第六話 解消へ…。
〈放課後・小澤side〉
「それは同性愛者だけに限らない。人間が自分に合った距離感はその人間にしかわからない。つまり、異性が好きなストレートの女だってカッコいい男なら近付くけど、不細工な男なら離れる。好みは違えどね。現にサナさんだって親には自分の全てを曝け出す?自慰行為まで見せるかしら?」
サナは首を横に振る。
「そうよね。ましてや思春期真っ只中の女子高生が秘密を抱えないはずがないもんね。つまり、これが秘密を持った距離感ということ。特に、サナさんにとって大事な友達は、向こうがサナさんに全部曝け出して良いと心を許したから。人が人に全てを曝け出すことは容易ではない。きっと彼女も勇気を振り絞ったはず。
では、どうするか?……、答えは簡単。
あなたの最終的な決断が全てよ。結局離れるも近付くも自由。正解はないの。」
しかし、サナは冴えない顔をして少し俯く。
「まあ、私からの個人的な意見を述べるなら、その友達とは離れない方が良いかな。だって、せっかくサナさんが唯一心を許してまでできた友達でしょ。私だったら、そうするわ。受け入れるべき事情は受け入れて、避けたい事情は避ければ良い。同性愛者なら友達として受け入れて、愛人として避ける。」
サナはメモ帳に書き上げる「確かに。そうするしかないんですかね。」と。
「ま、人間受け入れと避けが非常に苦手だから面白いけど。」
サナの顔が少し明るくなった。ちょっとは気持ちが楽になったかな?時計を見る。
「そろそろ会議だからここまでね。私ばっかり長々と話してごめんね。歴史の成績必ず上げるから。」
「いえいえ、ありがとうございます!」と書いた。
「うん。話したいことがあればまたいつでも話しなさい。今日は喋りすぎたけど、次また相談したい時はちゃんと聞くから。」
サナは立ち上がって笑顔にのまま深く礼をして足早と会議室を出た。彼女を去っていくのを見て私は思った。懸念すべきはサナかもしれない。二人の事情が解決しても新たな問題が発生するのは何となく薄く感じた。
「あの変わり者の2人を周りが知ったらマズイかもなぁ。」と呟く。
ある意味一番秘密にすべきは私だ。
〈放課後〉
私は小澤先生からのアドバイスを受け止めて必死に走った。
カヤ!
もう一度あなたに会って話をしたい。スマホを取り出して通話にする。
「サナさん?どうしたの通話なんて?まさか先生からテスト全範囲聞いちゃったの?」
「はぁ、はぁ、ちが、ぅ。ハァ、ぁ、な、たに、あいた、い。はぁ、はぁ、」
「っ。…わかった。今私家だから場所を教えて。私もサナさんのいる場所に向かう。」
「いや!だ、いじょう、ぶ。ハァ、はあ、私が、あなたの、場所に、向かう!ま、っ、てて。ハァ、はぁ、はあ、」
「…わかった。お互いちゃんと話そうサナ。」「ハァ、ハァ、うん!」
ぷーっ、ぷーっ。電話が切れた。スマホを胸ポケットにしまう。自転車置き場に到着しすぐ自転車を漕いでいく。待ってて、私にとってあなたは唯一の友達なんだから。
〈同時刻・カヤside〉
あんなにサナがハッキリ話したのはあの時以来だ。息を切らしてまで私の元まで。
サナ、私はあなたが…。
〈20分後・カヤのマンション〉
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。息を切らしながら自転車を止める。ゴホッゴホッ。ハァ、ハァ。汗が、びっしょりだ。
エレベーターにただ一人乗り3階のカヤの部屋前に着く。インターホンを鳴らす。鍵が開きドアが開く。カヤは部屋着で私を見ていた。笑顔じゃない。気持ちが沈んでいるねか怒っているのか微妙な表情をしていた。
「入って。」
リビングに案内されソファと椅子で向かい合わせに座る。
「カヤ。あ、汗くさ、い、けど、ゆ、許して!」
私はカヤの口を目掛けて一瞬で接触した。「っん!?」
カヤは驚いていた。しかし、私はやはり鳥肌が止まらず身体の芯が冷え切った。すぐに離した。
「くっ。や、っぱ、り。無理だよ。鳥肌、が止まら、なくて、恐い。私は、カヤ、と、は、愛人に、は、なれない。」
カヤは悲しそうな顔をした。
「そう。諦めるしないんだね、サナ。」
「うん。」
「サナ。私はあなたを初めて隣で見た時、真っ先に惚れた。正直言って関わるうちに濡れて心底生きた心地がした。だけど、サナが無理なら諦める。私はもうこれ以上関わりたくない。これからもあなたと会って届かない恋は嫌だよ。私、壊れてしまう。」
「いや!私は友達としていたいしカヤと、関わりたい。だって唯一の友達、親友だもの!」
私は離れず避けない。
これからも。だから、
「だから!カヤ!私は、諦めない!いつか、愛人として、なれる日が、来るまではずっと一緒に、近付きたい!」
「えっ?…本当に?」
「うん!だから私も努力する。少しずつ。」カヤは笑顔になる。涙ぐんでも。
「ありがとう。サナは、サナは、こんな私でも受け入れてくれるんだね。優しすぎるよ。自分を変えてまでするなんて。」
無言で頷く。
「乗り越えましょう、カヤ。」
お互い涙が止まらなかった。気付いたら互いにハグしていた。
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