第八話 既知
冬になり、私とカヤは会うたび互いについしてしまう。
欲望に任されたまま。
思い返すと、私は春の頃は同性愛が苦手だった。それどころかカヤに対して無意識に嫌悪していた。けど、今はどうだろう。全く逆の現象になっている。愛せるようにまで進歩した。人間の物事に対する慣れは恐ろしい。慣れて欲望に任せたことでまさか悲惨な結果を生むことになるとは…。
〈12月初旬・昼休み〉
私とカヤは二人で人気のない1階端の女子トイレに入り、個室で二人sexをした。
カヤ、今日も妖艶で美しい身体。荒い息が目の前で密接に肉体を合わし動かして興奮する。
「ハァ、ハァ、カヤッ。私は、ハァ、あなたに、会えてぇ、良かったよ。アッ、アッ、そこはっ。」
「私もサナと一緒にいれて嬉しい。」
色気のある声がただこのトイレに鳴り響く。私もカヤも無我夢中だった。すると、入り口から誰かが歩く足音が聞こえてきた。
「ストップ!待って!!」
私達はすぐにやめて音を聞く。足音は入り口に入らずそのままどこかへ去っていった。腕時計を見ると丁度昼休みが終わる時間が近付いていた。
「カヤ、次の授業行くよ。」
「もちろん。」
すぐさま制服を着て個室を出る。
互いの関係が怪しまれないよう、入り口から人目を確認して別々の時間で抜け出す。先にカヤが行き、私はその1分後に抜け出した。
よしっ。今だ!
ドアを開けて中央にある階段まで走っていく。
刹那、気配を後ろから感じた。
驚いて後ろを振り向いたが、廊下には誰も居らず、無の空間である。
とりあえず教室に向かおう。
教室に到着し何事もなかったフリで席に座る。席替えをしたせいか私とカヤは遠い。私は窓側の一番後ろ。カヤは中央のど真ん中。離れていて今でも寂しくて彼女が恋しい。
普段と変わらず授業を受けて帰りの時間になった。少しずつ教室にいる人の数が減ってき、私はカヤの席まで歩いてメモで「今日も一緒に歩きで帰ろう。」と見せる。
「うん!いいよ!今日はバイトないし、サナも買い出しはないから家で続きをしよう。」
うんと頷く。
すると、職員室に行ったはずの小澤先生が再び足早で教室に戻ってきた。入り口で誰か探しているようにしていた。
「あっ。サナさん、カヤさん。二人とも暇でしょ。ちょっと手伝ってくれない?歴史の成績少しはプラスにするから。」
ん?なんで私達?他にも教室内で暇そうに友達と喋ってるグループはいるのに。
「はーい、手伝いまーす。」
そう言ってカヤは真っ先に先生の側に寄る。私もカヤに付いてきて寄る。
「じゃあ、付いてきて。」
足早と廊下の端っこにある小さな教室へ歩く。
何だろ?そんなに急いでいること?
とにかく付いてきて小さな教室に入る。冬だから16時でも暗い。先生は電気を着けてカーテンを閉める。教室内には私とカヤと先生だけ。机には資料や筆記用具などの物がなかった。
「騙してごめんなさい。あなた達を呼んだのは手伝いじゃないわ。」
「えっ?一体、何かあったんですか?」
カヤが問いかけた。
「実は今日の昼休み、偶然一階の女子トイレに寄ったらあなた達の声を聞いたの。サナっ。カヤっ。とお互い呼びかけるように。」
あっ!あの足音は小澤先生だったのか。
カヤも戸惑いながら言う。
「そんな。私達が?誰かとの間違えたんじゃないですか?」
「いいえ。ハッキリと"見た"わ。」
見た!?もしかして。
「カヤさんとサナさんが別々でトイレから出るとこまでね。」
「嘘。」
やはり、あの時廊下で感じた気配も小澤先生だった。でも、見たならなんで直接私達に?
「見たのに何で直接言うかって?サナさんの顔、そう書いてるわよ。」
ギクッと顔が引きつる。
「これが今日私だけ知っていたばっかならあなた達の関係は秘密にしていたわ。」
知っていたばっか?
「残念だけど、あなた達の関係は既にクラス、いや、学年まで噂として広がっているわ。」
えっ!!
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