第4話

 楡屋敷の庭には大きなコブシの木が白い花をつけていた。また楡の大きな木が沢山植わっていた。庭の木の手入れには手間がかかり、おおむね年に2回は庭師が訪れて手入れしていたが、シャミはとても上手に手入れしていて、フキはとても喜んでいた。


「こうしてコブシの花の咲くころには、いつも神音様がフルートを吹いてお嬢様がピアノを弾いて、旦那様と奥様が嬉しそうに聞いていらっしゃいましたよ。とても仲の良いご家族で、揃っていらしたときはとっても幸せでした。ザウツブルグの音楽祭にいらしたお二人が車の事故で亡くなられて時は、神音様はパニック障害になってしまわれたのです。もともと病弱なかたでしたから。麗歌様はお兄様を大好きでしたからお嫁には行かないって言ってらしたんですが、神音様が有名フルート奏者になられて、皆さんにも説得されて結婚されたんですよ。・・でも神音様のフルートは本当に素晴らしいです。」

「こんなにお世話になってしまって申し訳ないとは思っているのですが、この美しいお屋敷の庭や優しいフキさんや・・神音さんのフルートの音を聞くと心が安らいでどうしても、あと一日あと一日って思って出ていけないんです。でもご迷惑がかかるかもしれないから。でていかないと」

 シャミは思いつめたように言った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る