第九話 周囲
えっ!!
「どういうことですか?学年にまで私達のことが知られているなんて!もしかして、先生が?」
カヤは真剣な眼差しで先生に対して必死に問いかけていた。
「いいえ。私は決してそんなクズの謀りはしないわ。私が実際知ったのは先月の日報よ。」
「にっ、ぽ、う?」
小澤先生は初めて私の声を聞いたのか目を開いて驚いたが、すぐさま真剣な表情になる。
「ええ。名前は教えないけど日報にはカヤとサナが体育館裏で制服を着たままやっているのを偶然見た、と書かれていた。」
先月の…、あの時か!
私達は昼休み誰もいない体育館裏でやった。当然抑えてた欲望が我慢できなくなったからだ。室内だけじゃなくたまには外でやるのも良いのではと、私がカヤに提案した。
私のせいだ。私が。
私はカヤに顔を向けると、カヤは怒っていなかった。
「サナ、断らなかった私にも責任がある。というか、やらかしたらお互い同じ責任を負うと約束したじゃない。だから大丈夫。」
「そ、んな、ありがと、う。」
情けない、私が欲望に駆られずモラルを抑えていれば。顔が下へ俯く。自分の靴から雫が垂れる。
「とにかく、見た本人は驚いて秘密にしようとした。が、同じ高校生にしては中々物凄い光景だったことから困ってつい日報で書いて私へ知らせた。目撃者本人は"そういう"のに乏しかったみたいし。その後、書いたことはやっぱり消したいと申し出てきて黒塗りにして修正テープで消したわ。まぁ、その人は善良な者だし正しい判断よ。見て秘密にしてすぐ誰かに話したわけじゃないし。けど、修正して見られるはずがないのに。」
息継ぎの間をおいて、再び小澤先生は話す。
「翌日、生徒内のみで噂が広がっていた。
さらに翌日の朝、私はたまたま早めに学校に来て、廊下を歩いていると教室から君達二人のことを話しているのを聞いた。気持ち悪い、女同士気色悪いと。思わず問い詰めたら、『もっと前から噂になっていた。』と。」
は?
「つまり、君達はもっと前から周囲の人間に気づかれていたのよ。意味分かる?黒塗りでテープで真っ白にしたことでさえ無駄だったのよ。」
嘘っ。そんな、じゃあ、あの二学期始まって学校で我慢できずにやり始めて、その辺りから?
「じゃあ、先生は何で今さら私とサナに伝えたんですか?」
「………。」
先生は堅くひと呼吸する。
「スー、フゥーーー。教師として公共の場で性行為をするのは見逃せないし注意すべきだった。不甲斐ない、感情に任せてしまうなんて。けど私はあなた達がただ普通に青春を謳歌してほしいと思ったから、言わなかった。知らぬが仏よ。でも、噂はあっという間に広がり、周囲から卑屈な眼差しを向けられていた。そんなことを知らずにあなた達が過ごすのはこれ以上見てられなかった。いずれイジメが起きるのは時間の問題だと思った。心配だったの。とにかく、もっと早く話すべきだと今不浄に後悔している。」
小澤先生…。カヤが言う。
「先生、これから私達はどう学校生活を送れば良いんですか?」
「ひとまず何かあったらすぐに教えて。もし限界が来たら私が対処する。必ず。それと、噂を一番に広めた者も探るわ。」
「……ありがとうございます。」
「さ、帰りなさい。今は部活の準備で廊下に人気がない。」
深く礼をして、廊下に出る。何もなかったように私達は校舎を出た。自転車を漕ぐ。
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