第十五話 縁の下の力持ち

「サナさん、トマト好き?」

えっ?

大事な内容で何を言い出すかと思えば、トマト?私は拍子抜けしたのか肩の力がストンと落ちた。んー、最近食べれるようになったかな?嫌いだったけど普通に食べれるに昇格した感じ?眉を寄せて微妙に頷く。反応を返すように先生は小さく呟く。

「じゃあ、好きな色は?」

好きな色かぁ。

「青です。」と紙に書き記す。

「じゃ、さようなら。今日はここまで。疲れたでしょう?では、明日学校で会いましょ。」

えっ?私と母さんは戸惑いつつも挨拶をして小澤先生も深々と礼をして家を去る。何か確信したのだろうか?


翌日、カヤと学校の屋上で弁当を食べる。屋上故か鳥の糞が多く、他にも汚れた箇所が多いせいか屋上に寄る者はいない。もちろん、私達の今の状況を踏まえればここは恰度いいくらい。小澤先生は普段通りの対応で特に向こうから指示を受けることはなかった。

「えっ!昨日の夜、小澤先生が来たの?」

うん。と頷く。スマホを取り出してラインでカヤに書き送る。

「私の過去と関係あるみたい。一応カヤにも知っておいて欲しい。」以下、昨日私が語った過去の内容をカヤにもラインのメッセージで伝えた。


帰り道。

互いに自転車を押しながら川沿いの一本道を歩く。夕日が横から照らす。

「ねぇ。サナは強いね。過去の事件背負って、私のことも受け入れて、今、いる。たった2つの出来事だけど普通の人なら耐えられないかも。そのうちの一つは私のせいだけど。」

私は立ち止まって自転車を置き川岸に座る。メッセージを送る。カヤも私の行動に付き合う。

「そんな、カヤのせいじゃないよ。おかげで私は成長したし、大切なモノを見つけた。きっと、カヤと出会わなければ今頃家に引きこもっていたかも。ありがとう。カヤ。」

「サナ…。」


翌日、私達はついに、虐められた。

上靴を履いた時ヌルッと感触が足に伝わった。思わずサッと足を上げると私の靴下の足底には赤い液体が付着していた。匂いで理解した。ケチャップだ。周囲の登校者は今はいない。朝嫌な予感がしたから、今日は早めに来て正解だった。恐らく昨日私が帰った直後に奴らは計画を実行したに違いない。持ってきたタオルで拭き何事も無かったように教室へ向かう。

数時間後、昼休み。屋上でカヤを待っているとカヤが来た。何事もないようだ。

「あー。私も同じことされた。朝早かったから周りに気付かれずに拭けたから大丈夫。」

勘は私と同じだ。不思議にも驚かなかった。しかし、虐めは今日以来何もなかった。


後日、小澤先生から放課後職員室へとカヤも一緒に呼ばれた。

「2人とも怪我はない?」

「はい。あれ?もしかして先生何かしたんですか?」

「そうね。あなた達を虐めた犯人を特定して反省文と超説教で更生させたの。」

ハァー、いつの間に。私達は感心していた。名前も一応聞いたら他クラスの者が行ったそうだ。

「まあ、この学校は幸運にも理解ある人が多いから今回は軽く済んだ。でも、もしかしたらエスカレートして反逆してくるかもしれないし、新たに犯行する者が参入するのも否定できないわ。目を光らせるとはいえ、用心してね。他クラスの先生方にも協力してくれるし、ひとまず無理せずに。」

小澤先生ってやっぱり凄い人だ。カヤも担任になったことに後悔してないようだ。

はて、私の改善策はいつ提示されるのか?待ち遠しい。

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