第31話 文化祭・2
何とか人目につく前に手を繋ぐことは回避され、ジェラルドさんと屋台を見て回ろうかと話していた時。
同じく、一緒に見て回っていたキャロルとカイちゃんに
「よお。お二人も一緒かい?」
「ああ。そちらもか…………何か?」
カイちゃんが、にまにまとこちらを見ていたことに対し訝(いぶか)しげにジェラルドさんが問う。
「いやぁ。改めて、なんつーか……あのアインベルツ様がなぁ」
「バカにしているのか?」
「まさか。まぁ何だ、お互い鈍いヤツ相手だから気長にやって行こうぜ。――そうだ、俺達はこれからお化け屋敷に行くんだが一緒にどうだい?」
カイちゃんのお誘いに、ジェラルド様が私に目配せをする。
「私は構わないが。コレルはどうだろうか?」
「私も構いませんよ。楽しそうです」
「よし、決まりだな。じゃあ行こうぜ」
お化け屋敷の前まで来ると意外な賑わいをみせていた。
列に並んでいる人達を見渡すと男女二人の割合が大半を占めているようだった。やはり、いついかなる時もこういった場所はカップルで溢れているものなのだなぁと思わず関心してしまう。
そういえば、カイちゃんとキャロルはどうなっているのだろうか。かなり良い感じなのではと個人的には思っているのだが。
考えていると、ふと後ろに振り返ったカイちゃんと目が合う。
にこっと笑ってくれたカイちゃんに、こっそりと最近はキャロルとどんな感じなのかを聞いてみた。
「ん? まあ、悪くはないと思うぜ。お前さんのお陰でいろいろと先回り出来てるし、今もこうやって一緒に文化祭を回れてるしな」
「そっか。文化祭中は、ずっと一緒なの?」
「いや。キャロルの両親も来るって言ってたからな。そん時は、さすがに別行動だ。それ以外の時間は、ほぼ一緒にいる予定だな」
「あらぁ~そうなの~。良かったね」
そんな会話をしていると突如カイちゃんと私が引き離される。
「ちょっと近すぎるんじゃないか?」
「そうだよ、カイちゃん!」
ジェラルド様が私の腕を、キャロルがカイちゃんの腕を掴んだのだ。
「君は今、誰と一緒にこの場にいるんだ?」
「コレルちゃんと仲良しなのは知ってるけど、カイちゃんが今一緒にいるのは私なんだよ?」
「ジェラルド様!? す、すみません!」
私は、慌てて謝罪する。
確かに、一緒にいる相手がこそこそと別の人とお話していたら嫌な気持ちになっちゃうよね。失礼なことをしてしまったと反省する。
――いや、待って。それよりも、キャロルの反応が今までと少し違う気がする。これは、もしかしなくても脈ありなのでは!?
そう思って二人を見ると、とんでもなく甘い雰囲気を醸し出していた。
カイちゃんがキャロルに愛しくてたまらないと言わんばかりの優しくとろりとした笑みを向けていて柔く頭を撫でている。
「ん。ごめんな?」
「……ううん。私こそ急に引っ張っちゃってごめんなさい」
「いや。俺は嬉しかったけどな」
「……カイちゃんは優しいね」
「ああ。お前さんには特別な」
こ、これは絶対に邪魔をしてはいけないやつだ。
二人の甘い空気に何だか見てはいけないものを見ている気持ちになってしまい、目を逸らす。
「……君は、よそ見ばかりだな」
「え?」
言葉と共に手を取られ、そのまま指を絡められる。
――ひぇっ!?
こ、これは、世の恋人と呼ばれるの方々のされるものでは!?
「先ほど、様呼びをしたからな」
「えっ? あっ! で、ですが、この繋ぎ方は……!」
「嫌だろうか?」
「い、嫌とかでは……ありませんが……」
「では、5分間このままで」
「……あ、う……は、はい……」
じ、自分の指の間にジェラルド様の指がある……。凄い……なんだろう、この状況……。じわりと汗が出てきた。
は、恥ずかしい……。私はなぜジェラルド様のような美しい殿方と指を絡めているのだろうか?
頭の中でぐるぐると考えているとカイちゃんとキャロルの番が来てお化け屋敷の中へと入って行ってしまった。
数分後、ジェラルドさんと私の番になるまで私たちは指を絡めたまま列に並ぶとこになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます