第5話

「夕べとんでもないものを見ちゃったんだ」

週刊誌記者の佐藤が新橋の屋台で飲みながら同僚に吐き捨てるように言った。

「どうしたんですか」

「あの楡屋敷のプリンス、ほら永子様と噂がある」

「フルート吹く人ですね」

「ずっと家を張ってたんだ。そしたらなんと家に女がいたんだぜ」

「えーっ」

「せっかく永子様の大本命だとおもってたのにななあ」

「でもただの客ってことは無いですか。あんな広い屋敷だし客ぐらいくるでしょう」

「いや、あの屋敷には庭に防犯用のセンサーがついていて、普通の人は入れないんだ。家に入れるのはお手伝いさんとマネージャ―の工藤くらい。あと妹と。あの身なりは妹じゃなかった。」

「顔は撮れたんですか」

「それがな。直ぐに入っちゃったので後ろ姿だけ。その後は姿を見せない。これじゃ場所がどこだかも特定できないし。でももうちょっと張ってみるかな・・別のスクープが撮れるかもしれない」

「でも、永子様の相手じゃなければ一般人でしょう。別にスクープにもならないでしょう?」

「そうだよなあ」

「ちょっと、君」

佐藤に話しかけてきた男がいた。

「少し、その話ききたいんですが」

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