分野で多分の賞を貰ったのは事実。生来の現実主義でもあった。でも世の中見えないもの、非現実的な事象も事実、存在するのよ。」
「はぁ。」
「実は私、ここの高校に赴任したのはある怪現象を見極めて浄化する目的で来たのよ。」
「浄化…。えっ!先生って霊能者でもあったんですか!?」
「そうよ。因みにここの教員はもう知っているわ。」
「道理で世界的に超有名大学卒業が噓っぽいと思いましたよ。」
「いえ?それも本当よ。えーっと。」
パソコンをいじり見せる。
「ほら。」
そこにはマサチューセッツ大学卒業、日本のトップ大学卒業の証明書があった。しかも、大学には首席で卒業しており大学院で博士課程を5個も取得している。ネット記事では研究場面が写真に写っていた。それも大々的に。
「見えないものが見えるようになったのは、生まれた時から。ずっと隠して生活して一時は引きこもっていたわ。でも、17歳の時、本物の霊能者と縁があってコントロール可能になったのよ。」
「へー。じゃあ、私の声は”あれ以来”悪霊に奪われていたんですか?」
「ううん。自分で自分を守っていたのよ。」
「守っていた?」
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